1947年、日本人の平均寿命は52歳だった。だが2016年時点で、日本人の平均寿命は84歳とされる。じつに30年以上伸びている計算だ。このままいくと2050年までに、100歳以上の人が100万人を超えるだろう。これまでの労働観や人生設計では、こうした変化にとても対応しきれない。
昨今では専門性さえあれば、40歳や50歳でも即戦力として働けるようになった。年齢で自分の可能性を限定しなくていいという意味で、これは幸福なことだといえる。ただしそれは健康であり続けたらの話だ。現在の定年は60歳だが、「高年齢者雇用安定法」により希望者に対して65歳までの雇用が義務化されており、今後も延長する可能性がある。
こうした時代においては、もはや24時間ぶっ続けで働くことは不可能だ。「長時間労働時代」は終わりを告げ、いまは50年働くことを見越した「長期間労働時代」に突入している。心身ともに健康なまま、できるだけ長く“高パフォーマンス”を維持することが、現代を生きる私たちには求められている。「40歳から大人」くらいの人生設計でちょうどいいのだ。
とはいえ人間の生物としての機能は、20万年前からほとんど変わっていない。30代以降になると体力はどんどん落ちていくし、40歳を超えると健康診断の有病率が増えていく。とくに男性の場合、体調がパフォーマンスに与える影響に無自覚なことが少なくない。
こうした社会的な年齢感覚と生物学的な年齢のギャップを埋める手立てとして、今後「予防医療」という考えは必須となるだろう。
2017年の推計で、日本のがん死亡数は約37万8千人(男性22万2千人、女性15万6千人)だった。部位別に見てみると、男性では肺がん(25%)がもっとも多く、女性では大腸がん(16%)が最多となっている。がん全体の罹患数は約101万4千例あり、高齢化や長寿化にともない、ますます増えているのが現状だ。
一般的にがんは生活習慣が大きな要因と思われているが、日本人のがんの約25%は細菌やウイルスによる感染症だといわれている。たとえば胃がんの主な原因はピロリ菌への感染だ。早期に感染を発見できれば、薬で除菌治療することも可能なのだが、日本では「感染症由来のがんが多い」ということが、医療関係者以外にはまだあまり知られていない。
国内における現状の胃がん予防対策は、50歳以上を対象とした「胃がん検診」が中心である。しかし胃がんによる死亡数を減らすためには、中学生ぐらいの時点で検査をおこなってしかるべきだ。
また肝臓がんも感染症由来であり、予防が可能ながんの一例である。かつてはアルコールの飲み過ぎが原因とされていたが、それは複合要因のひとつにすぎないことがわかってきた。肝細胞がんの多くは肝炎ウイルスの感染によって発症するため、これも肝炎ウイルスの有無を調べておけば予防できる。
感染症由来ではないが、大腸がんは予防や早期発見が簡単だ。ところが大腸がんは部位別がん罹患数第1位であり、前述したように女性のがんの死因第1位にもなっている。
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