他の職種に比べて、営業は低く評価される傾向にある。著者自身、飛び込み営業を経験したが、人間扱いされないこともしばしばあった。しかし、理想の営業は、顧客に求められ、成長を実感でき、ストレスフリーであることである。本書には、そんな理想の営業パーソンになるために実践すべきことが凝縮されている。
日本の営業はとかく個人任せだ。おそらく、営業プロセスの体系化が不足しているせいだろう。そのため、組織的改善に取り組めず、感覚的な経験則に則っているだけという営業パーソンも多い。しかし、これは「型」を増やすことで改善できる。
もちろん、型が必要とはいえ、マニュアルに一律沿えばいいというわけではない。顧客の期待に応えるアプローチが必須となる。それは、「何か困りごとはありませんか?」と、御用聞きをする営業ではない。顧客と会う前から仮説を準備して、顧客の課題解決をめざさなければならない。
そのため、すぐに外勤営業(セールス)に出向きたい気持ちを抑え、内勤営業(マーケティング)に注力することが望ましい。確率論でいえば、「顧客をどう説得するか」よりも、「どの顧客を説得するか」を重視したほうが、大きなインパクトを期待できる。具体的には、3対7くらいで後者のマーケティングに注力すべきだと著者はいう。
では、営業が成長するために必要な4つの力とは何か。1つ目は「仮説思考力」である。この力は、日頃から物事を分解して考える習慣で身につく。著者は「仮説営業」というスタイルを実践してきた。営業プロセス全体を俯瞰し、ボトルネックがどこなのかを推論し、検証していく。これは特に、顧客の課題を特定すべき場面で力を発揮する。
2つ目は「因数分解力」だ。思考の整理、課題の見落としを防ぐのに欠かせない力で、仮説の精度を高めてくれる。まずは「営業」をプロセスで因数分解するとよい。可視化して、できるだけ細かく分解することで改善点を見つけやすくなる。営業に奇抜なアイデアは必要ない。因子の見落としさえなければ、必ず結果はついてくる。
3つ目は「確率論的思考法」である。インサイドセールスでは、課題や改善点を徹底的に数値で把握し、戦略を練っていかなければならない。この思考法を活用する最大の利点は、営業が確率の世界でしかないことを実感できることだ。営業は初めから失敗の山の上に成果を出す運命にある職種といえる。だからこそ、1件断られるたびに自己否定されたと感じてしまわないよう、数値に落とし込むことを著者は推奨する。
そして、4つ目は「PDCAを回し続ける力」だ。重要なことはPがすべて仮説だという点である。PDCAサイクルを回し続け、型、つまり「勝ちパターン」を増やすようにしたい。
金融業界にも「数打ちゃ当たる精神」の営業パーソンはいる。しかし、著者は、顧客にコンタクトをとる前に、情報収集とニーズの仮説構築を必ず行っていた。顧客に会う前から「答えらしきもの」を用意することが、仮説営業の真髄である。
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