本書はまずオーケストラおよび指揮者の特徴を解説した上で、オーケストラの指揮者のリーダーシップとビジネスリーダーの共通点に関して考察される構成となっている。特に指揮者として功績を上げた著者のオーケストラに対する洞察は、大変興味深く多方面に応用が利くことであろう。
オーケストラの応募というものは毎年行われるものではなく、欠員が発生した際などに、応募を行うものである。その競争率は苛烈であり、1つの席に数百人が応募することもあるという。だからこそ、オーケストラの演奏家は「極めつけのプロの演奏家」として認知されている。
そのようなプロの演奏家の集団であるオーケストラが、理想のチームたる理由は以下の5つである。
オーケストラは、担当する楽器の種類により、木管楽器・金管楽器・弦楽器・打楽器のセクションに分けられる。オーケストラの各セクションや各楽器には、役割分担があり、花形から縁の下の力持ちなど、様々な個性を持っている。
そしてオーケストラのメンバーは、担当以外の楽器を演奏することはない。専門の分野に関する高い音楽的な技術を持ち、自発的に高度なタスクを遂行している、ということがチームの基盤となる重要なポテンシャルとなるのだ。
オーケストラの特徴のひとつとして、首席奏者やパートリーダーはいるが、明確な上下関係がないということが挙げられる。もちろん、楽器による優劣も一切ない。花形の第1バイオリンではなく、ビオラが華々しいパートソロを奏でて主役になるということもある。
つまり、オーケストラのメンバーは全員が平等・対等である代わりに、それぞれ違った役割と責任があるのだ。
クラシック音楽は、主旋律を奏でる人と、伴奏を担う人が、場面に応じて交代することにも特徴がある。メンバーは主役として目立つ場面と、伴奏として脇役に回る場面が、阿吽の呼吸でできるように訓練を積んでいる。
指揮者はそのようなプロの演奏家集団を相手にしながらも、アクシデントによる非常事態には臨機応変な対応も求められるのだ。
オーケストラでは、指揮者も演奏者も万国共通の楽譜をもとに演奏する。楽譜とは、「良質な演奏」を遂行するための「絶対的唯一無二の総合計画書」だ。つまり、企業にとっての就業規則や事業計画書にあたるものである。
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