できる上司は「教え方」がうまい

「自分で動ける」部下を育てる技術
未読
できる上司は「教え方」がうまい
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「自分で動ける」部下を育てる技術
未読
できる上司は「教え方」がうまい
出版社
日本実業出版社
出版日
2011年11月29日
評点
総合
3.0
明瞭性
3.0
革新性
2.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

あなたは部下に対して、うまい教え方ができているだろうか。なかなか部下の仕事が早くならないからといって、何でも自分でやってしまったりしていないだろうか。本書によれば、そうした考えは短期的な視点に基づくものであり、ビジネスパーソンである以上は長期的な視点を持って、部下を育てるべきだ、とある。そんなことはもちろん分かっているのだが、本当に部下が成長してくれるのか分からないし、我慢することになかなか踏み切れないという人も多いことだろう。そんな方にこそ、ぜひ読んでいただきたいのがこの一冊である。

これまでにも「伝え方」「教え方」「褒め方・叱り方」について多くの本が語り、既に方法論は出し尽くされた感がある。確かに本書の内容には目新しいところは少ない。しかしながら、そうした人材育成のノウハウが体系的に纏まっているという点でこの本は評価できる。そのうえ、コンサルタントやセミナー講師である著者の語り口は平易でとても読みやすい。

本書の最後に「今すぐ『教える』行為を行なってください」とあるのだが、こうしたノウハウ本についてはまさしく「実践してみること」が重要だ。本(もしくはこのハイライト)を読んだだけで満足してしまってはいけない。このあたりのアドバイスにも、著者の心配りや経験が活かされているのだろう。新しく部下を抱えることになった人や、部下への指導に悩む人など、幅広い組織人にぜひ読んでいただきたい。

ライター画像
苅田明史

著者

松尾 昭仁
ネクストサービス代表取締役。その他大勢から抜け出したい、士業・各種コンサルタント・起業家をトータルで支援する戦略プロデューサー兼コンサルタント。自身が企画し講師を務めるビジネスセミナーは毎回満員御礼。参加者は延べ五千名を超える。また、自身が経営する会社の社員やパートナーの卒業生の多くがその後、様々な分野で活躍し成功を収めるなど、指導者としての評価も高く「部下への教え方」には定評がある。著書に『「その他大勢」から一瞬で抜け出す技術』(日本実業出版社)、『コンサルタントになっていきなり年収650万円を稼ぐ法』(集英社)、『セミナー講師で稼ぎたいと思ったら読む本』(中経出版)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「自分がやったほうが早い」という先入観を捨て、会社の成長のための「教える時間」を確保すること、そして教えた相手が戦力になるまでの「我慢の時間」を持つことが大事である。
  • 要点
    2
    一度に多くのことを教えるのではなく、多くても3つまでにするべきだ。ポイントを絞り込んで教えることで、基本がしっかり身につき、その後の応用が利きやすくなるからである。
  • 要点
    3
    上司が教えたことを部下が実行に移す際、その場ですぐにフォローしてはいけない。教育期間のうちは一連の仕事を一通り黙って見ていることも、教える側の役目と言える。

要約

「教える」ことで、あなたも組織も成長できる

Creatas/Thinkstock
「自分でやるほうが早い」は大間違い

仕事を教えても、部下や後輩が自分のレベルに近づくまでは、当然それなりの時間がかかる。「ならば自分でやる方が早いし、せっかく教えても部下が結果を出すまで生産性がないのでは?」という考えから、教えることを敬遠する人が多いのも事実だ。

しかし、このような考え方は、あまりに「短期的」な視点に偏り過ぎている。ビジネスパーソンである以上、もう少し「中・長期的」な見方もすべきだ。「自分でやったほうが早い」と考える気持ちもわかるが、これを続けてしまうと、数年後はどうなってしまうのだろうか。自分でやったほうが早いと様々な仕事を抱え込んだ結果、本来なら自分がやらなくてもいい仕事にまで追われる日々を送っているかもしれない。目先のことを考えている人には、大きな仕事はできないのだ。

「自分がやったほうが早い」という先入観を捨て、会社の成長のための「教える時間」を確保すること、そして教えた相手が戦力になるまでの「我慢の時間」を持つことが大事だ。教えることにかかった時間は、あとで必ず回収できるのだから。

教えることは最高の「勉強法」

人は自分の頭でしっかり整理できていない情報を人に教えることはできない。言い換えれば、自分が完全に理解していることのみ、人に教えられる。また、教える機会が多ければ多いほど、教える側に知識が定着し、その分野における自信にもつながる。

そういった意味で、教えることには3つのメリットが存在すると言えよう。

①相手にわかりやすいよう、自分のノウハウを整理するため、「知識の棚卸作業」になる

②他人にどう教えるか、その伝え方を考えることが、自分自身の「学び」につながる

③初心者に教えることで、自分が忘れていた基本的な事項を復習できる

【必読ポイント!】 部下を「一人前」に育てる教え方の基本

iStock/Thinkstock
一度に教えるポイントは3つまで

小学生が算数を習うとき、足し算、引き算、そして掛け算、割り算と少しずつ学習していくように、大人を指導するときも一度に多くのことを伝えるのはやめたほうが良い。一度に教えるポイントは多くても3つまでで、相手の理解力や意欲によっては1つの大事なポイントを教えるのが精一杯ということもあるだろう。

例えば、新入社員に営業のやり方を教えるとしよう。「自分で訪問先を見つけ、営業して、売上をあげる」という全体の流れを細分化すると何十ものポイントに分けることができる。ここで、新規開拓の方法やアポイントのとり方から始まる一連の流れを説明して、「では、やってみなさい」とするのは完全なNGだ。

こういう場合、最初は「訪問先で担当者の名刺をもらう」ことをゴールにしてみればいかがだろうか。もちろん、ただ名刺を受け取るだけでなく、初対面の方への「あいさつの仕方」「名刺交換のマナー」「名刺から読み取れる情報(部署や役職など)を用いた会話の仕方」の3つを詳しく教えるのだ。教えられる側は「ただの名刺交換にも1つひとつの行動に深い意味がある」と感じることだろう。

このように細分化し、ポイントを絞り込んで教えることで、基本がしっかり身につき、その後の応用が利きやすくなる。

部下の反応が悪くてもあせらない

一生懸命教えているのに、部下の反応がいまいちよくない。こんなとき、「自分は教え下手なんだ」と悲観的になるのは早過ぎる。反応がないからといって、相手が理解していないとは限らないし、逆にリアクションはいいのに、実際には大事なことがわかっていなかった、ということもありえる。つまり、学習中のリアクションだけでは、相手の理解度を測ることはできないのだ。

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要約公開日 2013.10.31
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