クラッシャー上司とは、部下を精神的に潰しながら、どんどん出世していく人を指す。部下を追い詰めていることに対して罪悪感がなく、部下の気持ちに共感することができない点が特徴だ。ただし、これらの特徴の程度には、人によって差があり、部下の潰し方も人によって異なる。ここではそのうち、3つの事例を取りあげ、クラッシャー上司の人物像を示していく。
まず、最初に挙げるのは、部下につきっきりで指導をして精神的に追い詰め、潰してしまったクラッシャー上司Aである。仕事の飲み込みが早く、飲み会でも気遣いができる評判のよい女子社員Fは、クラッシャー上司Aから期待され、厄介なクライアントの案件を任された。クラッシャー上司Aは、「お前ならやれるはず」「困ったら聞きに来い」「俺もキツイ仕事でしごかれてここまで来た」などとFを叱咤激励。Fは期待に応えようと全力で働いた。
しかし、クライアント側で担当者間の引き継ぎがなされていなかったことから、Fは依頼された設計の全面やり直しを言い渡されてしまう。すると上司Aは、Fのやり直しにつきっきりとなり、食事やトイレのタイミングまでFに合わせるようになった。そして、少しでもミスがあると、叱責をくりかえした。
依頼先への再度のプレゼンの後、Fは自宅で身体が動かなくなり、欠勤が続くようになった。産業医の面談により、うつ状態と診断。一方の上司Aには悪気はなく、自分の言動が「善」であると確信していたという。
2つ目の事例は、完璧主義と呼べる程度を超えて、やらなければいけないと考えたことを徹底的にやるという、強いこだわりを持つクラッシャー上司Bだ。
入社3年目の男性社員Gは、明朗快活で根性もあり、営業戦力としてクラッシャー上司Bがいる営業2課に配属された。上司Bは、難攻不落といわれていた営業先をGに任せた。
Gは当初、順調に受注を伸ばしていたが、営業先の担当者が変わったことをきっかけに、受注が減少してしまう。すると上司BはGに対し、次から次へ厳しい質問や要求を投げつづけるようになった。タフなことで知られたGも、思わず人前で泣きだしてしまったほどだ。
Gはそれでも懸命に自分を鼓舞し、改善策を提案。営業先からの評価も得られた。ところが、上司Bの態度は依然として冷ややかだった。結局、上司BはGを一言も褒めることなく、すぐさま次の営業先の仕事に取り組むよう指示した。自分の興味が向くもの以外への想像力がまったく働かず、他者に共感することもできない上司Bには、懸命に仕事をした部下を褒めることなど、考えもつかなかったのである。
Gの顔からは次第に笑顔が消えていき、半年後、ついに辞表を提出するに至った。
3つ目の事例であるクラッシャー上司Cは、悪意のあるタイプである。要領がよく、社内での立ち回りがうまいため、順調に出世してきたが、権力を手にすると薄っぺらな悪事を働くようになった。
総務部人事課の部長であるクラッシャー上司Cは、新たに自分の下に配属された課長Hと年齢が近いことから、出世競争の要注意人物であると捉えた。経営陣の間で、課長Hが褒められている噂を耳にすると、上司CはHのもとにやってきて、「ボクのこと、みくびっているのかなぁ」などと発言。さらに、H以外の部下を引き連れて飲みにいくなど、周囲から見てイジメと取られかねないような行動を取り続けた。
それでもHは、上司Cに気を遣いながら仕事をするように心掛けた。
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