日本に、猛烈な勢いで外国人観光客が押し寄せている。2011年の訪日外国人旅行者数が約622万人だったところ、6年後の2017年には約4.6倍の2869万人にまで増えている。伸び率だけで考えると世界記録並みである。
外国人の訪日旅行を指す「インバウンド」という言葉を耳にする機会も増えたはずだ。しかし世界基準で見ると、日本はまだトップ10に入らない。2016年のデータを見ると、日本は世界16位、アジア5位であった。それでも第2次安倍政権(2012年12月)の「訪日外国人旅行者数を2020年に2000万人に増やす」という目標は、軽くクリアしてしまった形だ。そして新たに、「2020年に4000万人」という目標が設定された。
日本のインバウンドの劇的な成長は、世界中から注目を浴びている。ニューヨークのような都市とは異なり、日本には、世界中の人が「絶対に行きたい!」と熱望する強力なコンテンツがあるわけではない。それにもかかわらずこれだけの成長を遂げたことは、非常に不思議なことに見えているのだろう。
著者は、インバンド急成長の理由を「旅行者の出身国ごとに観光の好み・傾向を調査し、それをその国へプロモーションしてきたこと」だと分析している。さらに、日本国内のエリアごとの課題を洗い出すとともに「どこの国・地域から誘客するか」を決め、具体的な作戦を立てることがインバウンドの基本だという。日本の躍進は、国を挙げたマーケティング戦略の成果なのである。
今の日本には、観光客が押し寄せるエリアとそうでないエリアが存在する。前者は東京、京都、富士山、北海道や長野のスキーリゾート、沖縄など。後者は、せっかく日本にやって来てくれても素通りされ、お金を落としてくれないエリアである。
インバウンドを盛り上げるには、観光客を地方へ向かわせることが重要だ。
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