幸福論

くじけない楽観主義
未読
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くじけない楽観主義
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出版社
日本能率協会マネジメントセンター

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出版日
2017年12月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「出会えて良かった」と心から感じさせられる一冊である。日々の迷いをなくし、明日をより良いものにしたいと願うのなら、何かしらその答えを本書のどこかで見つけられるだろう。

世界には三大幸福論と呼ばれるものがあり、アランの書いた幸福論はその1つとして現在まで語り継がれている。本名はエミール=オーギュスト・シャルティエ。1868年にフランス北部に生まれ、その職業人生を哲学教師として全うした。そして教師職の合間を縫い、プロポと呼ばれる便箋2枚ほどの語録を、8年間1日も欠かすことなく新聞社に送り続けたという。アランはそのときのペンネームである。全3098編ある語録は世界、人間、政治、宗教など、様々なテーマを扱っていた。そのうち、幸福に関する93編の語録を集めたのが本書である。

本書が最初に出版されてから100年近い月日が経つ。しかし、その中で語られる言葉は、今の時代でも生命感に満ちている。そして、普遍的な真実はいつの時代も変わらないことに気付かせてくれる。感情を管理することや人を思いやる心の大切さ、幸福は自らの手で掴み取るものだということ。

人を鼓舞するための本は書店に溢れるほど並んでいる。しかし、一世紀近くも語り継がれてきた書物は、言葉一つ一つの重厚感が全く違う。翻訳者が本書を「言葉の宝石」と表現したのは言い得て妙である。ぜひ何度も読み返していただきたい。その度にゆっくりと流れる豊かな時間は、大変味わい深いものだ。

ライター画像
二村英仁

著者

アラン(Alain)
フランスの哲学者。本名エミール=オーギュスト・シャルティエ。アランは筆名。1868年フランス・ノルマンディー地方に獣医の子として生まれる。1892年高校の哲学教師となり、職業人生を高校教師として全うする。1900年ごろから精力的に新聞にプロポ(随想)を寄稿。これが後に『幸福論』のもととなる。1914年、第一次世界大戦が起こり46歳で志願兵となる。足かけ4年従軍し、除隊後は再び教職に復帰。1933年65歳で職を退く。1945年、77歳で結婚。1951年パリ西郊ル・ヴェジネにて没す、83歳。

本書の要点

  • 要点
    1
    情念は感情に似ている。しかし、感情よりもっと心の深い部分で沸き起こる思いのようなものである。
  • 要点
    2
    人は情念に囚われると怒りや恐怖から我を忘れてしまう。そのときは運動をすれば、理性で身体の動きをコントロールしやすくなる。
  • 要点
    3
    自分以外の人や物事に言い訳を探す者に、決して幸せは訪れない。社会は諦めずに努力した者にその見返りを与える。
  • 要点
    4
    幸福になる方法の一つは、決して自分の不幸を口にしないことだ。雨の日こそ笑顔でいることが大切である。

要約

「情念」を理解する

情念をコントロールする「高邁の心」

アランの幸福論には「情念」という言葉が何度も登場する。アランの文章を読み解くには情念の理解が欠かせない。情念は感情に似ている。しかし、感情よりもっと心の深い部分で沸き起こる思いのようなものである。感情をその度合いで測るのであれば、ちょうど激情と感情の間に情念が位置するイメージだ。

アランに大きな影響を与えたフランスの大哲学者、デカルトの説明では、基本的な情念には「愛」「憎しみ」「欲望」「喜び」「悲しみ」「驚き」の6つがあり、これらが絡み合うと情念はより複雑になるとしている。

アランは情念の善し悪しについては語っていない。しかし、情念によって負の感情を抱き、自ら不幸を招き寄せてしまうことに対しては懸念していた。人間は情念からは逃れられない。ただしコントロールはできる。それを叶えるのは「高邁の心」だ。傲り高ぶることなく卑下することなく、自分を尊重する気高い心である。

身体と心について

苛立ち:運動することの意味
jacoblund/iStock/Thinkstock

誤って喉にものがつかえてしまったとする。むせかえり、筋肉は引きつり、パニックに陥る。このようなときには全身の力を抜くといい。息を無理に吸い込もうとするのではなく、喉につかえているものを外に押し出してやるのだ。

咳止めにもこれと同じような方法が使える。人は大抵風邪で咳が出ると、身体が疲れるまで咳き込む。しかし、何も考えずに全身の力を抜いて静かにしていれば、「苛立ち」も治まってくるだろう。情念の中でも「苛立ち」という言葉は最も激しいものに使われることがある。激しく咳き込む人と、怒り狂う人は似ている。恐れについても同じことが言えるだろう。

情念に囚われると、人は怒りや恐怖から我を忘れてしまう。そんなときこそ運動が役に立つ。運動によって、理性で身体の動きをコントロールしやすくなる。これが身体を動かすことの意義である。

不機嫌:あらゆる物事は喜びの前兆である

不機嫌には罠がある。無知を隠すために本は読まないと言い張る。強がって意地を張る。いつもつまらなそうな顔をしている。いざ嬉しいことが起きても素直に喜べない。不機嫌が不機嫌を呼ぶ。そして「これが俺の運命なのだ」と捨て台詞を吐く。これが不機嫌の罠だ。

本来なら、寒い北風が吹くときには、寒いのは良いことだと受け入れるようにしたい。喜びの達人スピノザは、「からだが温まったから満足しているのではなく、私が満足しているから温かいのだ」と言った。

喜びが欲しいなら、それを得る前から準備しておくのである。喜びを受け取る前に感謝し、希望を抱くからこそ喜びが生じる。したがって、起きる全ての物事を、喜びが訪れる兆しにしなければならない。

望むものを勝ち取るための生き方

宿命:まず出発する、それから行先を考える
anyaberkut/iStock/Thinkstock

何を始めるにしても、必要なのはまず出発することだ。どこへ行くかはそれから考えればいい。あれこれ考えてばかりいる人は、いつまでたっても決断できない。

生きる上で大切なのは、自分の決断に文句を言わず、決めたことを成し遂げることである。もしその選択が誰かに強制されたものであれば、宿命を感じずにはいられない。しかし、だからといってそれに縛られる必要はない。運命は、良くしようとすれば良い方向へと導いていけるからである。

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要約公開日 2018.07.02
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