部下がアスペルガーと思ったとき上司が読む本

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部下がアスペルガーと思ったとき上司が読む本
出版社
河出書房新社

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出版日
2017年04月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

仕事の進め方をまるで理解していない。失敗の責任を他人に転嫁する。時間にルーズで、社会人としての常識をそなえていない。こうした特徴を持つ部下が、あなたの職場にもいないだろうか。彼らはもしかするとアスペルガー症候群をはじめとした、自閉症スペクトラムと呼ばれる発達障害の傾向が強いのかもしれない。彼らは職場で傍若無人にふるまっているように見える。しかし本人たちは職場のことを、言葉や習慣がわからない異国のようにとらえており、びくびくしながら毎日を送っているのである。

アスペルガー症候群とは、自閉症スペクトラムにおける疾患の1つである。知的障害はないものの、社会性、コミュニケーション、想像力の3つに障害があることを特徴とする。スペクトラム(連続体)という言葉が示すように、広汎性発達障害、高機能自閉症などの疾患と明確に区別できるものではない。

アスペルガー症候群の人たちには、たとえ話や皮肉が通じない、叱責が改善につながらない、といった特徴がある。これらは仕事を進めていく上で大きな難点となる。そこで上司は、そのような部下を、まるで学校の先生のように指導する「ジョウシセンセイ」となる必要がある。具体的には「PDCA」における「PLAN」を徹底的に理解させる、工程表で図示しながら仕事の内容を指示する、といったことである。こうした指導を辛抱強く繰り返せば、アスペルガー症候群の部下も、優れた個性や能力を発揮する人材になっていくだろう。部下や同僚への接し方に悩んだときの、信頼できる「処方箋」として本書を活用いただきたい。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

宮尾 益知 (みやお ますとも)
東京生まれ。徳島大学医学部卒業。東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックを開院。主な著書・監修書に『発達障害の治療法がよくわかる本』、『発達障害の親子ケア』、『女性のADHD』、『女性のアスペルガー症候群』(いずれも講談社)、『子どものADHD』、『夫がアスペルガーと思ったとき妻が読む本』(いずれも河出書房新社)など。専門は発達行動小児医学、小児精神神経学、神経生理学、発達障害の臨床経験が豊富。

滝口 のぞみ(たきぐち のぞみ)
東京生まれ。帝京平成大学大学院准教授。青山学院大学卒、白百合女子大学大学院博士課程修了、博士(心理学)。臨床心理士、特別支援教育士。専門は夫婦関係および発達障害で、現在、主に発達障害の保護者および成人の発達障害とそのパートナーと対象としたカウンセリングを行っている。著書に『夫がアスペルガーと思ったとき妻が読む本』(河出書房新社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    不可解な言動をとり、上司や同僚を困惑させる部下が職場にいるのなら、アスペルガー症候群の可能性を考慮したい。
  • 要点
    2
    アスペルガー症候群の人たちは、人の気持ちを推し量ることが苦手であり、日々「生きにくさ」を感じ、職場不適応を起こしやすい。周囲は彼らの特性を理解し、合理的な配慮と、メンタルヘルスの不調の予防策を意識する必要がある。
  • 要点
    3
    上司はアスペルガー症候群の特性が強い部下に対しては、その能力を伸ばすように指導する「ジョウシセンセイ」としての役割が求められる。

要約

発達障害の部下を持ったとき

アスペルガー症候群をこじらせる前に

仕事の基本的な進め方すら理解していないにもかかわらず、上司や同僚に失敗の責任を転嫁する部下。コミュニケーションをうまくとれないために職場の雰囲気を乱してしまう部下。自分のやり方へのこだわりが強く、周囲と協調できない部下。

このように不可解な言動をとり、上司や同僚を困惑させてしまう部下は職場にいないだろうか。彼らはアスペルガー症候群など、自閉症スペクトラム(ASD)の特性が強いのかもしれない。ここからはその総称であるASDの人と呼ぶことにする。

ASDの人にとって生きづらい現代社会
kieferpix/iStock/Thinkstock

ASDの人たちは、こだわりが強く、対人関係や人の気持ちを推し量ること、想像することが苦手である。そのため、なんとか社会に適応しつつも、職場では居心地の悪さを感じ、びくびくしながら暮らしている。一見不可解に見えるASDの人たちの言動にも、それぞれ理由があり、それを説明することが可能である。

ASDの人たちは周囲の無理解に対し、時に強い怒りを覚え、訴訟などの敵対的な攻撃に出たり、突発的に自己破滅的な行動をとったりすることがある。こうした問題が起きる前に、ASDの人たちにどう対応すればいいのかという理解が深まれば、互いのかみ合わなさなどの苦労や葛藤を抱えずにすむのではないだろうか。

現代社会は、ASDの人たちにとって厳しい環境である。かつては、顔見知りの商業圏で仕事が成立していた。そのため仕事の能率が悪く、少々間違いがあっても、失敗を許しあえた。しかし現代社会では、高度な対人スキルを要求される仕事が中心になっており、消費者は商品やサービスに高い水準を求めるようになった。そのため生産者側は少しのミスも許されない。

ASDの人たちの中には、このような社会環境に疲労して自信をなくす人や、うつ状態となる人もいる。また、彼らには知的障害がないため、大学進学、もしくは就職後にアスペルガー症候群だと診断される場合もあることが、問題をさらに複雑にしている。本来なら、神経発達症の特性を持つ人々には、とても優れた面がある。それを最大限引き出すには、周囲の気づきや理解が肝要なのである。

アスペルガー症候群とは?

本書ではアスペルガー症候群を、広汎性発達障害、高機能自閉症などと並んで、自閉症スペクトラムの疾患の1つとして位置づけている。自閉症とは診断されていないが、社会性、コミュニケーション、想像力の3点において障害を持つ子どもたちが存在しており、これがアスペルガー症候群という概念を生むこととなった。

スペクトラム(連続体)という言葉どおり、自閉症とアスペルガー症候群はひとつながりのもので、どこかで厳然と区別できるものではない。

ではアスペルガー症候群の特徴とは何か。まずは、抽象的で曖昧な表現が理解しづらいという点が挙げられる。また、全体を見ることが不得意で、細かいところに注目しがちである。

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要約公開日 2017.10.28
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