AI時代の人生戦略

「STEAM」が最強の武器である
未読
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「STEAM」が最強の武器である
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著者
出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2017年01月15日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「AI=人工知能」ということを知らないビジネスパーソンはなかなかいないだろう。では「STEM」という言葉はご存知だろうか。

これからの社会では、「STEM(=科学、技術、工学、数学)」の重要性を「実感」を持って理解しているか、サイエンスやテクノロジーがますます発展する未来に向けて、どのような努力をしているかが問われることになる。さらに、A(=芸術)の素養も求められるようになるだろう。STEMにAを足した、「STEAM」が必須となる時代がやってくるというのが本書の主張である。

とはいえ、なにもむずかしく考えすぎる必要はない。実際、著者もNHKの「ブラタモリ」を学習教材としてあげるなど、日常から気軽にサイエンスやテクノロジーの知識に触れることの大事さを強調している。このあたりに、著者の広い情報収集力や物の見方が見てとれるだろう。

また、本書には文部科学大臣補佐官の鈴木寛氏や、実業家の堀江貴文氏との対談も収録されている。鈴木氏との対談からは、これからどのように学校を選ぶべきなのかのヒントが得られるだろうし、堀江氏との対談からは、イノベーターがどのような情報にアンテナを張っているかを学べるはずだ。

興味深く、刺激的な情報が散りばめられた一冊である。本書を読み、ぜひ「AIを使う側の人間」として、充実した人生を享受されることを願う。

ライター画像
山崎華恵

著者

成毛 眞(なるけ まこと)
1955年北海道生まれ。中央大学商学部卒業後、自動車部品メーカー、アスキーなどを経て、86年日本マイクロソフト設立と同時に参画。91年同社代表取締役社長就任。2000年退社後、投資コンサルティング会社インスパイア設立。10年おすすめ本を紹介する書評サイト「HONZ」を開設、代表を務める。早稲田大学ビジネススクール客員教授。

本書の要点

  • 要点
    1
    「STEM(=科学、技術、工学、数学)」に、A(芸術)を足した「STEAM」を身につけることが、これからの社会では必要不可欠だ。
  • 要点
    2
    現代の仕事の約半数はAIやロボットに代替されてしまうが、新しく生まれる仕事もある。「AIを使う仕事」と「AIに使われる仕事」のどちらを選ぶかはあなた次第だ。
  • 要点
    3
    近いうちに、あらゆる仕事からサイエンスとテクノロジーを切り離せなくなる時代がやってくる。いまのうちから、テレビや雑誌、入門書を活用し、広く浅く情報に触れておくべきである。

要約

STEAMとは何か

STEMを重視しはじめたアメリカ
Wittayayut/iStock/Thinkstock

STEMという言葉を最初に使いはじめたのは「アメリカ国立科学財団(NSF)」だ。アメリカの研究者や教育機関に年間8000億円もの資金を提供し、これまでに160人ものノーベル賞受賞者を出している、伝統ある財団である。

1990年代後半から当たり前のように使われてきたこの言葉がふたたび注目を集めるようになったのは、バラク・オバマ氏が再選を果たし、STEMを重要な政策課題としたからである。

オバマ氏は「STEMの学位を持つ人材を100万人増やす」という取り組みを始めた。その取り組みは、「教員の育成/教育プログラムを表彰する賞の設立/教育内容を評価する仕組みの整備/数学に重点を置いた補習講座への資金援助/高校生を対象にしたSTEMプログラムへの資金援助」など、じつに多岐にわたる。

オバマ氏がSTEM教育に力を入れる要因となったのは、2012年の「OECD(経済協力開発機構)生徒の学習到達度調査」(PISA)で、アメリカの順位が「数学的リテラシー」36位、「科学的リテラシー」28位、「読解力」24位と、低迷したからだと言われている。

日本は本当に理数系に強いのか

日本のPISAの順位(2012年)は、科学的リテラシーが4位、数学的リテラシーが7位、読解力が4位と、アメリカよりも高い。だが、ゆとり教育時代には、順位をかなり下げてしまったことがあった。

ゆとり教育はクリエイティブ人材を輩出しており、一概に否定するべきではないというのが著者の意見である。しかし一方で、科学的な根拠が不足していれば、その豊かな発想もたんなる思いつきになってしまいかねない。資源に恵まれないアジア地域では、開発、設計、製造までをも見通せる力が必要とされているのである。

日本の教育が抱えている問題は、理数系に弱い大人が社会全体を洗脳し、子どもたちの好奇心を奪ってしまっていることだ。これまでは、理数系のリテラシー不足も笑って受け入れられていたかもしれない。だが、これからの時代はそういうわけにはいかない。

受験科目を減らすため、高2から数学の勉強を辞めてしまう人が続出している現状は、個人にとっても国家にとっても大きな機会損失である。生徒たちの数学や工学への才能を、より伸ばす方向にかじを切るべきだ。

アートとテクノロジーはともに進化している
royyimzy/iStock/Thinkstock

すでにアメリカの教育界では「STEM(=科学、技術、工学、数学)」が常識となっている。だがそれだけでは不十分だ。これからは、STEMにA(=芸術)を加えた「STEAM」が必要不可欠になるだろう。デザインをする人はSTEMを理解しなければならないし、STEMを専門にしている人は、Aを理解しなければならない時代がやってくるはずだ。

最近のアーティストのライブやMV(ミュージックビデオ)では、立体物や平面に映像を映し出す「プロジェクションマッピング」と呼ばれる表現や、小型無人飛行機「ドローン」で撮影したダイナミックな映像が使用されている。現代のアートに触れることは、最新のテクノロジーに触れることを意味する。積極的に、新しいアート作品をチェックしていくべきである。

学校教育におけるSTEM:鈴木寛氏との対談

高校の科学部人口を17万人まで増やそう

今の中高生にとって、シンギュラリティ(AIが人類を超す技術的特異点。2045年頃と言われている)の到来は、人生の折り返し地点にあたる。

サッカーではすでに、世界最高峰のプレミアリーグで日本人選手が活躍する時代になった。これは、日本におけるサッカーの競技人口が多くなってきていることが要因だと考えられる。ちなみに、高校のサッカー部人口は約17万人であり、野球部の人口もほぼそれと同数である。

それならば、高校の科学部の人口を、サッカー部・野球部と同程度の17万人にすれば、世界における日本の科学分野での地位向上が期待できるのではないか。

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要約公開日 2017.06.07
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