日本一働きたい会社のつくりかた

未読
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出版社
出版日
2017年04月21日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

会社はひとつの「アート」だ――本書を読んでいると、そんな感想を抱いてしまうかもしれない。

2017年3月、日本最大級の不動産・住宅情報サイト「HOME’S」を運営する株式会社LIFULL(以下、ライフル)が、リンクアンドモチベーション社が主催する「ベストモチベーションカンパニーアワード2017」で第1位を獲得した。

このように「最も社員のモチベーションが高い企業」という評価を得たライフルだが、本書を開いてみると、なるほど納得の受賞である。企業の「ビジョン」と「カルチャー」を徹底させるための仕掛けが、いたるところに張り巡らされているからだ。

自分がやってもらって嬉しいことをやること、やられたら嫌なことは控えること、できるだけ「やらされ仕事」ではなく「自分の意志で仕事ができる環境」をつくること、そして「一緒にいたくない人」より「一緒にいたいと思う人」と働くこと。組織としてそのすべてを実現するためには、相当の努力が必要である。だからこそ、ライフルの取り組みから学べることははかり知れない。

真っ黒に塗りつぶされ、何も描けなくなってしまった「ブラック企業」ではなく、ひとりひとりの色を鮮やかに表現できる「ホワイト企業」に会社を育てるための秘訣がここにある。人事担当者はもとより、会社経営にかかわるすべての人に読んでいただきたい一冊だ。

著者

羽田 幸広(はだ ゆきひろ)
株式会社LIFULL 執行役員人事本部長。
1976年生まれ。上智大学卒業。人材関連企業を経て2005年6月ネクスト(現LIFULL)入社。人事責任者として人事部を立ち上げ、企業文化、採用、人材育成、人事制度の基礎づくりに尽力。
2008年からは社員有志を集めた「日本一働きたい会社プロジェクト」を推進し、2007年「ベストモチベーションカンパニーアワード」1位を獲得。7年連続「働きがいのある会社」ベストカンパニー選出(2011年~2017年)、健康経営銘柄選定(2015年度、2016年度)など、企業として高い評価を得るまでに導いた。

本書の要点

  • 要点
    1
    構成員のポテンシャルを最大限に発揮させるためには、「組織がめざすもの」「それをめざす理由」「どのようにめざすのか」を明文化し、浸透させる取り組みをおこなうべきである。
  • 要点
    2
    妥協のない採用こそが、経営理念に命を吹き込むうえで最も効果が大きい。
  • 要点
    3
    社員が「挑戦」したくなる環境づくりには、(1)「内発的動機づけ」と(2)「心理的安全の確保」が欠かせない。
  • 要点
    4
    モチベーションの高い組織にするためには、人事部だけでなく組織全体が「本気」で取り組まなければならない。

要約

経営理念

理念を明文化し、浸透させよ
ipopba/iStock/Thinkstock

どのような組織でも、成果を最大限に発揮するためには、構成員のポテンシャルをできるかぎり発揮してもらわなければならない。そのためにまず必要なのが、「その組織がめざすもの」と「それをめざす理由」、そして「どのようにめざすのか」を明文化し、受け入れてもらうことである。ライフルではこれらを「社是」「経営理念」「ガイドライン」として明確に打ちだし、「ビジョンカード」として社員に携帯してもらうようにしている。

また、2012年からは社内から有志を集め、「ビジョンプロジェクト」という全社横断の取り組みをはじめた。部署ごとに経営理念ビジョンを策定してもらい、特に役員にはそれを徹底的に守ってもらうようにしている。加えて、自分の仕事とビジョンのつながりを感じているかをチェックする「ビジョンアンケート」を定期的に実施し、分析報告もおこなっている。このように、「ビジョン」をきわめて重視しているのが、「日本一働きたい会社」ライフルの大きな特徴といえる。

【必読ポイント!】 採用基準

妥協のない、最高の採用を!

会社の魂である経営理念に命を吹き込むため、ライフルではいくつもの施策をおこなっている。そのなかでも、最もインパクトが大きかったのが採用基準の変更である。

社員の行動を規定するのは価値観だ。全員が同じ価値観のもとで働くと、基本的な行動が統一されるため、生産性が高まる。逆に、価値観がバラバラのままでは、生産性は低くなってしまう。

残念ながら、人の価値観というのはなかなか変わらない。ならば、同じ価値観をもつ人を採用したほうが明らかに効率がよい。また、入社後にいかに組織デザインや人材育成を工夫しても、その人材に主体性や成長意欲がなければ効果は薄い。入社後の施策を効果的なものにするためにも、採用に力を注ぐべきである。

ライフルの場合、経営理念への共感「ビジョンフィット」と、企業文化への合致度「カルチャーフィット」をなによりも大切にしている。どれほどスキルが高くても、ビジョンやカルチャーにズレを感じたら採用しない。

このように徹底的にこだわったことで、ビジョンフィット、カルチャーフィットした人材が着実に増え、それにともなってモチベーション調査等のスコアも向上していった。

面接で注目すべきは「事実」
maroke/iStock/Thinkstock

ライフルでは4つの採用基準を設けており、前述の(1)ビジョンフィット、(2)カルチャーフィットに加え、(3)ポテンシャル、(4)スキルフィットもチェックするようにしている。

応募者のポテンシャルやスキルフィットを確認するためには、過去の行動の「事実」を丁寧にヒアリングするのが鉄則である。「事実」を通してのみ、その応募者の行動特性が見えてくるからだ。逆に、応募者に自由に話してもらうと、事実よりも気持ちや主観の部分が強く出てしまい、特徴的な行動特性を確認できなくなるので注意が必要である。

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要約公開日 2017.07.26
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