新しいビジネスモデルを生み出すことは簡単だ。なぜなら世にある新しいビジネスモデルのほとんどは、既存の事例を少し応用しただけのものだからである。
新しいものは、既存のものと既存のものを掛け合わせることで生まれる。たとえばディスカウントストアの「カクヤス」は、個人宅から個人宅へスピーディに配達するため、エリア毎に配送基地をつくり、その範囲内であればすぐに届けられるようにした。酒屋の仕組みと宅配サービスの仕組みを掛け合わせたというわけだ。今ではお酒の配達で「カクヤス」に勝つことは難しいほどに、大きな成長を遂げている。
このように新しいビジネスモデルを生み出すうえでは、ある程度の公式が存在する。その50個の公式についてわかりやすく解説していくのが本書だ。
新しいビジネスモデルを発想するうえでは4つの軸がある。これらの軸にテコ入れすることで、新しいビジネスモデルを創出することができる。
第1の軸は対立概念である。たとえば外食に対しては、自炊という概念が対立している。この2つを合わせてみると、「あのイタリアンレストランのパスタを自宅で簡単に」という発想が生まれる。
第2の軸はシーケンシャルだ。シーケンシャルとは、順番に並んでいることをいう。その並びを変えてみるとどうなるだろうか。たとえば高価格のものを低価格に、低価格のものを高価格にしてみる。あるいは長時間かかるものを短時間で提供するといったことが考えられる。
第3の軸はビジネスプロセスである。ビジネスプロセスは、企業側のプロセスと顧客側のプロセスに分かれている。
企業プロセスとして有名なものはバリュー・チェーンだろう。バリュー・チェーンとは原材料の調達から製品・サービスが顧客に届くまでの企業活動を、一連の価値の連鎖として捉えることだ。
顧客プロセスではAIDMAが有名である。AIDMAとは、顧客が商品やサービスの購入までに至るプロセス(Attention、Interest、Desire、Motive、Action)を指す。こうした流れのどこかを変えることが、新しいビジネスモデルの創出につながる。
第4の軸はカテゴリーだ。地域や産業、種類といったカテゴリーを、今属しているものとは別のものに置き換えられないか考えてみよう。
ビジネスモデルを考える際に有効なのが垂直思考だ。つまり抽象化と具体化を行き来するのである。
たとえば「カフェ」と「航空会社」という、まったく異なるものを抽象化するとどうなるか。カフェはコーヒーなどを提供する。航空会社は飛行機を飛ばすが、食事も出す。つまりどちらも「食事を出す」という点では共通している。このように抽象化することで、異なるものの中にある共通点が見えてくる。
共通点が見えたら、次にやるのは具体化だ。カフェと航空会社の例でいえば、「カフェでやっていることを飛行機の中でもできないだろうか」と考え、実際の商品やサービスに落とし込めないか検討する。
このように抽象化からの具体化という2つのステップを踏んでいけば、新たなビジネスモデルを生みだすことも容易になるだろう。
ビジネスモデルは、以下の6つの切り口から考えることで、より簡単に生み出せるようになる。なぜならほとんどのビジネスモデルは、これらの要素にテコ入れしただけのものだからだ。
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