コーヒー飲料や健康ドリンクなどの清涼飲料水には、とても多くの砂糖が含まれている。これは誰もが知る事実である。健康な人間の血液中に存在するブドウ糖は4グラム前後だ。だが清涼飲料水のなかには、それをはるかに上回る糖質が含まれている。大量の糖質が液体として急に体内へとりこまれると、体が変化に対応できず、血糖値は急上昇してしまう。血糖値が高い状態は肥満につながる。さらには脳疾患や心疾患、がんなどの病気を招きかねない。
健康のカギは、血糖値のコントロールにある。血糖値を引き上げるのは糖質だ。糖質はごはんやパン、お菓子などに含まれる。なかでも清涼飲料水などの液体で摂取した場合、胃での消化に時間がかからず、血糖値が一気に上がってしまうので危険だ。
血糖値が上がると脳内物質が分泌され、一時的に「至福点」(ハイな状態)に達する。しかし体内の変化を察した膵臓が大量のインスリンを放出すると、今度は血糖値が急激に下がり、イライラなどの不快な症状が出る。こうした血糖値の急激な低下による不快な症状を「反応性低血糖」という。疲れやすさ、眠気、集中力が続かないなど、さまざまな症状がこれに当てはまる。そしてハイな状態に戻るために糖質を繰り返し摂取すると、体は「糖質中毒」に陥ってしまう。
清涼飲料水などをつくる食品メーカーは、どのくらいの糖質を入れれば至福点に達するかを計算して製品をつくっている。オーストラリアでヒットしたドキュメンタリー映画『あまくない砂糖の話』で描かれたように、一見するとヘルシーで、「健康にいい」「パワーが出る」といったうたい文句で売られる製品のなかにも、砂糖はたくさん含まれている。こうしたものに対しても、十分な注意を払わなければならない。
私たちは太古の昔から、飢えないための脳のプログラムを引き継いでいる。糖質をとるのは、食べ物が摂取できない場合に備えてエネルギーを蓄えるためだ。
しかし飢えることが少ない現代で、体の求めに従って糖質を取りつづけても、糖質中毒になるのがオチである。そうした事態を防ぐには、私たちに本来そなわっている消化・吸収の仕組みどおりに、食べ物を選ぶことが肝要である。
狩猟採集によって食べ物を得ていた縄文時代は、約1万2000年以上の長きにわたって続いた。これは水稲耕作をはじめてからの時代よりも長い。国立科学博物館の神澤秀明氏らの研究によると、いまの日本人は縄文人のDNAを強く受け継いでいるという。私たちの体がこの頃の人々の消化・吸収システムや脳のシステムと大差ないのであれば、縄文人のころになかったものは口にするべきでないといえる。
肥満の原因は「糖質(炭水化物)」である。カロリーを減らすことは、肥満とは関係ない。脂肪のカロリーは高いが、食べすぎても便でほとんど体外に排出される。その一方で糖質は体内で100%吸収され、分解・合成されたあと脂肪となり、体内に残ってしまう。
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