「2012年度 新入社員意識調査アンケート」によれば、「出世しなくても好きな仕事を楽しみたい」人の割合が63%となっている。つまり、最近の若者の5人に3人は、将来は社長になってやるという野心や夢を持たぬまま、社会人の第一歩を踏み出しているのだ。
吉越氏はこのレポートについて、開いた口が塞がらないと自身の驚きを表現するとともに、動物としてごく自然な本能が日本の若者から失われていることを憂いている。吉越氏によれば、出世が頭にあれば仕事に取り組むモチベーションも高まり、その結果として出世欲の強い社員が多い会社ほど生産性は高まり、成長のスピードも速まる、という。
本書は「草食系」などというヌルい若者の増殖に歯止めをかける方法が提示されている一冊だ。その方法とは、社長を目指すことである。
この本の序章は刺激的な表現が多く、読んでいて実におもしろい。これでもか、というほどに説教されているのが、逆に心地よいくらいだ。ここまで歯に衣着せぬ発言をする人は多くないだろう。例えば、
・会社の中では上に行けばいくほど仕事の自由度や裁量が広がり、労働の醍醐味が増す。自分は出世しなくていいのだと、組織の端のほうで上から与えられた仕事をただこなすだけの毎日に甘んじ、そこから抜け出そうともしない人は、本当に気の毒だ。私の身近にそういう人がいたら、「おい!目を覚ませ!」と横っ面の1つ2つ張って気合を入れてやりたいと思うくらいだ。
・社会とは理不尽なところなのだ。そんな社会で競争に参加しようというなら、どうやったら勝てるか考え、自分で努力するよりほかない。そういうこともせず、会社や社会になんとかしてもらおうというのは、いささか虫がよすぎるというものだ。
・最初から競争に参加しないという手もなくはない。いわゆる「置かれた場所で咲く」という考え方だ。そういう生き方を否定するつもりはまったくない。その代わり、その場所にある条件をすべて受け入れ、そのためにどんな惨めな結果であっても、それを受け入れる覚悟だけはしておかなければいけない。だが、果たして人はそんな「置かれた場所で咲く」ような向上心のない生き方に耐えられるものなのだろうか。ナンバーワンではなくオンリーワンといういい方も耳にするが、私に言わせれば、そんなものは負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
といったような文言が並んでいる。著者はあえてこうした厳しい表現を用いることで、若者を奮い立たせようとしているのだろう。
吉越氏によれば、「社長になるなんて夢物語だ」、「自分はマネージャータイプで、社長の器ではない」、「そもそも社長というポジションに魅力を感じない」、という人においても、会社で働いているビジネスパーソンである限り、目標は社長に置いて働いたほうが絶対にいい、という。
なぜそうするべきか。
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