40代からの人生を確かなものにするには、自分の価値を上げていくことが大事だ。つまり、自分の「希少性」を高め、ゲームでいう「レアキャラ」になることである。そのためには、身につけたキャリアを掛け合わせ、進化させていく必要がある。それぞれのキャリアが特殊なものでなくても、掛け合わせ方によっては、100万人に1人の存在になることができる。
これを実現するための考え方として、「キャリアの大三角形」を紹介しよう。40代いっぱいで3つのステップを踏み、それらを結んでできるだけ大きな三角形をめざす。
まず1歩目として、最初の5〜10年で、ある分野の仕事をマスターする。1つのことをマスターするのに必要な時間は約1万時間だと言われる。1日7時間労働とすれば、約4年でその仕事を習得できる計算だ。どんな職種でも1万時間取り組めば、100人に1人くらいの希少性が得られるだろう。これが三角形の基点となる。
次の5〜10年では、さらに1万時間を費やし、違う分野の仕事をマスターする。あるいは、1歩目と隣接する仕事を深める手もある。1歩目が経理の仕事であれば、2歩目では財務を覚え、税理士や会計士を目指す、といった具合だ。ここまでで2点が定まり、生きていくための下地、いわば三角形の底辺が形づくられる。
さらに、40〜50代にかけて3つ目のキャリアを築こう。3つのキャリアそれぞれで100人に1人の希少性があるとすれば、掛け合わせて100万分の1の存在になれるはずだ。
ある調査によれば、40代半ばになると、キャリアの終わりを意識する人が半数を超えるそうだ。体力の衰えを自覚したり、成長を実感できなかったりして、仕事の意義を見失ってしまうことが原因のひとつだろう。成長の実感がないままその後の数十年を過ごす人生は、豊かだとは言えない。だからこそ、3歩目のキャリアを追求する必要がある。
3歩目のキャリアを選ぶにあたっては、十分な試行錯誤があっていい。著者の場合は、「教育」「住宅」「介護を中心とした医療」の3つを候補に挙げ、起業したり他社に資本参加したりとチャレンジをした結果、教育分野に踏み出すことにした。
3歩目を踏み出す前に数回体験しておきたいのが、小さな「モードチェンジ」だ。女性であれば、結婚・出産のようなライフイベントを通してモードチェンジする機会は多いものだ。一方、男性の場合、意識しないと難しい。仕事でモードチェンジができるに越したことはないが、まずはいつもの駅の1つ手前で降りて歩いてみるといった、ちょっとしたことでも構わない。40代までの間に、変化に耐えられる準備をしておこう。
どんな3歩目を踏み出せるかは「情報編集力」にかかっている。これは、正解が1つでない問題に対して思考力・判断力・表現力を駆使して仮説を立て、自分や周囲の人が納得できるような「納得解」を導き出す力だ。今まで蓄積してきた経験からくる、ものの見方や価値観、センスとも言えよう。
かつての日本で求められたのは「情報処理力」だった。学校教育で培われた基礎学力に基づき、早く正確に正解を導く力だ。だが、目指すべき唯一の正解がない21世紀型の成熟社会には、納得解を求められる場面が多い。こうした社会を生き抜き、キャリアを高めるには、自分の経験やセンスを生かす情報編集力を磨いたほうが賢明だ。
著者は以前、村上龍氏と「13歳のハローワークマップ」をつくったことがある。5つの領域を基準にして、世の中の仕事を星座のようにマッピングした地図だ。これを見ると、3歩目の「掛け合わせ」候補には無限の可能性があることに気づくはずだ。
例えば、ツアーコンダクターの仕事をした後、子どもの頃から好きだった犬に触れ合う仕事をしたくなり、動物看護師の資格を取得して犬のプロとして働いたとする。それを掛け合わせれば、3歩目には「犬も一緒に旅行ができる専門のツアコン」になれるかもしれない。キャリアの掛け合わせに「正解」はない。だからこそ、情報編集力が生きるのだ。
世の中には、信用される人と信用されない人がいる。信用される人は、金融機関からお金を借りることができ、多くの仕事を任せてもらい、友人があなたの夢ややりたいことを実現するために動いてくれる。本書では、人物に対する信用(クレジット)を、「他者から与えられた信任の総量」と定義している。クレジットが大きければ大きいほど、人生の自由度が高くなり、自分の夢やビジョンが実現しやすくなる。
クレジットは、「信頼」と「共感」の関数でもある。他者があなたに信任を与えるときには、理性で信頼することもあるが、感情で共感することも欠かせない。感情での共感が理性に先行する場面もあるほどだ。
では、どうすれば多くのクレジットを蓄積できるのだろうか。基礎編として、次の10カ条を満たすことが最低条件といえる。
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