「やる気」を育てる!

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「やる気」を育てる!
出版社
日本実業出版社

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出版日
2018年09月20日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

あなたの周囲にやる気が見られない人はいないだろうか。そういう人のやる気を高めたい場合、どのように関わっているだろうか。多くの場合、「がんばれ」と励ましたり、何かご褒美をあげたりしているだろう。しかし、こうした「エサ」では人のやる気は育たない。やる気を起こさせるのに必要なのは、教育心理学の知識と相手に対する熱意だ。

やる気やモチベーションに関しては、心理学の研究によって科学的に証明されたセオリーが多数存在する。番組「ホンマでっか!?TV」でお馴染みの心理学者、植木理恵氏が執筆した本書も、そのポイントを凝縮した一冊といえる。やる気を育てる原則に始まり、よく使われている「アメとムチ」が持つ人間への影響力、そしてやる気を育てるメソッドがわかりやすく解説されている。

内発的モチベーションに訴えかけるためのカギは、「期待と価値」の教育だ。中でも価値は「好奇心と貢献感」によってつくられるという。内発的モチベーションを高める具体的な方法は、普段の会話ですぐに取り入れられるものばかりだ。これらを身につければ相手のやる気を育てられ、自分自身の生き方を変えられる。

もしあなたがリーダーの立場、または子どもがいる立場なら、部下や子どもに対してアメとムチを使っていないか、よく考えてほしい。あなたの振る舞いが、相手を無気力人間に育てていないか、と。今こそ新しい「人の育て方」に目を向けるべきときだ。

ライター画像
山下あすみ

著者

植木 理恵(うえき りえ)
心理学者、臨床心理士。東京大学大学院教育心理科修了後、文部科学省特別研究員として心理学の実証的研究を行なう。日本教育心理学会において最難関の「城戸奨励賞」「優秀論文賞」を史上最年少で連続受賞。現在、都内総合病院でカウンセリング、慶應義塾大学で講師をつとめる。また、「ホンマでっか!?TV」にて心理評論家として人気を博す。
学術的研究にとどまらず、『本当にわかる心理学』(日本実業出版社)、『シロクマのことだけは考えるな!』(新潮社)など、一般向けに心理学を解説した著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    人のやる気を育てるには、教育心理学の知識と相手に対する熱意が必要だ。
  • 要点
    2
    やる気には短距離のやる気と長距離のやる気がある。前者にあたる外発的モチベーションは、アメとムチを用いた教育方法で伸ばせるが、人間には不向きである。長期間行うと無気力人間を生む可能性が高い。
  • 要点
    3
    目標設定は、長距離のやる気、内発的モチベーションを高めるための第一歩となる。遠隔目標と近接目標に加え、なりたい目標・ありたい目標を掲げられれば、人はやる気を持続できる。

要約

やる気を育てる原則

やる気を育てるには「知識」が必要

一般的に、やる気を育てるには、お金や賞状など、相手が喜ぶような報酬を与えることが効果的だと考えられている。しかし、物質的な報酬や表面上の賞賛は、人間の本質的な「伸びようとする力」をかえって邪魔してしまう。相手を望ましい方向へ導き、やる気を育てるために必要なのは何か。それは、「教育心理学」の基礎知識と相手に対する熱意だ。

人はよく他者の「体験談」をもとにやる気を高めようとする。しかしそれは、説得力はあっても、本人以外には通用しないことが多い。他者の成功談を聞く際、「なぜそれができたのか」という、科学的に証明された理論が明確にできてはじめて、その経験が際立つのだ。

人の心をドライブするのに必要な心理学の知識を得ておこう。それらは、部下、後輩、子どもだけでなく、自分自身のやる気を育てることにも応用できる。

やる気を育てるのに手遅れはない
yaruta/gettyimages

心理学では、「やる気」を育てるのに手遅れはないと考えられている。著者は重度のLD(学習障害)を抱えた子どもを対象に研究をしている。彼らのやる気を根気強くコントロールし、適切な支援をすれば、相当な学習成果につながることを実感しているという。人はいくつになっても「やる気が育つ」可能性があるのだ。

最近では「5歳までに英会話を始めなければ」などと、「間に合わない説」が大流行している。だが、これらは学者の行った研究の成果ではない。たしかに、早くから始めた方が練習期間は長くなり、その環境にも馴染みやすいため、上達しやすいことは容易に想像できる。しかし、「○歳までに始めないと間に合わない」ことが、脳や心の発育を根拠として実証されたわけではない。そうである以上、「可能性がある」と考えるべきだ。適切に「やる気」を高められれば、挑み続ける人間は生涯伸びていく。

「とにかくやる」を育む

外発的モチベーションの育て方

目先のことを片付ける意欲である「短距離のやる気」を育てたいときは、ご褒美で釣るような「アメとムチ」による育て方を用いるとよい。よいことをしたらアメを与え、悪いことをしたらムチを与えてやる気を高める。これを、心理学では「外発的モチベーション」と呼ぶ。

この方法をうまく使いこなすコツは、ペットをしつけるイメージを持つことだ。たとえば、イヌにお菓子を見せて「お手」のしぐさができたら、すぐにそのお菓子をあげる。だが、できなかったら没収する。それを繰り返せば、イヌは「お手」を覚えられる。これは「オペラント学習」と呼ばれ、人間にも適応できる。あなたはお菓子を出し入れすることに専念しなくてはならない。相手がどう感じているかなどは深く考えず、宣言したことをドライに実行する「調教師」をめざす。そうすれば、やる気に満ちた人間を育てることとは異なるが、あなたの希望通りの人間が完成するだろう。

正しいアメの与え方
ismagilov/gettyimages

しかしながらアメとムチは、人に適用する際、注意を払う必要がある。なぜならアメは一度与えたら、永久に渡し続けなければ、その効果が持続しないためだ。また、人はその実績を積み上げてきたことに対する「ベテラン料」を希望し始める。増額を続けないと、外発的モチベーションが上がらない。しかも、相手が飽きる前に、永久にアメを増やし続けることが求められる。

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要約公開日 2018.12.21
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