25年前に書かれた『ベストパートナーになるために』では、男女が次のように定義されていた。男性は、自立・実用性を重んじるといった特徴を持つ火星人。そして女性は、他人とのつながりや共有を重んじる金星人だという。しかし今では、男女の役割は以前ほどはっきりと区別できなくなった。そのため、よりよい男女の関係を築くには、従来の「火星人と金星人」という概念を超えた、新しい知恵が必要になる。
現代では、外で働く女性には火星人の傾向が、家事をする男性には金星人の傾向が見られるようになった。男女が男性的特性と女性的特性の両方を受け入れ、その時々の状況に応じて役割を柔軟に担えるようになったといえる。
このことは、私たちの脳や身体にも影響を及ぼしている。日中の行動が脳を変化させ、体内でさまざまなホルモンの分泌が促されることがわかっている。肉体労働や弁護士など、従来の男性的な仕事では、男女ともに男性ホルモンのテストステロンの分泌が刺激されやすい。一方、保育士や看護師などの女性的な仕事では、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が刺激されやすくなる。
大事なのは、男性ホルモンと女性ホルモンの健全なバランスをとることである。たとえば男性的な仕事をする女性は、家庭での女性らしさの表現が必要となる。このバランスがとれないと、退屈や不満、空虚さなどを感じやすくなる。このことは、カップルが恋愛感情を失う原因にもなってしまう。
逆に適切なバランスのとり方を知れば、自分らしく振る舞うことができ、パートナーが真に求めているものを理解しやすくなる。生物学的な男女の違いを受け入れながら、相手のニーズを理解することがカギとなる。
以前は、男が働き、女が子育てをするという役割(ロール)を果たす「ロールメイトの関係」が築かれていた。しかし、現在求められているのは、お互いが自身を偽ることなく、心の満足を味わえる関係である。つまり、魂(ソウル)でつながり合う「ソウルメイトの関係」だ。
男女はパートナーに対し、相手への深い愛情をさまざまな形で表現するよう求められている。そして関係が終わる理由も、物質面より精神面に起因する場合が増えてきた。たとえパートナーがしてくれること(家事への積極的な参加・安定した生活など)に不満はなくても、相手からの愛を感じられず、心が満たされないと失望してしまうのだ。現代のカップルは、このような問題への具体的な対処策がわからずにいる。
もちろんソウルメイトの関係はすぐに築けるものではない。それぞれのジェンダーの特性をよく理解して、失敗を重ね、自らを正し、相手を許し、共に成長しながら達成していくものなのだ。
現代では、女性は「人とは違う自らの才能の表現」という内なる男らしさを発揮できるようになった。同時に、男性は「愛と献身」という内なる女らしさを表現できるようになった。男らしさ、女らしさの最適なバランスは人によって異なる。男らしさの特性として挙げられるのは、自立・冷静・強さ・競争などだ。一方、女らしさの特性は、共生・情緒・繊細さ・協力などである。
これらの特性の違いは、実はホルモンによって生じるものだ。男らしさを表現するとテストステロンが、女らしさを表現するとエストロゲンが増加する。
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