稼ぐがすべて

Bリーグこそ最強のビジネスモデルである
未読
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Bリーグこそ最強のビジネスモデルである
未読
稼ぐがすべて
出版社
出版日
2018年09月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

スポーツには夢がある。

だが夢だけでは往々にして行き詰まる。そこにはかならず現実感がともなわなければならない。そういう意味で「B.LEAGUE」(日本の男子プロバスケットボールのトップリーグ)の成功は、大きな夢を掲げつつも、地に足をつけて収益化に取り組んだ結果だといえる。本書のタイトルが『稼ぐがすべて』なのも、そのことを端的にあらわしている。

日本で野球、サッカーに続く第3の団体競技プロスポーツとして、B.LEAGUEは2016年9月に産声をあげた。開幕戦ではスタンドを観客が埋め尽くし、2年間で年間入場者数50%増の250万人、リーグ売上10倍の50億円を達成。その勢いは3年目に入ったいまも続いている。

安定して収益を出しているとは言いがたい日本のスポーツ業界において、なぜB.LEAGUEはここまでの成果をあげられたのか。そこにあるのはバスケットボールだけにとどまらないスポーツへの壮大なビジョン、そして徹底的に磨き上げられたビジネス感覚だった。

バスケットボールに興味がなくても、あるいはスポーツ自体に興味がなくても、本書を読めば「次にB.LEAGUEは何を仕掛けてくるのか?」と注目したくなってくる。スポーツという枠組みを超えた、そんな極上のエンタメの秘密。あなたも覗きこんでみてはいかがだろうか。

著者

葦原 一正 (あしはら かずまさ)
公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボール(B.LEAGUE)常務理事・事務局長
公益財団法人日本バスケットボール協会(JBA)理事
一般社団法人ジャパン・バスケットボールリーグ(B3)理事
B.MARKETING株式会社取締役
1977年東京都生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科卒業。2003年、外資系戦略コンサルティング会社「アーサー・D・リトル(ジャパン)」入社。
2007年、プロ野球チーム「オリックス・バファローズ(正式名称:オリックス野球クラブ)」に入社。主に事業戦略立案、新ブランド戦略立案などを担当。パ・リーグ6球団共同出資会社「パシフィックリーグマーケティング」にてセールス&マーケティングディレクター兼務。
2012年、新規参入した「横浜DeNAベイスターズ」に入社。主に事業戦略立案、プロモーション関連などを担当。
2014年、「フィールドマネジメント」入社。
2015年、「公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」入社。男子プロバスケ新リーグB.LEAGUE立ち上げに参画。リーグの経営戦略立案、ビジョンの策定から、マーケティング、営業、広報…各部門の総括リーダーとして事務局の陣頭指揮にあたる。本書が初の著作。

本書の要点

  • 要点
    1
    新しくできたプロリーグは、新しいことをしなければ価値がない。ゆえにB.LEAGUEでは「ぶっとんでいる」人財を積極的に採用した。
  • 要点
    2
    理念を実現するには確固たる事業戦略が必要だ。B.LEAGUEが重視したのは「デジタルマーケティング」の推進、そして「権益の統合」だった。
  • 要点
    3
    「若者」と「女性」にターゲットを絞り、「スマホファースト」を徹底したことが、B.LEAGUEの成功につながった。
  • 要点
    4
    「GIVE&TAKE」よりも「GIVE&GIVE&TAKE」だ。大きなものを得るためには、まずは相手にとことん尽くすべきである。

要約

人材採用論

過去の思考はすべてリセット
Rawpixe/gettyimages

B.LEAGUEが開幕するまで、日本には2つの男子トップリーグが存在していた。このことを問題視したFIBA(国際バスケットボール連盟)が何度もリーグ統合を促したものの、両リーグの折り合いはつかず。2014年にはとうとう、日本の国際試合の出場が無期限で禁じられるまでにいたった。

だがその後、Jリーグを立ち上げ、国内スポーツの代表格まで押し上げた川淵三郎氏が、わずか9カ月で2つのリーグを1つにまとめた。こうして生まれたのがB.LEAGUEだ。ただしそれは「統合」ではなく、まったく新しいプロリーグを創設するという「新リーグ構想」だった。2つのリーグをそのまま統合するのではなく、ゼロベースですべてを築きあげたのである。

これにともない、人事も新規採用という形をとった。旧2リーグのスタッフは、一部の例外を除いて採用していない。企業統合などでよくある「たすき掛け人事」をする暇はなかったし、どちらのリーグがより正しかったかなどの論争をしている余裕もなかった。そしてあとから振り返ると、これがB.LEAGUE発展のもっとも大事なファーストステップとなった。

ぶっとび人財を探せ!

超満員で開幕を迎えたB.LEAGUEの勢いは、2年目に入っても続いた。2年目の入場者数は250万人、前年の50%増だ。リーグの売り上げも前年の10倍となる50億円を達成した。認知度もプロ野球、Jリーグに次いで3位に躍り出ている。

なぜわずか1年間の準備期間でここまでの成果を上げられたのか。著者はすべて「人」のおかげだと考えている。ここでカギとなるのは「人材」ではなく「人財」という発想だ。前者が人のもつ可能性を加工して成長させるイメージだとすると、後者はあるがままの素材を活かすイメージである。

著者が人財を見分けるうえで重視したのは、次の5つのポイントだ。(1)身内(バスケットボール出身者)で固めないこと、(2)プロフェッショナルマインドをもち、はっきりと意見を言ってくれること、(3)徹底的に「べき論」で語れること、(4)片道切符(出向禁止)であること、そして(5)若手や女性を積極登用すること、である。

こうした方針には、著者の「ぶっとんだ人」(=常識にとらわれない人)がほしいという気持ちがあらわれている。いままでと同じことをしていたら、過去となにも変わらない。新しくできたプロリーグは、新しいことをしなければ価値がないのだ。

またスタッフ採用の際は、挫折経験にも注目した。挫折は成功するために必要な過程である。とくに立ち上げ期はうまくいかないことばかりだ。挫折をどう乗り越えてきたのかに着目することで、最後まで諦めないでやりきる力があるかどうかを判断できる。

【必読ポイント!】 事業戦略論

20年で大きく差が開いた日米スポーツ
Rulles/gettyimages

日本の野球の事業規模は1800億円程度。だがかつて日本の野球と同程度だったアメリカのMLB(メジャー・リーグ・ベースボール)は、いまでは1兆円規模に成長している。またNBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)も飛躍的に成長しており、見習うべきところは多い。

ここ20年で日米スポーツ界の売上規模の差が大きくなった要因として、(1)リーグ主導のガバナンスの再構築、(2)デジタルシフト、(3)スタジアムの新築・改修、(4)若い人材の台頭、以上の4つが考えられる。

このうちもっとも重要なのが、

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要約公開日 2018.11.15
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