B.LEAGUEが開幕するまで、日本には2つの男子トップリーグが存在していた。このことを問題視したFIBA(国際バスケットボール連盟)が何度もリーグ統合を促したものの、両リーグの折り合いはつかず。2014年にはとうとう、日本の国際試合の出場が無期限で禁じられるまでにいたった。
だがその後、Jリーグを立ち上げ、国内スポーツの代表格まで押し上げた川淵三郎氏が、わずか9カ月で2つのリーグを1つにまとめた。こうして生まれたのがB.LEAGUEだ。ただしそれは「統合」ではなく、まったく新しいプロリーグを創設するという「新リーグ構想」だった。2つのリーグをそのまま統合するのではなく、ゼロベースですべてを築きあげたのである。
これにともない、人事も新規採用という形をとった。旧2リーグのスタッフは、一部の例外を除いて採用していない。企業統合などでよくある「たすき掛け人事」をする暇はなかったし、どちらのリーグがより正しかったかなどの論争をしている余裕もなかった。そしてあとから振り返ると、これがB.LEAGUE発展のもっとも大事なファーストステップとなった。
超満員で開幕を迎えたB.LEAGUEの勢いは、2年目に入っても続いた。2年目の入場者数は250万人、前年の50%増だ。リーグの売り上げも前年の10倍となる50億円を達成した。認知度もプロ野球、Jリーグに次いで3位に躍り出ている。
なぜわずか1年間の準備期間でここまでの成果を上げられたのか。著者はすべて「人」のおかげだと考えている。ここでカギとなるのは「人材」ではなく「人財」という発想だ。前者が人のもつ可能性を加工して成長させるイメージだとすると、後者はあるがままの素材を活かすイメージである。
著者が人財を見分けるうえで重視したのは、次の5つのポイントだ。(1)身内(バスケットボール出身者)で固めないこと、(2)プロフェッショナルマインドをもち、はっきりと意見を言ってくれること、(3)徹底的に「べき論」で語れること、(4)片道切符(出向禁止)であること、そして(5)若手や女性を積極登用すること、である。
こうした方針には、著者の「ぶっとんだ人」(=常識にとらわれない人)がほしいという気持ちがあらわれている。いままでと同じことをしていたら、過去となにも変わらない。新しくできたプロリーグは、新しいことをしなければ価値がないのだ。
またスタッフ採用の際は、挫折経験にも注目した。挫折は成功するために必要な過程である。とくに立ち上げ期はうまくいかないことばかりだ。挫折をどう乗り越えてきたのかに着目することで、最後まで諦めないでやりきる力があるかどうかを判断できる。
日本の野球の事業規模は1800億円程度。だがかつて日本の野球と同程度だったアメリカのMLB(メジャー・リーグ・ベースボール)は、いまでは1兆円規模に成長している。またNBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)も飛躍的に成長しており、見習うべきところは多い。
ここ20年で日米スポーツ界の売上規模の差が大きくなった要因として、(1)リーグ主導のガバナンスの再構築、(2)デジタルシフト、(3)スタジアムの新築・改修、(4)若い人材の台頭、以上の4つが考えられる。
このうちもっとも重要なのが、
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