2016年は「VR元年」だった。家電量販店では、ヘッドマウントディスプレイ型のVRゴーグルが発売され、MMD研究所によれば、VRという言葉の認知度も64.7%となった。
まだ実際に体験した人は少なく、一般にはゲームなどのエンターテインメント用だと認識されがちなようだが、このVRはビジネス分野での活用が始まっており、2020年には700億ドルの市場にまで拡大すると見込まれている。
VRの特徴は、他のメディアでは味わえない「没入感」にあり、高い体験価値を生み出す。この高い体験価値は、利用者に強い印象を残すので、VRをビジネスで活用する大きな理由のひとつとなっている。なおVRコンテンツには、場所や施設の紹介に向いた実写と、実在しない空間やものを表現できるCGの2種類があり、どちらにしても自分がその場に居るように感じられるほどに、「没入感」は強烈だ。
しかもVRで実現できる表現は多岐にわたる。例えば、対象物にありえないほど近づくこともできれば、どんな場所にでも行くことができる。例えば、竜巻や炎など危険なものに近づいたり、細胞ぐらいの大きさになって体の中に入ったりという体験が可能になる。
VRは、目に装着し3D映像を実現するVRゴーグルで実現される。このVRゴーグルで使用されるディスプレイパネルの、解像度や視野角などのスペックが、そのまま映像のクオリティとなる。また、ハイエンド製品では、ユーザーの動きに映像が追随できるよう、頭部の動きはゴーグル内のジャイロセンサーで検知される。体の上半身の動きを認識するために、ゴーグルとは別にトラッキング用カメラを設置する場合もある。
VRゴーグルには、高機能で高価格の高性能モデルと、スマートフォンと組み合わせて使うエントリーモデルの2つのモデルがある。高性能モデルは、没入感の高いVR体験を実現できる。だが、高いグラフィック性能と処理速度を持つ、パソコンかゲーム機と接続して利用する必要がある。エントリーモデルはスマートフォンを装着するので、画質や視野角は端末次第であり、耐久性も劣るが、圧倒的に価格が安い。また、電源が不要なので、屋外でも手軽に利用できるというメリットもある。
高性能なVRゴーグルとして、Oculus Rift、HTC VIVE、PlayStation VR、FOVE 0といったゴーグルが挙げられる。Oculus Riftは、VRブームを生み出したといえる高性能モデルだ。最大4台までのセンサーと組み合わせると、ユーザーはVR空間を歩き回ることができ、コントローラーを用いて武器の発射という動作をすることもできる。ゲームなどのエンターテイメントのVRコンテンツが豊富である。
高性能モデルとエントリーモデルの特徴を併せ持つのがGalaxy Gear VRだ。サムスンのスマートフォン専用のモデルであるGalaxy Gear VRは、本格的な機能を備えながら、安価に複数台用意できるので、プロモーションイベントなどに向いている。
エントリーモデルのなかには、段ボールなどの素材でできたㇵコスコなどの簡易ゴーグルもある。こうした製品は、体験者の多いイベントや雑誌付録にも利用されている。
VRをビジネスに活用するためには、まずプランニングが必要だ。実際には、制作プロダクションのディレクター、プランナー、クリエイターがプランニングをすることになる。プランニングにあたって、押さえておくべきポイントを、本書からいくつか拾って紹介していこう。
まず、プランニングを始めるにあたって、考えておくべきことがある。
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