スタートアップを成功させるための大前提は、次の4つの原則を受け入れることである。1つ目は、スタートアップの目的は顧客を見つけることであって、商品を作ることではない、ということだ。失敗する真の理由は、十分な顧客がいないからである。素晴らしいアイデアをひらめいた後、商品を作る価値があるかどうかを見極めるために潜在顧客を探すのである。
2つ目は、人は製品やサービスを買うのではなく、問題の解決策を買うということだ。顧客が解決すべき課題を抱えているかどうか、そして自分のアイデアが問題解決に寄与するのかを見極めるには、自分自身で直接顧客に話を聞くしかない。
3つ目は、起業家は探偵であり、占い師ではないということである。本物の起業家は事実を集めて仮説を検証する。これにより最小限の時間と資金を投じるだけで済む。
最後に4つ目は、成功する起業家はリスクを取るのではなく、運を呼び込むということだ。彼らはリスクを最小化し、勝つチャンスがあると確信できる場合にのみオールイン(一度に全額を投じる行為)に出る。これら4つの原則を念頭に、オーエンの物語を読んでいただきたい。
中古自転車のオンライン店舗「リバイシクル」を経営するオーエンは、友人のすすめでラスベガスのポーカー大会に出場していた。会社の経営はうまくいっていない。ホームページのアクセス数は伸びているが、肝心の自転車が売れないのだ。オーエンはなぜそんなことが起きているのかを、まったく理解できずにいる。
大会の会場近くのホテルで、オーエンは同じ大会に出場している女性、サムに出会う。サムは成功している起業家で、オーエンと話すうちにオーエンの会社の問題点に気づく。オーエンはホームページのアクセス数やメディアへの露出の話ばかりしていた。しかし、これらは「バニティメトリクス」、すなわち虚栄の指標にすぎないため、気をとられすぎるのは危険である。会社の経営実態を示しているわけではないからだ。
新しいアイデアを思いついたときに、最も根源的な論点は「人が欲しがるかどうか」であるとサムは言う。顧客に対して「ここに問題がある」と言ったところで誰も納得しない。顧客がすでに抱えている問題を解決することが何より重要である。
人間はまったくもって非合理的であり、人間がどんな行動に出るのかを完璧に予測することは不可能だ。オーエンは事業計画の中で様々なことを「推測」し、それを「事実」のように述べていた。しかし、推測はあくまで推測にすぎない。
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