博報堂のすごい打ち合わせ

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博報堂のすごい打ち合わせ
出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2017年06月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

時代をつくる寵児の中にはクリエイターと呼ばれる人間が少なくない。その類まれな感性で思いもよらぬアイデアを世の中に提示し、多くの人の心を鷲づかみにする。こうした有名クリエイターを数多く輩出する企業のひとつが、大手広告代理店の博報堂だ。ではなぜ博報堂は、常に斬新なアイデアを生み出せるのだろうか。

その秘密のひとつは、博報堂にアウトプットの質を飛躍的に向上させる「打ち合わせ術」が存在するという点だ。この打ち合わせ術は、クリエイティブ部門はもとより、営業や経理、人事、そして経営陣まで含めた全社員が共有する門外不出の手法であった。長年にわたり暗黙知として脈々と受け継がれてきたその打ち合わせ手法を、5年前に社内の特別プロジェクトチームが整理して体系化した。これをベースに、新しい発想が飛び出す「話し方」「聞き方」の奥義を、誰でも応用できるように紹介しているのが本書だ。興味深いのは、想定外の発想を生み出す打ち合わせでは、その50%を「雑談」が占めているという点である。

「優れたアイデアを生み出せるかは個人の才能によるもの」と捉えられがちだ。しかし本書を読み進めるにつれ、斬新な発想は「しくみ」によって促せることが実感でき、目から鱗が落ちるに違いない。

クリエイティブ系の企業のみならず、あらゆる企業が抱える「発想・アイデア」の課題を解決するガイドブックとして、ぜひ本書をお読みいただきたい。

ライター画像
田中佐江子

著者

博報堂ブランド・イノベーションデザイン局
ブランドとイノベーションを専門領域として革新的なソリューションを生み出している博報堂の社内専門組織。コンサルタント、マーケター、デザイナー、コピーライター、建築士、UXデザイナー、組織開発など、多彩なバッググラウンドをもつメンバーが、異なるクライアントの課題に対して、戦略からアウトプットまで一貫したソリューションを提供する。ブランド戦略立案をはじめ、組織・風土改革、ビジョン策定、新事業開発、商品・サービス開発、UX・UI、空間デザインといった様々なビジネス領域をカバーし、クライアントや外部専門家と深くコラボレーションする「共創型」のプロジェクトを得意としている。主な著書に、『「応援したくなる企業」の時代~マーケティングが通じなくなった生活者とどう付き合うか~』(アスキー新書)、『チ-ムのアイデア力。』(日本能率協会マネジメントセンタ-)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    博報堂の打ち合わせは50%が「雑談」でできており、打ち合わせ中の会話には「しくみ」がある。
  • 要点
    2
    ひとりの天才に頼るのではなく、チームや組織全体で創造性を発揮する「集合天才」の概念を取り入れている。
  • 要点
    3
    課題解決やアイデア出しを目的とした博報堂の打ち合わせは、「共有」「拡散」「収束」「統一」の4つのプロセスで構成される。
  • 要点
    4
    アイデア出しでめざすのは、個人の力の「競争」ではなく、チーム力で生み出す「共創」だ。
  • 要点
    5
    博報堂の打ち合わせは「ぬかみそ」のように混沌としている。

要約

博報堂の打ち合わせ術

打ち合わせ50%が「雑談」

「なぜこんなに雑談が多いの?」「なぜアジェンダがないの?」博報堂に転職した社員が初めて打ち合わせに参加した際、必ずそう口にする。また外部の来訪者は、他の会議室から聞こえてくる笑い声の多さに驚く。

2009年、東京大学大学院・教育学研究科の岡田猛教授の研究グループは、博報堂の打ち合わせの特徴を調査した。この調査によると、博報堂の打ち合わせは50%が「雑談」でできており、ゴシップや悪口が打ち合わせの潤滑油になっているという。ここで飛び交う雑談は、新しい発想が生まれる会話の「しくみ」から生まれている。

博報堂ならではの打ち合わせ手法は、暗黙知として社内で共有されてきた。本書は、これらを体系化したものをベースに、博報堂の各部門へのヒアリングを行うことで完成したガイドブックである。

博報堂が大事にする「集合天才」の概念
Vadim_Key/iStock/Thinkstock

1895年、博報堂は、瀬木博尚氏が設立した教育雑誌の広告取次店として産声をあげた。やがて時代の変化に合わせ、サービスの主軸を広告スペースから、「マーケティング」「クリエイティブ」に変更した。生活者の視点から発想することで新しい価値を創造する企業として生まれ変わったのである。

博報堂に課せられた命題は、想定外のアイデアの提供だ。ひとりの社員が思いつく発想には限界がある。そこで、ひとりの天才に頼るのではなく、チームや組織全体で創造性を発揮する「集合天才」の概念を取り入れている。

こうした理念を持つ博報堂の打ち合わせは、人間にとっての「水」にたとえられるほど、欠かせない存在だという。打ち合わせでできている企業といっても過言ではない。目的は、「考えやアイデアを出し合い、積み上げていく」こと、「参加者全員が自発的、相互的に意見を出しながらひとつの答えを導く」ことである。

「アイデアは、人ではなく会話に宿る」。こうした考えのもと、個々のメンバーが事前に考え抜いたアイデアを持ち寄り、想定外の発想を生み出すために打ち合わせに臨んでいる。

「拡散」の重要性

では、博報堂の打ち合わせとは具体的にどのようなものなのか。博報堂が定義する、課題解決やアイデア出しを目的とした打ち合わせは、「共有」「拡散」「収束」「統一」という4つのプロセスで構成される。概略は次の通りだ。

共有:目的や進め方など、打ち合わせの前提となる情報を参加メンバーで共有する。

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要約公開日 2017.12.09
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