2014年以降、日本の大企業で若手有志団体が続々誕生している。この背景には(1)製造業をはじめ、日本企業の失速でかつてない危機感が生まれたこと、(2)AI時代の到来で、イノベーションを起こせない大企業の寿命がさらに短くなると予想されること、(3)働き方改革が推進され、これまでの会社の枠組みにとらわれない働き方が模索されたことなどが挙げられる。
だがそれだけではない。注目するべきは「ONE JAPAN(ワンジャパン)」の共同発起人・代表である濱松誠の存在だ。若手有志団体の代表たちは、多かれ少なかれ濱松の影響を受けていると語っている。
2006年に新卒でパナソニックに入社した濱松は、大企業だと若手は上司に与えられた仕事をこなすだけで、「仕事がつまらない」とやりがいを見失いやすい点に問題意識をもっていた。若手が部署を超えて交流できる場として「One Panasonic(ワンパナソニック)」を立ち上げたのも、せめて若手同士がつながることで、毎日もっと楽しく仕事できる環境を実現できればとの想いがあったからだ。最初は小さな飲み会からスタートし、徐々に交流会や勉強会をおこなっていった。
すると濱松の周りで、多くの良い変化が生まれはじめた。さまざまな部署に知り合いができたことで仕事のスピードが速くなり、自分の興味を仕事につなげられるようになった。また社長や役員とも話す機会を得たことで、経営者の危機感や視座をよりリアルに感じられるようになった。結果として以前よりも会社がずっと楽しい場所に変化したのだ。
この活動をキッカケに、濱松は社外の若手サラリーマンと交流する機会を増やしていき、「会社を超えて、若手同士でつながる場をつくりたい。そこで会社や仕事を変えるようなことをしたい!」と思うようになる。そして2016年、大企業勤務の若手有志がつながるONE JAPANを立ち上げた。
発足して2年が経過したONE JAPANには、現在50社1200人のメンバーが所属している。この活動から企業間のコラボレーションが多数実現し、自治体との協業や行政への提言も進んでいる。
ONE JAPAN共同発起人の山本将裕は、2010年に新卒でNTT東日本に入社した。宮城県石巻営業支店に配属されると、震災被害への対策を推し進め、NTT東日本営業最優秀MVPを受賞。その後、宮城支店ビジネス営業部に異動すると、今度は仮設住宅にタブレット端末を配布して高齢者の見守りにICTを活用し、冷蔵庫やテレビに設置する「見守りセンサー」や、警備会社と連動した「緊急通報装置」の開発プロジェクトにも携わった。こうした活動は海外からも注目を浴びた。
こうした実績が評価され、山本は27歳という若さで本社の花形部門であるビジネス開発本部へと異動する。だがいざ着任してみると、若手である山本の意見はことごとく無視された。仕事のモチベーションが保てなくなった時期は、売店で業務をさぼるサボリーマンになったこともあった。「こんなつまらない会社、辞めてやる」と転職も考えたという。
やる気を失っていた山本に転機が訪れる。すでにパナソニック社内の若手有志団体One Panasonicを立ち上げ、ONE JAPANの立ち上げを構想していた濱松との出会いだ。山本はそのときの出会いについてこう語る。
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