新幹線の車両清掃を行っている、鉄道整備株式会社。通称「テッセイ」の名前で親しまれている同社は、数多くのツイッターでその仕事ぶりがさかんにつぶやかれ、そのフォロワーは合計すると数万人にも上る。
「清掃員の早技スゴすぎ。」「新幹線の清掃隊かっけー!整列からの一礼がビシッと決まってる!」「新幹線に乗るたびに思うけど、丁寧に車両内を清掃してテキパキと働く人たち。他の国ではここまでやらないよね。日本という国のいいイメージをつくっている人たちだな」
この会社は、日本という国のよさだとまで認識している人もいるのである。
テッセイは旧国鉄時代の昭和二七年に設立されたJR東日本のグループ会社。JR東日本が運航する東北・上越などの新幹線の車両清掃、東京駅・上野駅の新幹線構内の清掃などを主な業務とする会社である。そうした「縁の下の力持ち」的な会社が、ツイッターだけでなく、多くのメディアで取り上げられている。『日経ビジネス』では「最強のチーム」として紹介され、テレビ朝日の「スーパーJチャンネル」やテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」でも放送された。
掃除という行為、あるいは所作は、よく「無言の説法」と言われる。汚れたところを一心にきれいにしようとする姿は、周囲の人たちが思わず手をあわせたくなるほど尊く、気高いものだという意味である。私たちはそれをテッセイの皆さんの仕事ぶりに感じているのであり、そう感じるところが日本人のとても良いところであろう。
テッセイには「エンジェル・リポート」と呼ばれる仕組みがある。これは現場でコツコツと頑張っている人たちを、現場の上司や仲間が褒める仕組みである。以降ではその「エンジェル・リポート」の内容を紹介していく。
足掛け一七年、この仕事を行い、今、主任をしている。主任になると、後から入ってくる人たちの面倒をみる。そこには色々な人が入って来る。主婦しかしたことがなかったおばさんもいれば、まだ二〇代、三〇代の若い人も入ってくる。
二年前のことである。二二、二三歳の色白で細面、ヒゲも薄いような、今どきの男子が入ってきた。普通に動くのは動くが、とにかく挨拶ができなかった。専務は常に自分からでも挨拶されるような方だから、「おはよう」と声かけられても、本人は黙って、うなずいたのか、会釈したのかわからないような状態。専務が、「あの子、大丈夫かね・・・」と言われた。でも、彼が人が言ったことは一生懸命やる性格だということは見ていたので、「専務、すみません。あの子にはいいところがいっぱいあるんです。もうちょっと見てあげてもらえませんか?」
そんな彼に難問が持ち上がった。順番に『スマイル・テッセイ』という心構えが書かれたテキストを読み上げ、それをみんなで聴いて、働く気持ちや安全への心構えを確認し合っているが、その日は、初めて彼が読むことになっていた。
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