戦略の本質

相手を知り、動きを読み、弱みを突く
未読
戦略の本質
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相手を知り、動きを読み、弱みを突く
著者
未読
戦略の本質
ジャンル
著者
出版社
出版日
2017年07月04日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

戦略と名のついた本は数多くある。が、本書がそれらと一線を画しているのは、著者がコンサルタントとして第一線で戦略を練り続けた、35年間ぶんの現場の知識がもとになっている点だ。著者は次のように語る。有名校でMBAを学ぶことはもちろん意味があるが、それよりも実地で得る知識のほうがはるかに役に立つし、応用がきく、と。

本書は、戦略とは決まった答えがあるものではなく、相手や状況次第でダイナミックに変化するものだとしている。しかし、その前提の上でも変わらない、王道ともいえる考え方や、正解への道筋のつくり方を解説している。まさに、『戦略の本質』というタイトルを裏切らず、小手先の技でなく「本質」を語る一冊である。

たとえば著者は、「事業を拡大する成長戦略」においては、自社が持っている技術や販売チャネルなどの強みを使って、延長として新しい分野に挑戦すべし、と説く。「飛び地」作戦のように点で展開する作戦は守りに弱いため、時間がかかるが守りに強い、面で広がる「ロールアウト」作戦をとるのが王道だという。もちろん、状況によってやり方は異なるはずだが、本書を読めばこれぞ原則、ということが理解できるだろう。

本書の語り口は明晰で、とてもわかりやすい。著者が関わった企業の事例や、スポーツや歴史上の出来事から読み取る戦略のありようなど、さまざまな事象を取り上げながら「戦略の本質」が語られるため、「戦略」という言葉だけで難しさを感じてしまう読者でも、無理なく読み通すことができるだろう。

ライター画像
二村英仁

著者

堀 紘一 (ほり こういち)
1945年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業。ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。株式会社読売新聞、及び三菱商事株式会社、株式会社ボストンコンサルティンググループ(BCG)社長を経て、ドリームインキュベータ(DI)創業。現在同社代表取締役会長。
金融、ハイテク、消費財、レジャー、アミューズメントをはじめ数多くの業界に対し、マーケティング・営業戦略、Eコマース、長期戦略など数多くの戦略策定及び実行を支援。
著書に、『正しい失敗の法則』『コンサルティングとは何か』『日本の成長戦略』(以上、PHP研究所)、『ホワイトカラー改造計画』『21世紀の企業システム』(以上、朝日文庫)、『一流の人は空気を読まない』(角川書店)、『リーダーシップの本質 改訂3版』(ダイヤモンド社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    勝ち負けというのは自滅によって決まる。したがって、守りを固め、相手が自滅するパターンをつくることが戦略の王道である。
  • 要点
    2
    どんな局面でも通用する戦略は存在しない。相手や、時と場合に応じて改善を加え続ける必要がある。
  • 要点
    3
    戦略は、企業がシェアトップなのか二位以下なのかで立て方も違う。同様に、ビジネス形態の違いでも立て方は異なる。
  • 要点
    4
    よい戦略を立てるには、観察力、連鎖思考力、質問力、想像力、創造力の5つの力が欠かせない。これらを日頃から鍛えておくことが重要だ。

要約

戦略の基本常識

戦略の王道
Ingram Publishing/Thinkstock

勝ち負けを競うものには必ず戦略が必要になる。

スポーツや、碁や将棋などのさまざまなゲームを見ていてもわかることだが、勝ち負けというのは自滅によって決まる。強い方が勝つのではない。

たとえば野球でいうなら、むずかしい球を打ってホームランになるということはほとんどない。ホームランバッターというのは、ピッチャーが招いた失球をしっかり捕らえてホームランにする。一方で、強いピッチャーというのも、勝負どころでの失球は少なく、相手の自滅を誘うのがうまいものだ。

そして、勝つために大切なことは、「勝ちにいかないこと」である。なぜなら、勝ちにいくと必ず隙ができ、それが仇となって自滅につながることが多いからだ。ゲームとしてはおもしろくなくなるが、勝ちにこだわるなら守備に徹するのが基本戦略としては正しい。

