私たちは、銀行と、どんなかたちでつながっているだろう。個人であれば、給与口座やカードの引き落とし口座の指定、住宅ローンの借入、法人であれば融資や資金繰りの相談などが主な関わりといえそうである。
そもそも本来の銀行の役割を大きく分けると、借り手と貸し手の仲介をする「金融仲介機能」、預金がさらなる預金を生み出す「信用創造機能」、現金を使わずに直接決済ができる「決済機能」の3つがある。このうち個人や法人が関心を持っているのは「決済機能」と「金融仲介機能」の一部だけだろう。利用者が望んでいるのは、スムーズかつ費用負担の少ない決済や、借りたいときに機動的に借りられるといったことであり、テクノロジーの活用によりそれが実現されつつある。
Finance とTechnology をかけ合わせたFinTechという言葉が普及したのは、次の3つの背景があったからだといえる。
まず初めに、世界中が低金利であることだ。利回りが確保できる金融商品が少なくなる中、伝統的な金融機関が取り扱えないニッチな市場をテクノロジーで掘り起こすという動きが加速した。
2つ目の理由は、グローバルな低成長・低金利の中、物価が安定していることだ。そうした環境では、プリペイドや電子マネーで預けたお金の価値が損なわれることはないので、利用者は安心して、こうした「デジタル・ウォレット」を使える。
3つ目は人材的な背景がある。リーマンショック後の人員削減や、人工知能による業務の自動化が進んだことにより、金融機関から多くの人材が放出された。彼らの事業アイデアや起業マインドは、FinTechを後押しした。
著者は、FinTechで注目すべきは預金の行方であり、利用者が「銀行口座と連動させて、より便利に決済できるか」ということがポイントだという。預金は銀行にとってビジネスの起点であるので、お得で便利な決済サービスに個人の預金が流出することは致命的である。
テクノロジーによって、機械が得意な作業と人間が得意な領域が分かれると、銀行はどのような姿に変わっていくのだろう。利用者が個人か法人か、多くの人が参加できるプラットフォームかカスタマイズが必要かによって区分された4つのタイプを、著者は提示する。
1つ目はモバイル型。個人がモバイル端末で決済・資産形成・借入を完結できるサービスを提供するプラットフォームだ。日常の決済に対応し、個人にお得感が出せるかどうかがカギになる。
2つ目は、プライベートバンク型。富裕層に資産運用アドバイスを行う。そのためには金融商品の内容や税務に詳しい人材の確保がカギとなる。
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