クラッシャー上司

平気で部下を追い詰める人たち
未読
クラッシャー上司
クラッシャー上司
平気で部下を追い詰める人たち
未読
クラッシャー上司
出版社
出版日
2017年01月14日
評点
総合
3.2
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

部下を精神的に潰しながら、どんどん出世していく人物、それがクラッシャー上司だ。

本書で述べられているクラッシャー上司の特徴は以下の通りである。部下をときには奴隷のように扱い、精神的に追い詰めて潰す。他人への共感性が欠如しているため、そのことに罪悪感を抱かない。しかも、基本的には仕事ができるため、会社としても処分がむずかしい。結果として、クラッシャー上司は部下を潰しながら、どんどんと出世していく。

著者によると、クラッシャー上司は日本に特徴的な問題であり、そもそも日本の企業文化そのものにクラッシャー的な傾向があるという。特に大企業の雇用形態はクラッシャー上司を生みやすい。「働き方改革」が謳われている今こそ、部下を潰さない組織づくりが日本には求められている。

本書では、まずクラッシャー上司の具体例が提示される。次に、なぜ彼らが部下を潰してしまうのか、クラッシャー上司の精神構造、および彼らを生んでしまう組織構造が紐解かれる。最後に、企業におけるクラッシャー上司対策が提示されるという構成になっている。

クラッシャー上司とされる人物像に、まったく心当たりがないという人はおそらくほとんどいないであろう。組織マネジメントに関心がある人、企業の人事担当者、教育に携わる人、なによりもクラッシャー上司に接したことのある人に、お薦めの一冊である。

ライター画像
河原レイカ

著者

松崎 一葉 (まつざき いちよう)
筑波大学医学医療系 産業精神医学・宇宙医学グループ教授。1960年茨城県生まれ。1989年筑波大学大学院博士課程修了。医学博士。産業精神医学・宇宙航空精神医学が専門。官公庁、上場企業から中小企業まで、数多くの組織で精神科産業医として活躍。またJAXA客員研究員として、宇宙飛行士の資質と長期閉鎖空間でのサポートについても研究している。「クラッシャー上司」の命名者の一人。
主な著書に『会社で心を病むということ』(新潮文庫)、『情けの力』(幻冬舎)、『もし部下がうつになったら』(ディスカバー携書)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    クラッシャー上司とは、部下を潰すことに罪悪感がなく、部下の気持ちに共感することができない人物を指す。
  • 要点
    2
    日本の企業社会そのものに、クラッシャー的な傾向がある。企業の雇用形態や滅私奉公の価値観が、クラッシャー上司を生む土壌になっている。
  • 要点
    3
    イノベーションが生まれる職場にするためには、クラッシャー上司対策は必要不可欠である。そのために、企業はコンプライアンス意識を高めていかなくてはならない。

要約

クラッシャー上司の実態

自分こそが「善」だという確信
LIVINUS/iStock/Thinkstock

クラッシャー上司とは、部下を精神的に潰しながら、どんどん出世していく人を指す。部下を追い詰めていることに対して罪悪感がなく、部下の気持ちに共感することができない点が特徴だ。ただし、これらの特徴の程度には、人によって差があり、部下の潰し方も人によって異なる。ここではそのうち、3つの事例を取りあげ、クラッシャー上司の人物像を示していく。

まず、最初に挙げるのは、部下につきっきりで指導をして精神的に追い詰め、潰してしまったクラッシャー上司Aである。仕事の飲み込みが早く、飲み会でも気遣いができる評判のよい女子社員Fは、クラッシャー上司Aから期待され、厄介なクライアントの案件を任された。クラッシャー上司Aは、「お前ならやれるはず」「困ったら聞きに来い」「俺もキツイ仕事でしごかれてここまで来た」などとFを叱咤激励。Fは期待に応えようと全力で働いた。

しかし、クライアント側で担当者間の引き継ぎがなされていなかったことから、Fは依頼された設計の全面やり直しを言い渡されてしまう。すると上司Aは、Fのやり直しにつきっきりとなり、食事やトイレのタイミングまでFに合わせるようになった。そして、少しでもミスがあると、叱責をくりかえした。

依頼先への再度のプレゼンの後、Fは自宅で身体が動かなくなり、欠勤が続くようになった。産業医の面談により、うつ状態と診断。一方の上司Aには悪気はなく、自分の言動が「善」であると確信していたという。

共感欠如の完璧主義者

2つ目の事例は、完璧主義と呼べる程度を超えて、やらなければいけないと考えたことを徹底的にやるという、強いこだわりを持つクラッシャー上司Bだ。

入社3年目の男性社員Gは、明朗快活で根性もあり、営業戦力としてクラッシャー上司Bがいる営業2課に配属された。上司Bは、難攻不落といわれていた営業先をGに任せた。

Gは当初、順調に受注を伸ばしていたが、営業先の担当者が変わったことをきっかけに、受注が減少してしまう。すると上司BはGに対し、次から次へ厳しい質問や要求を投げつづけるようになった。タフなことで知られたGも、思わず人前で泣きだしてしまったほどだ。

Gはそれでも懸命に自分を鼓舞し、改善策を提案。営業先からの評価も得られた。ところが、上司Bの態度は依然として冷ややかだった。結局、上司BはGを一言も褒めることなく、すぐさま次の営業先の仕事に取り組むよう指示した。自分の興味が向くもの以外への想像力がまったく働かず、他者に共感することもできない上司Bには、懸命に仕事をした部下を褒めることなど、考えもつかなかったのである。

Gの顔からは次第に笑顔が消えていき、半年後、ついに辞表を提出するに至った。

薄っぺらな悪意と薄っぺらな悪事
Kosamtu/iStock/Thinkstock

3つ目の事例であるクラッシャー上司Cは、悪意のあるタイプである。要領がよく、社内での立ち回りがうまいため、順調に出世してきたが、権力を手にすると薄っぺらな悪事を働くようになった。

総務部人事課の部長であるクラッシャー上司Cは、新たに自分の下に配属された課長Hと年齢が近いことから、出世競争の要注意人物であると捉えた。経営陣の間で、課長Hが褒められている噂を耳にすると、上司CはHのもとにやってきて、「ボクのこと、みくびっているのかなぁ」などと発言。さらに、H以外の部下を引き連れて飲みにいくなど、周囲から見てイジメと取られかねないような行動を取り続けた。

それでもHは、上司Cに気を遣いながら仕事をするように心掛けた。

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要約公開日 2017.03.14
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