初めは仕事を覚えるのに精一杯だったのに対し、3年も経つと仕事を要領よくこなすコツを覚える。しかし、ここから高い志と信念を持てるかどうかが、真の実力を伸ばすことができるかを分かつことになる。ここで言う実力とは「スキル」「行動力」「人間力」の3つの力で構成されるものだ。
このうち「人間力」は、一朝一夕で見につくものではないので、優先すべきは「スキル」と「行動力」である。では早く実力をつけたい人は、そのどちらに注力するべきか。
スキルには、分析力・理解力・説明力・企画立案力などの能力の他、商品やサービス、業界などについての知識も含まれる。スキルは、経験がものをいい、試行錯誤の中で磨かれる。したがって、まず若手社員は「行動力は高いが、スキルは低い」というポジションを取るべきだ。
経験の浅い若手社員は、あれこれ言う前に実際にやってみることが肝要である。そうして、小さな成功を肌で感じ、一方で失敗を体験するうちに、成功や失敗の理由を自然に考えられるようになり、結果としてスキルが高められるのだ。
自分が希望していた部署に行けなかったことで、「いまの仕事ではモチベーションが上がらない」と嘆く人がいる。だが、そもそも自分の好きな仕事に就いている人はごくわずかだ。しかもサラリーマンであれば、いつどこに部署異動になるかわからない。つまり、いつまでも自分のやりたい仕事にこだわると、モチベーションが一向に上がらないのである。
モチベーションを維持・向上させる鍵は、仕事の外見ばかりに目を奪われないことだ。著者はどんな仕事にも「喜び」が存在していると説いている。小売店であれば売った商品がお客様の役に立つこと、飲食店であれば料理がお客様においしいと評価されることが喜びになる。
希望の仕事や部署に恵まれなくても、仕事のモチベーションの源泉は、仕事の外見ではなく、中身にあることに早く気づくべきである。
人間は社会的な存在であり、組織が成り立っているのも、さまざまな人間が支え合っているからこそと言える。そういう社会の中では、同期に話はできても、年上・目上の上司やお客様と話すのが苦手ということでは、成功は難しくなるだろう。
会社というピラミッド組織の中では、上司とコミュニケーションをとらなければ、仕事を進めることができない。「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)にしても基本は対上司。上司抜きの仕事などないのである。
つまり、自分がいい仕事をするためには、上司を協力者として仕事に組み込むことだ。自分から一歩前に出て、おつき合いをすることである。また、目の前の上司を動かせないのに、どうやってお客様を動かすことができるのか、という考え方もあるだろう。
自分の部署の上司とコミュニケーションをとることができれば、次は他部署の先輩とコミュニケーションをとることで、人間としての幅も広げることができる。
こうしたことが人間力を磨く上で、非常に役立つのである。
カリスマ経営者として知られる稲盛和夫さんと、著者のかつての上司だった島田精一さんの講演によると、この2名には1日の反省の時間を必ず設けるという習慣が共通しているそうだ。
稲盛さんは毎晩毎晩、鏡を見て「きょう1日、人の道を外れるようなことをしなかったか、正しいことをしたか」を自分に問いかける。
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