つまり、勝負事では自分に有利な状況をつくりだしていくことが大切だともいえる。決して勝ち急ぐことなく、時間をかけてでも守りを固め、相手が自滅するパターンをつくる。これができれば負けることはない。負けさえしなければ最後には勝つ。これが戦略の王道だ。

戦略は相手あってのもの

戦略というのは、相手があるからこそ成り立つ。そして、相手が存在する以上、時と場合に応じて戦略は刻々と変わっていく。

サッカーW杯の予選でも、現在何位で、次の対戦相手のレベルはどのくらいで、勝ち点は何点取ればいいのか、そうした状況によって戦い方は異なる。つまり、どんな局面でも通用する戦略は存在しない。

「戦略」と「戦術」

戦略は、より具体的な戦術へ、現場レベルの戦闘へと落とし込んでいくことが必要である。戦略とは方針であり、戦術は計画であり、戦闘は行動だ。

「戦略」と「戦術」の違いについては、豊臣秀吉と徳川家康の能力の違いに学ぶのが最もわかりやすいだろう。

まず豊臣秀吉は、日本最大の「戦術」家であったといっても過言ではない。秀吉は、たとえば敵の城を攻める際、城の周囲を全部囲うのではなく少し空けておいたという。負けを感じた敵の逃げ場所を用意し、逃げていく敵を殺すようなことはしなかった。その結果、攻めることなく相手側の守備兵を減らせただけでなく、味方側の死傷者も減らすことができ、勝利してなお次の戦の余力も残しておくことができた。戦力を温存して次の戦を戦う、これが、秀吉が天下統一を果たせた理由の一つといえる。

一方で徳川家康はというと、日本最高の「戦略」家だ。家康は、とにかく負けない戦い方を貫いた。まず家康は、時間がかかっても負けることのないよう、多数派工作をする。そして、情報戦で有利に立ち、時間をかけて粘り強く攻める。そうしたやり方で最終的な勝利を手にしたのだ。

シェア争いにおける戦略の立て方

シェアトップと二位以下の戦略
phototechno/iStock/Thinkstock

企業間の勝負は、一部の例外をのぞいて、基本的には市場のシェアを競うものになる。たとえば自動車業界は、トヨタのプリウスがヒットしたら、競合他社も対抗車を販売しようという話になる。市場全体を三、四社が競っているような場合は、シェア争いは一段と激しくなる。

いかにシェアを拡大するかという戦略は、その企業が業界でトップなのか二位以下なのかによって立て方がまったく違う。この違いを理解することは大変重要である。

まず、業界トップ企業なら、基本的な戦略はとにかく守りを固めることだ。たとえ追随する企業に一か所でも風穴を開けられてしまったら、そこを起点に影響が広がり、ひいてはトップの座をも奪われかねないからだ。したがって、360度全方位で守りを固めることが、トップに求められる戦略である。

二位以下の企業の戦略はというと、そのトップが固める守りのどこか一点でも突破することだ。新商品、品質など、トップより優位に立てる点を探し攻め込んでいく。どこでもいいから勝てる部分をつくることに集中するのが二位以下の戦略だ。

ただし、二位以下は価格競争には手を出してはいけない。なぜなら、同様の手段をトップが取った場合、体力差で負けることが目に見えているからだ。よって、価格ではなく技術面など、トップでも簡単には真似できない点で勝負することが有効である。

ベンチャー企業の場合はどうかというと、とにかく、強みである新しさで勝負することだ。シェアを占める企業とはどの点が違ってどこが新しいかを明確にし、その新しさを一刻も早く実現させることが、ベンチャーの取るべき戦略である。

ビジネス形態による戦略の違い
DAJ/Thinkstock

ビジネス形態が、BtoBかBtoCかによっても戦略の立て方は異なる。

BtoBであれば、不良品を出さないこと、納期を守ることが信頼を獲得するための基本的な戦略となる。というのは、

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要約公開日 2017.11.15
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