デジタル広告周りはいま、混沌としている。だがそれは「Web動画で店頭商品は売れない」「マス広告はブランディング、デジタル広告は刈り取りという役割分担」といった誤解によるものだ。
そもそもの問題は、マス広告とデジタル広告の双方を俯瞰で見られるクリエイターがほとんどいないことに起因している。しっかりした戦略とメディアプランに基づけば、デジタル広告はテレビ、新聞、雑誌、ラジオ、交通・OOH(屋外広告)の次、6番目のマス広告たりえるはずだ。
デジタルクリエイティブとは、6つすべてのマス広告をひっくるめた「次の時代の広告クリエイティブ」なのである。
「Web動画」という言葉には、テレビCMに比べれば一段劣るという「劣等意識的なナニカ」がこめられている。そこで著者は「Web動画」の代わりに、「WebCM」という言葉を用いている。Web広告もテレビCM同様に、投資に対してリターンの見込める「票読み」ができるからである。
目的に応じて内容とメディアプランニングを最適化すれば、WebだけでもテレビCMと同様の成果を出すことが可能だ。たとえば著者の手がけたVAIOノートパソコンの広告では、テレビCMを一切やめ、Webのみで認知から理解、購入までの構造をつくった。「ムダ打ちゼロ」をめざして、ターゲットを特化させ、短期・長期のPDCAサイクルを回すなど緻密な取り組みをした結果、このノートパソコンは売れに売れた。製造が追いつかないため、「お詫びCM」をWebで配信することになったほどだ。
現在のWeb広告は消費者のWeb検索履歴、サイト閲覧履歴、商品購入履歴、特定場所への訪問履歴などの情報をデータベース化し、その消費者がWebサイトを閲覧した際に興味をもちそうな商品の広告を出す仕組みができている。この「ターゲティングの精緻化」こそ、Web広告テクノロジーの革命である。
さらに「運用」も非常に大切な要素だ。これはいくつもの指標を見ながら、ターゲットへ届いているか(リーチ)と、適度な回数で露出しているか(フリークエンシー)のバランスを取る作業である。
なぜアマゾンやグーグルのような企業も、テレビでCMを放映しているのか?
オールターゲットのコミュニケーションにおいて、テレビはWebよりも効率がいい。「テレビCMでやっていることは、みんなが知っておくべきこと」というムードが出る。顕在需要の刈り取りだけならばWebで十分だが、将来的なブランディングを考えると、テレビCMは捨ててはならない。
メディアのこうした特性を踏まえ、大型ブランドのコミュニケーション設計を考える際は、AISASという消費行動モデルがとても参考になる。
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