日本の経済成長が鈍化している理由は何か。1つはAI、ロボット、IoTなどを含む広義のインターネット系の産業構築の遅れである。もう1つはインターネットとは切っても切れない関係にある、1980〜2000年代初頭に生まれたミレニアル世代に対する理解不足だ。
2016年9月末時点における世界の時価総額上位30銘柄を見ると、5位までを独占するのはアメリカ企業だ。しかも全て広義の意味でのインターネット産業である。一方日本は、トヨタ自動車がかろうじて28位に入っている状況だ。この結果から、世界経済をけん引するインターネット産業において、いかに日本が活躍できていないかがわかる。
当然日本も、問題意識を持っており、AIやロボット産業を生み出す必要性を感じている。しかし、まだ具体的な道筋は描けていない。こうした現状を打破するには、ミレニアル世代の価値観を理解し、彼らに合った事業や組織づくりを進めていくことが欠かせない。
今から約30年前の1980年代後半は、海外でも名の通る日本企業があった。それなのになぜ今は、海外でも存在感の大きいインターネット系の企業が現れないのか。
よく理由として挙げられるのが、かつては物理的なもの(ハードウェア)を販売しており、英語という言葉のハードルも超えやすかったから、というものだ。しかし、著者はそうではなく、初期投資の大きさの問題である可能性が高いとみている。
ソフトウェア事業の初期投資は人材投資がほとんどなので、海外に渡って現地の人を採用すれば、事実上の海外進出となる。比較的軽い覚悟でできるといってもよい。一方、ハードウェアを扱うモノづくりの企業が海外進出となると、工場1つ建てるにも何百億円という莫大な費用がかかる。当然、1つ1つの行動に慎重になるし、成功するまで粘り強く続けるだろう。つまりコミットメントの差が、日本発ソフトウェアの海外での存在感の低さに大きく関係しているというのが、著者の見解だ。
さらに、日本には成熟したマーケットがある。日本国内だけでそれなりのビジネスが成り立ってしまうため、下手に海外に出ようとはしないのである。その点、スウェーデン発祥のイケアや韓国のK-POPは、国内の市場が小さいというハンデがあるために、最初から世界をターゲットにせざるを得ない。よって世界に広まる可能性も高まっていく。
インターネットやテクノロジーがもたらした最も大きな変化、それは人の「もの」に対する価値観の変化である。交通手段や滞在先、オフィス、衣類などあらゆるものがネットを介してレンタルできる今、ものを所有することの価値が薄れてきている。
そんな中、ミレニアル世代を中心とする今の消費者は、自分のストーリーを追うことに価値を見出している。ストーリーとは、なりたい自分像や理想の世界の状態を表す。例えばiPhoneを購入する人は、機械そのものの性能ではなく、それを手にした「イノベーティブでスマートな自分像」を買っている。また、シェアハウスに住むのは、ただ単に住居のコストを下げるためだけではない。その空間に身を置くことで、幅広い関わりを経験し、成長する自分像を得るためだ。
3,400冊以上の要約が楽しめる