論理的思考力を鍛える33の思考実験

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論理的思考力を鍛える33の思考実験
出版社
出版日
2017年05月24日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

人生やビジネスにおいては、重大な意思決定を迫られる。どの選択肢を選んでも痛みが伴う場合や、決定のデッドラインが差し迫っている場合もしばしば。そんなとき、冷静に、納得のいく判断ができるだろうか? 即座にYesといえないのなら、「思考実験」を通じて、深い思考の「回路」をつくっておくことをおすすめしたい。

本書では、思考実験を一躍有名にした「トロッコ問題」をはじめ、「テセウスの船」「モンティ・ホール問題」「エレベーターの男女」「ありえない計算式」など、33の興味深い思考実験が紹介されていく。倫理観を問う、数のトリックを味わう、想像力を駆使するなどとテーマは幅広く、パズル作家の著者オリジナルの思考実験も盛り込まれている。解説はわかりやすいイラストや図解つきで、著者の語り口調には非常に親しみが湧く。これらが思考実験の敷居を一気に下げてくれる。

「視点を変えると見方が変わる」。本書は、人生につきもののジレンマやパラドックスに、ロジカルに対処するための入門書として最適だ。読んで「へぇ、面白い」で終わりではもったいない。本物の思考力とは、頭が汗をかいてはじめて身につくものだ。ある特定の条件下で、理論立てて考えながら自分なりの結論を導き出す。これをくり返すうちに、物事の本質を見る目や、予想外の状況で冷静に判断する力を養える。同時に、直感と論理の間に大きな隔たりがあることを実感できるだろう。頭を柔らかくし、意思決定の精度を高めたいのなら、迷わず本書を読むべきだ。「思考の実験室」へようこそ。

ライター画像
松尾美里

著者

北村 良子(きたむら りょうこ)
1978年生まれ。有限会社イーソフィア代表。パズル作家としてWEBで展開するイベントや、企業のキャンペーン、書籍や雑誌等に向けたパズルを作成している。著書は『パズル作家が明かす脳にいいパズルはどっち?』(コスモ21)、『おうちで楽しく! でんしゃの学習ブック 7さいまでのひらがな・カタカナ・数字の練習』(メイツ出版)他。
運営サイトはIQ脳.net(http://iqno.net/)、老年若脳(http://magald.com/)等。

本書の要点

  • 要点
    1
    思考実験とは、ある特定の条件下で思考を深め、推論を重ねながら自分なりの結論を導き出していくことである。思考実験は論理的思考力を鍛えるのに有効だ。
  • 要点
    2
    「トロッコ問題」からは、本来望む結果を得るためであっても、自分が積極的に人を犠牲にする場合は、より主観的に物事を判断する傾向にあることがわかる。
  • 要点
    3
    パラドックスやジレンマの思考実験は、好奇心を刺激し、思考力を鍛えるのに役立つ。パラドックスの思考実験の事例として「テセウスの船」が挙げられる。

要約

【必読ポイント!】 倫理観を揺さぶる思考実験

思考実験とは何か?
Gajus/iStock/Thinkstock

思考実験とは何か。それは、ある特定の条件下で思考を深め、推論を重ねながら自分なりの結論を導き出していくことである。実験室はあなたの頭の中。実験道具はあなたの倫理観や知識、論理的思考力や想像力などである。思考実験はビジネスに欠かせない論理的思考力を鍛えるのに非常に有効だ。

「いずれか一方しか助けられない」。生死をめぐる究極の選択を迫られたとき、人は自分の倫理観や判断基準について向き合うこととなる。倫理を問う問題は、自分とは異なる意見、多数派の意見を知る中で、思考の幅を広げるのに役立つ。もちろん多数派が正解というわけではない。いくつかの問題を紹介していく。

暴走トロッコと作業員

最初に取り上げるのは、思考実験を一躍有名にした「暴走トロッコと作業員」である。これはイギリスの倫理学者フィリッパ・フットが1967年に提示し、論争を巻き起こしてきた有名な思考実験である。「トロッコ問題」にはバリエーションがあるが、共通して「5人を助けるために1人を犠牲にするのは正しいか?」という課題に直面する。そして、設定により、多数派となる意見が異なってくる。

まず1つ目のトロッコ問題を説明する。あなたは、暴走したトロッコが猛スピードで線路を走ってくるのを目にする。線路の先には5人の作業員がおり、このままではトロッコがつっこんで5人は死んでしまう。あなたの手元には線路の切り替えスイッチがあり、これを切り替えれば彼らを救える。ところが、切り替えると今度はその切り替えた先にいる1人の作業員が死んでしまう。あなたはこの6人とは面識はない。また、大声で危険を知らせるといった他の選択肢はないとする。あなたはスイッチを切り替えるだろうか。

この設定では、多数派となる意見は「スイッチを切り替え、1人を犠牲にして5人を助ける」である。統計データによると、この選択を選ぶのは85%に及ぶという。面識のない人ばかりであるため、感情を揺さぶる要素がなく、冷静に思考ができる。そこで、1人より5人の命のほうが重いと判断するというわけだ。

一方、少数派は「トロッコはもともと5人の方向に向かっていた。進行方向とは無関係の場所にいた1人を巻き込むのは誤り」だと主張する。人の運命を自分が操作することへの抵抗を感じるためだ。

暴走トロッコと作業員と太った男
Nerthuz/iStock/Thinkstock

では次のような設定ならどうか。同じく暴走するトロッコが5人の作業員の命を奪おうとしている現場を、あなたは橋の上から見ている。ただし、隣にはかなりの巨漢が身を乗り出して作業の風景に見入っている。もしこの男性をあなたが突き落とせば、トロッコを止められるかわりに男は確実に死ぬ。今なら確実に男を突き落とすことが可能であり、あなたはそれによって罪に問われることはないとする。さあ、どうするか。

この設定で思考実験をすると、75~90%の人がそのまま静観し、5人が犠牲になるほうを選ぶ。1番目の思考実験と、犠牲者の人数は変わっていないにもかかわらず、多数派意見が入れ替わるのだ。

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要約公開日 2017.12.29
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