文章に苦手意識がある人は多い。しかし、LINEではほとんどの人が抵抗なく、速く文章が書けるのはなぜか。それは、LINEのコミュニケーションでは、「うまい文章」ではなく「用件」「必要な情報」が重視されるからだ。
LINEの開発者がめざすのは「シンプルに結論だけ伝えられるもの」である。東日本大震災のような非常時においても、全世代の人が安否確認できるようにするためだ。用件だけでも言いたいことは伝わるのである。
著者はかつて、300字を書くのに丸一日かかっていた。しかし、表現力豊かな名文を書かなくてはいけない、という呪縛から脱却したことで、長い文章をスラスラ書けるようになったという。「うまい文章」は慣用句が多用されている。お手本にしようとすると、読み手に伝わりづらくなってしまう。
むしろ、結論が重視されるビジネスの世界では、「わかりやすくて、読者に役立つ文章」をめざすべきだ。ここからは、著者が編み出した「素材文章術」を紹介していく。
文章を書き始めたものの、すぐに行き詰まる。文章執筆に時間がかかる。これらの最大の原因は、ゼロから文章をつくろうとすることにある。文章を速く書き上げるには、文章の「素材」を準備することが欠かせない。
文章においては「どう書くか」よりも「何を書くか」が、はるかに重要である。つまり、「素材」のよさがモノをいう。素材とは、「独自の事実」「エピソード」「数字」の3つを指す。
現に企画書も素材からできている。書き手の思いが強いと、「よく思われよう」として説明しすぎることもしばしばだ。しかし、企画書の読み手が知りたいのは、「どんな課題をどのように解決するか」である。それを補強する最低限の素材がしっかりあれば、その素材を並べるだけで、短時間で企画書が書ける。大事なのは素材が「具体的」であることだ。
とはいえ、3000字程度の長い文章も、素材だけで書けるのか。その心配は無用だ。たくさんの素材を集めておけば、数千字の原稿も苦にならない。
ここからは素材文章術の具体的な方法を、次の5つのステップに沿って紹介する。そのステップとは、(1)書く目的と読者を定める、(2)素材を集める、(3)素材を組み立てる、(4)一気に書ききる、(5)見直す、というものだ。
最初のステップは、正しい素材を集めるための2つのルールを理解することから始まる。1つ目は、文章の目的をはっきりさせることである。社内報のエッセイ、会議の議事録といった表面上の目的を知っているだけでは十分ではない。素材を集める判断軸がはっきりしないからだ。そこで、表面上の目的から「真の目的」まで掘り下げることを意識したい。
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