迷わず書ける記者式文章術
迷わず書ける記者式文章術
プロが実践する4つのパターン
著者
迷わず書ける記者式文章術
出版社
慶應義塾大学出版会

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出版日
2018年02月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

著者は日本経済新聞社で15年間新聞記者として活躍してきたプロフェッショナルである。限られた時間内に、騒がしいオフィスなどの過酷な状況で、文章を書き続けてきた。そこから導き出された「記者式文章術」の魅力は、何といってもその応用範囲の広さにある。ビジネスや大学で使う固い文から、SNSやブログのやわらかい文章にまで活かせるというから驚きだ。

「記者式=難解」と思うかもしれないが、その推測はすぐにいい意味で裏切られる。その要諦は、書きたい内容に応じて構成のパターンを見極め、表現を選び取ること。実際、記者の仕事で大事なのは文章を書く作業ではなく、そこに至るまでの準備段階だという。もちろん、訓練と経験がものをいう面もある。だが、面白いテーマを発掘するための発想法、インタビューの方法などを体得し、実践できるようになれば、文章を書くことの大変さが軽減できるだろう。何より、こうした方法は執筆以外の場でも役立つものばかり。試さない手はない。

また、人間の思考の特性を活かした「読みやすい文章」の書き方や推敲の仕方についても、詳しく解説されている。思わず膝を打つこと請け合いだ。

本書は、的を射た、わかりやすい文章を書きたいと願う若手社員の教科書としてもうってつけである。「記者式文章術」でプロ顔負けの「書くスキル」を磨いてみてはいかがだろうか。

著者

松林 薫(まつばやし かおる)
1973年、広島市生まれ。京都大学経済学部、同修士課程を修了し、1999年に日本経済新聞社に入社。東京と大阪の経済部で、金融・証券、年金、少子化問題、エネルギー、財界などを担当。経済解説部で「経済教室」や「やさしい経済学」の編集も手がける。2014年に退社。11月に株式会社報道イノベーション研究所を設立。著書に『新聞の正しい読み方』(NTT出版)『「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方』(晶文社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    新聞の記事はあるルールに従って書かれているため、応用範囲が広く「実用文の手本」といえる。
  • 要点
    2
    速く書くための戦略は、書く内容を明確にして、構成を「逆三角形」「三部構成」「起承転結」「起承展転結」という4つのパターンから選び、とにかく文章を書き、あとは推敲するというものだ。
  • 要点
    3
    執筆の前に文章の設計図(スケルトン)を書くことが重要である。
  • 要点
    4
    文章を書き始める際は、文章の重要な要素を全て盛り込んだリード(前文)を200文字以内で書いてみるとよい。

要約

【必読ポイント!】 文章を書く前に準備すべきポイント

構想を練る

文章を書く前に必要な「準備段階」として、「構想を練る」「取材をする」「文章の設計図を描く」の3つがある。それぞれのポイントを説明していく。

構想を練る際の第一ステップは、文章の種類を決めることである。文章の種類は、説明文・論文・読み物の3種類に大きく分けられる。どの文章を書くかによって、盛り込む要素は違ってくる。

ルポルタージュやエッセイなどの読み物は、自分でテーマを決定することが多い。そのため、テーマ選びがその文章の良し悪しを大きく左右する。

理想的なテーマは「ニュース価値が高い」題材である。これは(1)読者の関心の高さ、(2)新奇性の高さ、(3)社会的影響の大きさという3つの要素にまとめられる。優先順位はケースバイケースだ。ネット上で多くのアクセス数を稼ぎたいならば(1)>(2)>(3)。社会性の高いテーマを扱う媒体に載せるならば(3)>(1)>(2)という形になる。

テーマ設定以上に難しいのが、読ませどころの設定である。短い文章では、面白い雑学が1つ盛り込まれていればいい。しかし長い文章では、個々の情報をどうつなげるかといった、見せ方の工夫が必要となる。

人が文章を読んで面白いと感じるのは、次の3つだ。新たな知識を得たとき、予想や常識を覆されたとき、そして別々の要素がつながったときである。これらの共通項は、読者にとって「NEWS(新しいこと)」を含んでいるという点だ。

3つの発想法
Peshkova/gettyimages

意外性のあるアイデアは、発想を変えるだけでも生み出せる。著者が記者時代に後輩にすすめていた3つの発想法を紹介しよう。

1つは、世間の常識をあえて否定し、その仮説が正しいかどうかを検証する「逆張りの発想」。2つ目は、ある事柄と、それとは関係のなさそうな事柄を結びつけて仮説を立て、それが成り立つかどうかを調べる「掛け算の発想」。そして3つ目は、「逆算の発想」である。最終的に導き出したい結論を決め、それが周辺分野に及ぼす影響について仮説を立て、検証する過程で、結論への意外なルートを発見していくというものだ。

いずれも、仮説を立てて検証することがポイントとなる。検証中に大半は成り立たないことがわかるが、このような「無駄」を繰り返すことで、成り立つ仮説を立てる確率が上がっていく。

取材をする(1)~メモのとり方~

記者は取材時に、記録媒体としてICレコーダーやデジタルカメラなどを使う。それとは別に、紙のメモ帳は必須アイテムである。例えば速報の原稿を書く場合には、メモ帳にキーワードや要点を書き留めていく。メモを取る行為は、取材中に同時並行で「どの部分を記事に盛り込むか」という情報の取捨選択をすることでもある。これにより、記者は速報記事を効率的に仕上げることができる。

取材をする(2)~裏をとる~
Mihajlo Maricic/gettyimages

正確な文章を書くためには、事実関係のチェックを念入りに行わなければならない。事実の裏付けをすることを「裏をとる」といい、これは記者の仕事の基本だといえる。日常会話であれば文脈から察するようなことであっても、取材中は、そうした曖昧な点を1つずつ潰していかなければならない。情報をあえて疑って調べていくと、自分が知らないことに気づくことがある。この「無知の自覚」を持てるかどうかが、記者とアマチュアの最大の違いといえる。

こうした心構えは、資料による裏付け調査でも欠かせない。裏付けに用いる資料としては、役所や公的機関の作成文書、一般紙の記事、学術書や学術論文など、複数人の検証を経て発表された、信頼性の高いものを優先する。逆に、ネットの情報はしっかりチェックされてないものも多いため、裏付けには使わない方がよい。

また、現場、現物、現人にあたることも重要となる。ここでの現人とは、対面取材を指す。現場の写真、そこで計測されたデータなどを見ることも大事だが、正確性や情報量の面で限界があることも意識しておきたい。

取材をする(3)~質問を投げかける~

「対面取材(インタビュー)」では、事前の情報収集がものをいう。限られた時間で、すでに知られている情報よりも、まだ知られていない情報を相手から引き出すことが望ましい。そのため、事前調査で質問を絞り込むことが欠かせない。

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要約公開日 2018.11.09
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