最高の体調

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出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2018年07月21日
評点
総合
4.5
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
5.0
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おすすめポイント

一日寝て起きても疲れが取れず、体がだるい。会社に行っても仕事に集中できず、ミスしてしまう。なんだか能率が悪いと感じる。内臓脂肪が増えて、メタボリックシンドロームと診断されてしまった――。高度に発展した現代においてさえ、私たちはこうした問題を解決できないでいる。

健康上の問題とビジネス上の問題は、ともすると別々のものとして扱われがちだ。だが本書はより根本的な解決法を提示する。それが「進化医学」という視点である。

人類が農耕社会へ移行したのはわずか1〜2万年前のこと。約600万年ものあいだ、人類は狩猟採集生活を営んでおり、私たちの体もそうした環境に適応するべく進化してきた。その前提を無視して、たとえば「風邪をひいたら風邪薬を飲む」という対症療法だけをしていても、本当の解決にはならないというのが著者の主張である。

やせたくてもつい高カロリーな食事を選んでしまうのも、じつは人類の体に古代から染みこんだ遺伝的な性質が関係しているという。意志の弱さが原因だと安易に考えていては、的を射たアプローチはできない。ぜひ本書を参考に、「最高の体調」を手に入れてみてはいかがだろう。

ライター画像
金井美穂

著者

鈴木 祐 (すずき ゆう)
新進気鋭のサイエンスライター。1976年生まれ、慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。近年では、自身のブログ「パレオな男」で心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、3年で月間100万PVを達成。また、ヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    文明がここまで発達したにもかかわらず、私たちは依然としてさまざまな問題を抱えている。だがその大半は「文明病」に起因するものであり、個人の意志の弱さや性格に原因があるわけではない。
  • 要点
    2
    文明病を解決するためには、まず自分が抱える問題の遺伝的なミスマッチを特定し、そのミスマッチを起こしている環境を修正することが必要である。
  • 要点
    3
    現代人の問題は大きく「炎症」と「不安」に大別できる。炎症を防ぐうえでもっとも手軽でメリットが多いのは自然との接触を増やすことであり、不安に対処するうえでもっとも重要なのは価値観を固めることだ。

要約

【必読ポイント!】 進化医学と文明病

根本的な原因は「文明病」にあり
monzenmachi/gettyimages

ワシントン州の牧師、ボブ・ムーアヘッド氏は、「現代の矛盾」というエッセイのなかで次のようなことを書いている。「私たちは高度に発達した文明のなかで生きている。だが、おかしなことに、巨大なビルや広い道路を作ったにもかかわらず、私たちの視野は狭くなり、便利な世の中になったにもかかわらず、私たちは時間を失った」(一部抜粋)。

朝すっきりと目覚められず、重い足取りのまま会社へ行く。集中力のないまま仕事をこなし、適当な食事で昼食を済ませる。一日の仕事を終えたら、ぐったりと疲れ切った体で帰宅し、なんとか眠りにつく――。こんな現代人は少なくないだろう。

住みよい環境になったにもかかわらず、幸福からほど遠い人生を送っている人たちの多くは、その原因が自分自身にあると考えている。だがその原因の多くは自分自身の不注意や意志の弱さ、気弱な性格ではなく、現代特有の「文明病」に由来している。

「肥満」に立ち向かうのは時間のムダ

現代社会に起因する特有の病気や症状を「文明病」という。その典型的な例が「肥満」だ。現代に肥満が蔓延しているのは、昔よりも社会が豊かになったからに他ならない。

著者は「進化医学」という観点から、その解決法を探っていく。進化医学とは、ダーウィンの進化論と最新医学の知見を組み合わせた学問で、「ダーウィニアンメディスン」とも呼ばれる。

人類はわずか1〜2万年前に農耕生活へ移行するまで約600万年ものあいだ、狩猟採集生活を営んでいた。古代ではカロリーは非常に貴重な資源だったので、人類は自然と高カロリーな食事を好むように、みずからの脳を進化させた。だが飽食の時代となると、今度は高カロリーな食事を好む脳をうまく調節できず、それが肥満につながっている。

ようするに肥満の原因は意志の弱さでも何でもなく、人類の進化と現代社会のミスマッチにあるといえる。意志の力だけで「肥満」に立ち向かっても、時間のムダになりかねない。

脳と体を最適化する
marilyna/gettyimages

著者が進化医学に興味をもったのは、現代病と進化論の関係を説いたミシガン大学のランドルフ・ネシー博士の有名な論文を読んだときだった。そのころ出版社の社員として不眠不休で働き、食生活はコンビニが中心の不健康な生活を送っていた著者は、体調を崩しがちで、仕事のパフォーマンスも低下の一途をたどるばかりだった。

そこで一念発起し、進化医学のアイデアを試すことにした。自分の脳と体を最適化して、自分の遺伝子がもつポテンシャルを最大限まで引き出すことをゴールとしたのだ。ベースとなったのは、旧石器時代の食事法という意味をもつ「パレオダイエット」である。半年ほどで驚くべき変化が現れた。体重は半年のうちに13kg減少し、体脂肪も35%から12%に激減。二重あごは解消し、筋肉もついた。なにより嬉しいことに、集中力と生産性が飛躍的に改善した。

現代人の不調の原因を探るうえで、「文明病」というアイデアは非常に有効である。まず自分が抱える問題のどこに遺伝的ミスマッチがあるのかを特定し、次にミスマッチを引き起こしている環境を、自分の遺伝的特徴に適したものへ修正していく。この2つのステップを踏むことで、現代人にありがちな不調のほとんどは解決できる。

本書では現代人が抱える問題を「炎症」と「不安」の大きく2つの要素に分類し、それぞれの対処法について検討していく。

「炎症」に見る古代と現代のミスマッチ

謎の体調不良の正体

2016年に慶應義塾大学医学部のチームが調査したところ、100歳を超えてなお脳や体のパフォーマンス低下が見られないスーパー高齢者は、体の炎症レベルが非常に低いことがわかった。これは逆にいうと、

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要約公開日 2018.11.17
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