アメリカで日本人の両親のもとに育った著者は、幼い頃は言語の習得に苦労していた。しかし、両親のおかげで「数学」という言語に左右されない武器に出会い、みるみる数学が得意になり10歳の頃には中学レベルの問題を解くようになった。アメリカ社会では短所を上回る長所があれば存在を認められるのだ。
パソコンいじりに夢中になった著者に、両親は家を担保にしてパソコンを購入する。同時期に、著者はある企業からのプログラミングの仕事を受注し、プログラマへと成長する。
16歳で大学へ入学後、パソコン売買のビジネスを親友と行っていた著者は2度の失敗を経験することになる。プリンター開発で在庫を余らせるという失敗、そして開発したビデオ会議システムの需要がないという失敗である。だが、こうした失敗を活かして、生み出した生体認証技術をビル・ゲイツにプレゼンし、世界標準にするという夢を実現させる。
会社を売却した著者は、自分をこれまで支えてくれた日本企業に恩返しをしたいと思い、現在は日本の起業家に投資をし、イノベーションやアントレプレナーシップの講義を日本で行っている。著者が挑戦してきた経験をもとに、世界標準の考え方ができる人材になるために不可欠なものを紹介していきたいという。
著者はあらゆる失敗をチャンスとして捉え続けている。失敗をしても経験は残るし、実践した結果を必ず次へ活かせると考えているからだ。どんな小さな仕事であっても、依頼されたら「もちろんできます」と答えて課題に取り組むうちに、チャンスが訪れる。チャンスが来たときには、思い切って行動することが大切だ。
著者が失敗を恐れないのは「失敗は当然」というアメリカの文化の影響が大きいだろう。アメリカでは、例え何度起業に失敗しても、その経験が認められ、リカバリーできるシステムが整っているのだ。一方、日本人は失敗を怖がる傾向にある。それは、自分の弱みを見せて社会から排除されるのを恐れているからではないだろうか。例えば日本の官僚は前例のないことに取り組むのを躊躇しがちである。リスクを冒して失敗するとキャリアに傷がついてしまうからだ。しかし、本来重要なのはあくまでミッションを成功させることであり、行動を起こさないと現状は変わらない。失敗を挑戦の証拠と捉え、失敗をもっとオープンに共有できる環境をつくることが必要である。
R&D(研究開発)の分野においても、日本には優秀な研究者が多く存在するにもかかわらず、新しい価値を生むイノベーションを生み出すことが得意ではない。日本では研究開発の7割を既存事業の強化に充てているのが現状だが、イノベーションを実現するには新しい発想で物事を考え、新規事業を生み出すための研究にもっと力を注ぐべきである。
自分の強みや個性をできるだけ早く見つけて、それを活かすことが大切だ。苦手を補うことにばかり力を注いでしまうと、世の中に貢献できる自分の「武器」が何なのかわからなくなってしまう。
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