ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授のアルフレッド・チャンドラー氏は、「組織は戦略に従う」と説いた。これに対し、著者は「そもそも、この戦略は正しいのか?」という疑問を常に抱いてきた。人事マネージャーとして、経営戦略と人事や組織を繋ぐ仕事をする中、「戦略なんて、全然予定通りにいかない」ということに気づいたからだ。
近年、リーマンショックの金融危機や東日本大震災のように、企業ではコントロールできない出来事が次々と起きている。そのため、組織や人は今まで以上に変化に対応することが求められるようになった。これに伴い、「組織は戦略に従う」という時代から、「戦略が人や組織に従う」という時代へとシフトしていくのだ。
こうした時代だからこそ、人や組織が重要になる。だからこそ、いい人材を採用して、変化しながら新しいものを手がけていくことが、今後求められていくようになる。
では、どうすればいい人材を採用できるのか。著者は、就職希望者の立場でマーケティング的な発想をすることが大事だと言う。
まずは就職希望者の志望理由から考えてみよう。大事なのは「自社が採りたい人材が会社選びの時に考えていること」を探ることだ。会社の規模やブランド、給与などで大手企業と競うのは難しい。しかし、あえて中小・ベンチャー企業に入りたいという人材もいる。彼らの多くは、主に、やりたい職務にとりくんで成長できることや、経営陣の近くで働けること、そして、アットホームな職場に価値を感じている。
また、就職希望者の退職理由にもヒントがある。求人サイト「リクナビNEXT」にある「退職理由のホンネランキング10」という記事によると、経営者の仕事のやり方や労働時間・環境への不満や、仕事内容に面白味を見出せないことがランキング上位に挙がっていた。これらの不満に対してなら、中小・ベンチャー企業でも手を打つことができるだろう。
求人にはハードの情報とソフトの情報が含まれている。ハードの情報とは、企業の規模や歴史、ブランド、給料など、いわゆる「外見」の情報だ。一方、ソフトの情報とは、企業のビジョンや経営理念、どんな社員がどんな理由で働いているのかといった、働きがいや働き方に関する情報を指す。これらは「性格」を表す情報である。特に転職者は企業のやり方や考え方、環境に合わなくて再就職を考えていることが多いため、就職先を「性格で選びたい」と考えている。
近年、リーマンショックや東日本大震災を経て、家族との生活を大事にしたい人や、地元に戻りたいなどと、ライフスタイルや生き方を軸に企業を選ぶ人が増えてきた。だからこそ、人材に対する考え方があり、社員に対して働きがいや多様な働き方を提供していく会社、つまり「性格のいい会社」にいい人材が集まっていく。
「Great Place to Work(GPTW)」という団体は、世界で働きがいのある会社を調査している。リクルートキャリアは、GPTWの調査で日本一働きがいのある会社に輝いた実績をもつ。そんなリクルートキャリアで人事に携わっていた著者は、「ビジョン、成長、仲間」こそが働きがいを作る要素だと考えている。
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