DMの一般的な定義は、「個々人宛に商品案内やカタログを送付する方法による宣伝(販促)手段」である。形態ははがき、封書、冊子、ゆうパックや宅配便といった小包など、多岐にわたる。
DMはデジタルメディアに比べて高コストだ。しかし、リアルな「モノ」で消費者の五感に訴えかけること、一人ひとりに最適なメッセージを伝えて、行動を喚起することに長けたメディアである。
DMの強みはコンバージョン率の高さにある。日本ダイレクトメール協会が実施している、2016年12月の「DMメディア実態調査」によると、「自分宛てに送られてきたDMに対して、何らかの行動を起こした」人の割合は19.5%に及ぶという。内訳としては、「ネットで調べた」6.7%、「家族・友人などとの話題にした」4.2%、「店に出かけた」3.5%、「購入・利用した」2.6%、「資料請求した」1.7%であった。
DMを活用するには、その背後にあるダイレクトマーケティングの考え方を理解することが重要だ。米国DMA(Data & Marketing Association)は、ダイレクトマーケティングをこう定義している。それは「1つまたは複数の広告メディアを使って、測定可能な反応あるいは取引をどんな場所でも達成することのできる双方向のマーケティング・システム」である。
マスマーケティングは大量生産、大量販売を前提としたマーケティング活動であり、中間の流通業者を経由することが前提となる。一方、ダイレクトマーケティングは、中間の流通業者を経由せずに見込み客や顧客に直接働きかけるマーケティング活動だ。顧客の購買関連情報(購買履歴など)を把握できるので、最適なタイミングで最適な商品・サービスを販売できる。
ダイレクトマーケティングを実施する上で、DMは最も重要なメディアの1つである。DMの目的は主に、「顧客獲得」と「顧客活性化」の2つに分けられる。
顧客獲得では、外部リスト利用(初回購入、来店)、無宛名利用(初回購入、来店)、マスやWebメディアで獲得した見込み客の顧客化に活用する。
これに対し、顧客活性化では、アップセル(リピート購入促進、定期購入化、継続購入)、クロスセル(取引拡大、他商品・サービス購入促進)、ロイヤルティー向上(顧客満足度向上、ブランドロイヤルティー)に活用する。めざすのは、顧客生涯価値(Life Time Value、LTV)の向上である。
ここからはDM企画立案のステップについて解説する。重要なのは、商品やサービスの現状を知り、課題を発見することだ。
ステップ1:売上構造を分解する。売上は客数×客単価だが、これを細分化して「売上方程式」で表すとこうなる。売上=客数(新規顧客+既存顧客-離反顧客)×客単価(来店回数×購入点数×商品単価)。離反顧客とは、以前に自社サービスを利用または購入したことがあるが、その後一定期間、購入または利用がない顧客を指す。
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