お酒が大好きな人も、悪酔いするために飲むわけではない。お酒に強くない人であれば、なおさらだ。「飲まなければよかった」と後悔しないためにも、悪酔いから身を守る術はいくつか覚えておきたい。
まず大前提として、お酒を飲むときはしっかりと食事を取るべきである。では「なにを」「どのタイミングで」食べるとよいのだろうか。
東海大学医学部教授の松嶋成志氏によると、悪酔いを防ぐ鍵はアルコールの血中濃度を急上昇させないことにあるという。酔いがまわるというのは、アルコールの血中濃度が高い状態のことだ。
アルコールは身体の中に入った後、胃と小腸で吸収される。ただしその割合は胃がおよそ5%、それ以外の95%が小腸と、大半が小腸だ。小腸の表面積は成人男性の場合、テニスコート一面分ほどもある。一度小腸に送られてしまえば、アルコールは一気に吸収されてしまう。
酔いを遅らせる(血中濃度を上げない)ためには、いかにアルコールを胃に留めて、小腸へ送られる時間を引き延ばすかが鍵となる。お酒を飲む前は、できるかぎり胃による消化が遅い食べ物を口にしておくべきだ。
悪酔い防止に一役買う食べ物、それはずばり「油」だ。油は胃での吸収時間がとても長い。たとえばごはん100gを胃が消化するのに必要な時間は2時間15分だし、ビーフステーキ150gなら3時間15分かかる。一方でバター50gの場合、なんと消化までに12時間も必要とする。油分が胃の中に入ると消化管ホルモンが働き、胃の出口を塞いで撹拌するためである。
とはいえ「油をそのまま食べろ」というわけではない。オリーブオイルを回しかけるカルパッチョ、マヨネーズで仕上げるポテトサラダなど、油を使う料理をお酒が入る前に食べればいい。唐揚げやフライドポテト、チーズなども有効だ。
また脂肪分を含む牛乳やキャベツにも、悪酔いを防ぐ効果が期待できる。ビタミンU(キャベジン)を多く含むキャベツには、ムチンと呼ばれる胃の粘膜表層を厚くして、アルコールの刺激から胃を守ってくれる効果がある。ただしビタミンUは熱に弱いため、生に近い状態で食べるのが望ましい。ビタミンUはキャベツ以外にも、ブロッコリーやアスパラガスに多く含まれている。
お酒を飲む前の対策も重要だが、飲んだ後にできるかぎり二日酔いを避けるための方法も知っておきたい。
アルコール血中濃度はいったん上がるとすぐには下がらない。しかし前述の松嶋氏によると、その場合でも「アルコールの分解に必要な代謝物を補うこと」は大切だという。
たとえばタウリンである。これはタコやイカに含まれる。ひまわりの種や大豆に含まれるL-システイン、ごまの成分であるセサミンも、肝臓の代謝を助けるのに役立つ。
加えて水分の摂取も欠かせない。アルコールには利尿作用がある。脱水症状を防ぐためにも、お酒を飲む前後問わず、水分は取るように心掛けるべきだ。日本酒造組合中央会は、日本酒を飲む際に「同量程度」の水を飲むよう推奨している。
なお飲酒後は、電解質が含まれる飲料のほうが、水分維持により効果的である。
アルコールは体にとって「毒」である――そう答えるのは国立がん研究センターの津金昌一郎氏だ。適量を超える飲酒が続くと、疾患リスクは高まる。
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