新しいことに初めて挑戦したとき、なぜか最もうまくいく場合が多い。ルーキーのほうがベテランよりも大きな成果をあげるときだ。経験がない未熟なルーキーはなぜ成功できるのだろうか。
それは、「知らない」ことのほうが「知っている」ことよりも、時に優れている場合があるからだといえる。しかし、それは必ずしもルーキーのほうが「新しいアイデアをもっている」ということを意味しない。斬新なアイデアはルーキーの絶対的な強みではない。ルーキーには別の強みがある。
まず、ルーキーは物事に対する先入観がない。経験がないため、先輩や専門家からの助言を熱心に求めるうえに慎重である。上司などの関係者にこまめに進捗を報告し、意見を聞く。
こうしたルーキーの性質が成功を呼び寄せる。しかし、これは会社に入社したばかりの「ルーキー」の特権ではない。ルーキーの思考パターンとスキルを身に付ければ、ベテラン層も含めて誰でも活力に満ちたルーキーであり続けることができる。ひいては、最高のパフォーマンスを発揮し、たゆまず成長し続けるキャリアを築けるのだ。
社会の状況はめまぐるしく変化している。その中で、ベテランは今まで以上に厳しい状況に立たされている。具体的には次の3つの変化の影響を受けている。
第一は「情報の大量化」だ。インターネットが手軽に使えることにより、私たちは毎日大量の情報を浴びている。増え続ける膨大なデータからいかにして知識と洞察、そして知恵を引き出せるかが課題になっている。
第二に「仕事のサイクルの加速」がある。自動化される仕事が増え、生産性を向上させるツールが広まるにつれ、同じ時間で処理する量を増やすことが求められている。昔では考えられない速さで新たな仕事が登場している。それに応じて、学習のサイクルも加速させなければならない。
第三は「知識の短命化」である。新しい発見がなされるペースも、知識が古くなるペースも加速する一方だ。また、人材の流動化により、企業に蓄積される知識の量も減っている。「知識がある」ということは以前ほど価値をもたなくなった。
これからの時代に重要なのは、他の人の知識をうまく活用する力だ。「知は力なり」というモットーはもはや古い。これからは「学びを求めよ」という精神が欠かせない。
人は経験を積むにつれて、活用できる手段のレパートリーを増やしていく。また、ベテランの「鋭い直感」は、豊富な経験というデータベースのもとに生まれる。よって、これまでスキルを習得するには長い時間が必要だと考えられてきた。
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