著者は客室乗務員として初めてファーストクラスを担当した際、先輩から「お客様の背中を見てすべてを察しなさい」と指導されたという。お客様を観察し、「どういう状態かな?」「何をお望みかな?」「私には何ができるかな?」と想像する。すると不思議なことに、お客様が必要としているものが見えてくるようになった。
たとえばあるとき、眠っているお客様の背中が動いた。すると著者は「お目覚めね。お化粧室かも?」と考える。実際にお客様が化粧室へ立たれると、「そろそろ喉がお渇きかも?」と考え、冷たいお水をご用意してお客様にお持ちするといった具合だ。お客様は「ありがとう、ちょうど喉が渇いていたんだよ」と言ってくれた。
またあるときには、眠っているお客様の脚が動いた。著者は「寒いかも?」と考え、お客様を起こさないようにそっと布団をかけた。2時間後に目覚めたお客様は、「すっかり寝ていたよ。ありがとう。布団かけておいてくれたんだね」とお礼を言ってくれたという。
人を観察することで、相手の感情や状況、要望が見えてくる。場面や状況に合わせ、自分目線ではなく相手目線で考えてみよう。そして考えているだけでなく、考えたことを行動に移してみる。心遣いや気配り、おもてなしは言葉や行動に移してはじめて相手に伝わり、相手の満足度を上げる。
著者はお客様が持っている欲求のことを、“「I LOVE&THANK YOU」されたい心理”と呼んでいる。この欲求を満たすことがお客様の基本満足につながる。
「I」はImportanceのIだ。重要視されたい、他者とは違う一人の大切なお客様と認められたい、独占したいという心理である。あるお客様を接客しているとき、別のお客様から話しかけられたとしよう。このときにもともと接客していたお客様を差し置いて新しいお客様に対応してしまうと、もともとのお客様はがっかりするはずだ。新しいお客様は別のスタッフに引き継ぐか、「この後伺いますので、恐れ入りますが少々お待ちいただけますでしょうか」と丁寧に言葉をかけるようにする。
次に「LOVE」だ。これは好感視されたい、歓迎されたい心理である。この欲求を満たすため、お客様やお取引先様を迎えるときにはしっかり歓迎しよう。ただ単に「いらっしゃいませ」「こんにちは」と伝えるだけでなく、「相手が歓迎されたと感じること」が重要である。作業をしていても手を止め、相手に顔と体を向けて笑顔でアイコンタクトを取り、明るい声ではっきりと挨拶しよう。挨拶の後にお辞儀をし、顔を上げたらさらにアイコンタクトを取ってニコッと笑顔を送るようにする。挨拶した後にお辞儀することで、心が伝わるとともに、行動にメリハリが出る。
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