著者の経験によると、企業から派遣された企業研修のセミナーに出席している人に対して、「あなたは、なぜここにいるのか」と質問すると、「会社に言われたから」という答えが返ってくるそうだ。しかし、会社自体がそれを強いることは物理的にないため、実際は上司や人事部長であろう。つまり、そのような指示に従っているのは自分自身であり、仕事をするということは、究極的には自分の選択の積み重ねなのである。
一方で、会社を見渡せば周りには好きなことをして、人事部門も黙認し、自由にさせてもらっている人もいるのではないだろうか。現代では、企業で働く場合においても、自ら仕事を作り、オーナーシップを持って働くという「自律」が求められている。
環境変化が激しい時代において、言われたことをコツコツと行うだけでは、会社は守ってはくれない。いつまで経っても言われたことしかできない人間は、環境が変化すると生き残れないのだ。
著者によると、多くの日本企業は定年まで雇用することはもはや前提としておらず、むしろ5%以内の適正な退職率が望ましいとすら考えている。企業が提供できることは、自己成長と会社への貢献をコミットする従業員に、能力の発揮と成長の機会を提供することである。
一方で従業員として考えれば、組織ニーズに見合うエンプロイアビリティ(雇用されうる能力)を高めるため、自己投資を継続しなければならないということになる。
そのためにはキャリアビジョンを持つことが肝要だ。キャリアビジョンは、日々の仕事をそのビジョンを実現することに繋げるモチベーションになる。
ワーク・ライフ・バランスという言葉に縛られてはいけない。起業家には毎日18時間、1年に360日働くようなこともあるが、やりたいことをやっているため、メンタル面もいたって良好だ。つまりそれは、ワーク・ライフ・インテグレーションであり、プライベートの活動やネットワークすら、仕事に直接的に繋げているのだ。そして仕事は生活の糧としてではなく、自己実現や世の中への貢献の手段として、充実感を伴うものとなっている。
世の中で何を成し遂げたいのか、貢献したいのかという視点で考えている人がいる。その中で、小島希世子氏は、熊本で生まれ育ち、周囲はほとんど農家で農業政策を学びに上京した。小島はそこで目にした道に寝ている人たちに対し、「ホームレスなんだから近づかない方がいいよ」という周囲からの制止を振り切り、一人一人話しかけた。
彼らは、会社が倒産し奥さんと離婚した人、自己破産してすべての資財を失った人、犯罪を犯してクビになった人など、様々な問題を抱えていた。一方で、ホームレスは働きたいという想いを持っている人も多い。そこで小島氏は、彼らに農業を教え熊本で農家をしてもらうという事業を考えたのだ。そして、神奈川県藤沢市で農園を開き、そこで農業体験を積んでもらい熊本に送っている。
小島氏は、なぜそのような無謀とも言えることを成し遂げたのか。
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