本書における「スポーツを仕事にする」とは、社会人や学生が、転職や就職を通じてスポーツビジネスの職に就くことを意味する。もちろん、プロスポーツ選手がプレーすることで、その対価として収入を得ることも、スポーツを仕事にしているといえる。
しかし、スポーツに関わりながら収入を得る方法は、それだけではない。スポーツ関連事業を展開するスポーツ企業に入社して、そこで働く。これも、スポーツに関わりながら収入を得る選択肢の1つだ。それがまさに本書がスポットライトを当てたポイントである。
スポーツの魅力はやり直しのきかない、「一回性」にある。多くの人がその一回に心を揺さぶられ、魅了される。そうした中で、スポーツを仕事にする魅力とは、選手たちと「ともに戦うことができること」だ。チームスタッフや対戦相手のデータ分析を行うデータアナリスト、選手が試合で使う用品を提供するスポーツメーカー、選手やチーム動向をファンに届けるスポーツメディア。多くのスポーツビジネス分野のプレーヤーがいる。間接的ながら選手たちとともに戦い、勝つ喜びや負ける悔しさを分かち合う――。これがスポーツを仕事にする最大の魅力である。
スポーツビジネスを強化するポイントは、優秀な人材の獲得にある。なぜなら、ビジネスにおけるさまざまな課題を解決するのは、最終的には人だからだ。
肝となるのは、スポーツビジネスに就いている人たちが、さらに高い成果を求めて邁進していくこと。さらには、他業界で働いている優秀でスポーツビジネスへの情熱をもった人材が、スポーツ業界に入ってくるようにすることだ。実際に、他業界で活躍してきた人材が、それぞれの業界で培った経験や実力を活かしている例は多い。スポーツ業界でさらなる活躍をし、任された領域を着実に変えていくのだ。一人一人の活躍が積み重なることで、やがて大きなうねりとなり、日本のスポーツビジネスは確実に変わっていく。そして、これこそが日本のスポーツを強くするといえる。
日本はこれからの約3年間で、世界に類を見ない「ゴールデン・スポーツイヤーズ」の到来を迎える。2019年に「ラグビーワールドカップ日本大会」、2020年に「東京オリンピック・パラリンピック」、そして2021年に「ワールドマスターズゲームズ関西」。3年連続で、世界を代表するスポーツ大会が開かれるからだ。東京オリンピックは50年ぶり。ラグビーワールドカップはアジア初の開催。そして、ワールドマスターズゲームズが同一国でオリンピックと連続開催になるのは世界初だ。
これからの数年を見すえて、スポーツ関連の多くの企業で、新たなプロジェクトやサービスが次々と始動している。新たな人材の需要も高まる一方だ。国もスポーツ産業を成長産業の1つと位置づけている。現に、2012年に5・5兆円だった市場規模を、2025年までに15兆円に引き上げる方針を発表している。こうした面からも、働く人材の需要が大幅に増加することが見込まれる。
スポーツ業界を代表する業種の1つが、スポーツメーカーだ。競技に必要な用具を開発、製造、販売する。アシックス、ミズノ、ナイキなどに代表される大手総合メーカーから、卓球や水泳など、特定の競技に特化した専門メーカーまで、様々なタイプがある。最近は「アスレチック」と「レジャー」を組み合わせたアスレジャーブームが起きている。アスレジャーブームやランニングブームのようなトレンドは、スニーカーやウエアなどのスポーツ用品の需要を押し上げている。
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