文章を書く前に必要な「準備段階」として、「構想を練る」「取材をする」「文章の設計図を描く」の3つがある。それぞれのポイントを説明していく。
構想を練る際の第一ステップは、文章の種類を決めることである。文章の種類は、説明文・論文・読み物の3種類に大きく分けられる。どの文章を書くかによって、盛り込む要素は違ってくる。
ルポルタージュやエッセイなどの読み物は、自分でテーマを決定することが多い。そのため、テーマ選びがその文章の良し悪しを大きく左右する。
理想的なテーマは「ニュース価値が高い」題材である。これは(1)読者の関心の高さ、(2)新奇性の高さ、(3)社会的影響の大きさという3つの要素にまとめられる。優先順位はケースバイケースだ。ネット上で多くのアクセス数を稼ぎたいならば(1)>(2)>(3)。社会性の高いテーマを扱う媒体に載せるならば(3)>(1)>(2)という形になる。
テーマ設定以上に難しいのが、読ませどころの設定である。短い文章では、面白い雑学が1つ盛り込まれていればいい。しかし長い文章では、個々の情報をどうつなげるかといった、見せ方の工夫が必要となる。
人が文章を読んで面白いと感じるのは、次の3つだ。新たな知識を得たとき、予想や常識を覆されたとき、そして別々の要素がつながったときである。これらの共通項は、読者にとって「NEWS(新しいこと)」を含んでいるという点だ。
意外性のあるアイデアは、発想を変えるだけでも生み出せる。著者が記者時代に後輩にすすめていた3つの発想法を紹介しよう。
1つは、世間の常識をあえて否定し、その仮説が正しいかどうかを検証する「逆張りの発想」。2つ目は、ある事柄と、それとは関係のなさそうな事柄を結びつけて仮説を立て、それが成り立つかどうかを調べる「掛け算の発想」。そして3つ目は、「逆算の発想」である。最終的に導き出したい結論を決め、それが周辺分野に及ぼす影響について仮説を立て、検証する過程で、結論への意外なルートを発見していくというものだ。
いずれも、仮説を立てて検証することがポイントとなる。検証中に大半は成り立たないことがわかるが、このような「無駄」を繰り返すことで、成り立つ仮説を立てる確率が上がっていく。
記者は取材時に、記録媒体としてICレコーダーやデジタルカメラなどを使う。それとは別に、紙のメモ帳は必須アイテムである。例えば速報の原稿を書く場合には、メモ帳にキーワードや要点を書き留めていく。メモを取る行為は、取材中に同時並行で「どの部分を記事に盛り込むか」という情報の取捨選択をすることでもある。これにより、記者は速報記事を効率的に仕上げることができる。
正確な文章を書くためには、事実関係のチェックを念入りに行わなければならない。事実の裏付けをすることを「裏をとる」といい、これは記者の仕事の基本だといえる。日常会話であれば文脈から察するようなことであっても、取材中は、そうした曖昧な点を1つずつ潰していかなければならない。情報をあえて疑って調べていくと、自分が知らないことに気づくことがある。この「無知の自覚」を持てるかどうかが、記者とアマチュアの最大の違いといえる。
こうした心構えは、資料による裏付け調査でも欠かせない。裏付けに用いる資料としては、役所や公的機関の作成文書、一般紙の記事、学術書や学術論文など、複数人の検証を経て発表された、信頼性の高いものを優先する。逆に、ネットの情報はしっかりチェックされてないものも多いため、裏付けには使わない方がよい。
また、現場、現物、現人にあたることも重要となる。ここでの現人とは、対面取材を指す。現場の写真、そこで計測されたデータなどを見ることも大事だが、正確性や情報量の面で限界があることも意識しておきたい。
「対面取材(インタビュー)」では、事前の情報収集がものをいう。限られた時間で、すでに知られている情報よりも、まだ知られていない情報を相手から引き出すことが望ましい。そのため、事前調査で質問を絞り込むことが欠かせない。
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