いまの高校生は、どんな未来を生きるのか。まずは、親世代の人生と比べて決定的に違う点として、次の3つを心に留めておきたい。
1つは、2020年の半ばには、多くの親が体験した「標準的な人生モデル」は期待できないという点だ。終身雇用も新卒一括採用も、珍しいものになっている可能性が高い。
2つ目は、世界の50億人がスマホでつながり、さらには、このネットワークに人工知能(AI)がつながるという点である。日常生活のあちこちで、ネットとつながったロボットが色々な働きをしてくれるようになるだろう。このような未来の社会は、ネット内に建設されていく。「AIとロボットの発展により、仕事が消滅していく」という言葉をよく耳にする。しかし、より本質的には、世界の半分がネット内に建設され、人間がその世界で人生の半分を過ごすようになるから、という点を忘れてはいけない。
3つ目は、人生の長さ(ライフスパン)が決定的に異なるという点だ。人生を90年と仮定してライフデザインをすることが求められる。
この10年で、かなり複雑な判断が必要な仕事まで、「AI×ロボット技術」に取って代わられるだろう。人間に求められるのは、今まで以上に「人間ならではの仕事」をすることである。すると、人間として本当に必要な知恵と力が活きてくる。
本要約では、そのカギとなる情報編集力にフォーカスしながら、「雇われる力(エンプロイアビリティ)」の鍛え方、「一生が90年の時代のライフデザイン」のポイントを取り上げる。
今後、学校での地道な勉強によって身につく学力は、必要なくなるのだろうか。著者はそうした学力不要論に疑問を呈している。アスリートや芸術家など、すでに特定のキャリアを意識しているケースを除けば、後に選択肢の幅が広がるように、基礎学力を高めることは必須だからだ。
これからの時代に必要な「生きるチカラ」を、著者は次のように表している。まず、土台となるのが「基礎的人間力」である。体力や精神力、集中力、直感力など、家庭教育や学校での人間関係、部活、旅などを通じて育まれていく。
この上には左側に情報処理力、右側に情報編集力が積み重なる。情報処理力とは、早く正確に正解を導く力で、狭義の基礎学力を指す。主に数学や国語、理科などの教科学習で鍛えられる。いくら知識がネット上に蓄えられても、情報処理力がなければ上手にググれない。
これに対し情報編集力とは、正解がない、または正解が1つではない問題を解決する力のことだ。まるで本の編集業務のように、コンセプトが実現できて、編集者と著者の両者が納得できる解、「納得解」を紡ぎ出す力だといえる。
今後グローバルに通用する人材をめざすには、どんな条件が必要なのか。著者は次の5つのリテラシーを身につけることが大事だという。
(1)コミュニケーション:異なる考えをもつ他者と交流しながら自分を成長させること
(2)ロジカルシンキング:常識や前例を疑いながら柔らかく「複眼思考」すること
(3)シミュレーション:アタマのなかでモデルを描き、試行錯誤しながら類推すること
(4)ロールプレイ:他者の立場になり、その考えや思いを想像すること
(5)プレゼンテーション:相手とアイディアを共有するために表現すること
この5つの要素は、情報編集力の必要条件でもある。もちろん、情報処理力を鍛えることは相変わらず大事である。ただし、今後は情報編集力が必要とされる割合が高まっていき、現状の情報処理力偏重から、情報処理力:情報編集力が7:3くらいにまでシフトしていくだろう。
情報編集力の5つの要素は、遊びを通じて学べるものである。遊びの最中には、想定外の出来事が絶えず起こる。そのため、正解のない問題に対処する力が自然と鍛えられていく。受験もゲームのようにとらえることで、情報編集力を身につけるまたとない機会に変わる。
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