後悔を残さない経営

社長が60歳になったら考えるべきこと やるべきこと やってはいけないこと
未読
後悔を残さない経営
後悔を残さない経営
社長が60歳になったら考えるべきこと やるべきこと やってはいけないこと
著者
未読
後悔を残さない経営
著者
出版社
出版日
2018年09月08日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

60歳は人生のターニングポイントといわれる。今は元気で、アグレッシブに会社を率いていても、未来永劫経営を続けられるわけではない。また、昨今のような厳しい経営環境においては、人材不足や事業の将来性への不安が相まって、後継者不在問題は深刻化する一方だ。経営を誰に託すのか。後継者がいない場合はどう対応するのか。財産分与はどうするのか――。60歳というのは、こうしたことを真剣に検討し、自分と会社の未来図を具体化する時期だといえる。

著者は事業承継と成長戦略のプロフェッショナルとして27年間、5000以上の会社の終焉と再生を目にし、M&Aによる第三者への事業承継を成功に導いてきた。また、自身の経験も踏まえて、財産の棚卸から遺言書作成までの、より効果的なプロセスを明らかにしてきたという。事業承継・財産承継に関して、惜しみなく公開された豊富なノウハウには、そんな著者だからこその説得力がみなぎっている。

「いざとなれば何とかなる」。そう思っていても、「いざ」というときは突然やってくる。その前に、大きな変化の波に処するための戦略を練ってはいかがだろうか。会社の将来のために、従業員や家族のために、と奔走してきた経営者にとって、著者のアドバイスは強く響くだろう。

経営者人生の総仕上げの時期を豊かなものにし、大事な会社とそのビジョンを次世代に引き継いでいく。本書は、その準備期間を伴走してくれる心強いパートナーになってくれるはずだ。

ライター画像
松尾美里

著者

三宅 卓(みやけ すぐる)
株式会社日本M&Aセンター 代表取締役社長
1952年神戸市生まれ。日本オリベッティを経て、株式会社日本M&Aセンターの設立に参加。数百件のM&A成約に関わって陣頭指揮を執った経験から、「中小企業M&Aのノウハウ」を確立し、品質向上と効率化を実現。営業本部を牽引し大幅な業績アップを実現して上場に貢献。中堅・中小企業のM&A実務における草分け的存在であり、経験に基づくM&Aセミナーは毎回好評。中小企業M&Aの第一人者として、テレビ東京系「カンブリア宮殿」、「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、日経新聞「交遊抄」ほか、テレビ、新聞、雑誌など、メディアでも活躍中。

本書の要点

  • 要点
    1
    経営者は、会社が存続できた場合と、そうでなかった場合の大きな差を切実に認識し、遅くとも60歳のタイミングで事業承継の準備を進めるべきだ。
  • 要点
    2
    事業承継は会社を成長させるトリガーとなる。会社を成長させる戦略には、「オーガニック戦略」と「レバレッジ戦略」の2つがあるが、今後は後者を前向きに検討することが重要である。
  • 要点
    3
    財産承継においては、財産の棚卸をして、「財産シート」に書き出し、財産分与の方向性を遺言書で明らかにすることが求められる。

要約

経営者が60歳になったら考えなければならないこと

事業承継の準備を始める
jacoblund/gettyimages

60歳という人生のターニングポイントで考えるべき点として、著者は次の5つを挙げている。(1)自分の健康について注意を払うこと、(2)事業承継の準備を始めること、(3)さらなる会社の発展・成長を実現すること、(4)財産承継の準備を始めること、(5)リタイア後の人生を豊かなものにすること。

なかでも、(2)事業承継の準備は、遅くとも60歳までには始めたほうがいい。経営者にとって会社は子どものような存在であり、経営者は従業員とその家族の生活も背負っている。よって今後も自社を永続企業にしていくことは、経営者にとっての至上命題であるといえよう。

しかし現実には、後継者不在問題は深刻さを増す一方だ。「2017年 後継者問題に関する企業の実態調査」(帝国データバンク)によると、国内企業の約3分の2に後継者がいないという結果が出ている。

その背景には主に3つのケースがある。1つは、後継者となる子どもはいるが、親の会社の事業に興味がない、あるいは自分の仕事の基盤があり親の会社を継ぐ意思がないケース。2つ目は、子どもがいるが、経営者としての資質に欠けるため、会社を継がせられないケース。そして3つ目は、経営者候補となる子どもはいるが、時代遅れの業種のため、先行き不透明で継がせることができないというケースだ。

大廃業時代に突入する前に認識すべきこと

こうした背景から、著者が社長を務める日本M&Aセンターにも、中堅・中小企業の経営者からの相談が年々増えている。実際のところ、経営者が急きょ病気などで亡くなり、清算・廃業を余儀なくされる会社は少なくない。日本では年間3万社が廃業しており、いずれは年間5万社の「大廃業時代」に突入するといわれている。

廃業すれば、社員を解雇せざるを得ず、社員と家族の生活がままならなくなってしまう。しかも、工場や機械設備が廃棄処分になると、希望の金額で売却することは非常に難しい。全財産を処分しても借金が残り、自己破産……というシナリオも待っている。このような結末はあまりにも寂しく、残酷な人生の幕切れといえる。

しかし、会社を存続させることができれば、会社に関わるすべての人の未来が開けてくる。経営者は、会社が存続できた場合と、そうでなかった場合の大きな差を切実に認識し、遅くとも60歳のタイミングで事業承継の準備を進めるべきだと著者は強調する。

【必読ポイント!】 事業承継を会社の成長戦略に組み込む

事業承継は会社を成長させる重要なトリガー
Minerva Studio/gettyimages

60歳を迎えた経営者が直面する経営上の課題とは何か。大きな課題は次の3つである。(1)後継者への事業承継、(2)経営課題の解消、(3)会社のさらなる成長と発展の実現だ。こうした課題を乗り越えて、会社を永続・発展させていくことが経営者の責務となる。現に、事業承継をトリガーとし、会社を引き継ぐタイミングで大きく成長させようと考える経営者が増えている。

会社を成長させる戦略には、「オーガニック戦略」と「レバレッジ戦略」の2つがある。オーガニック戦略とは、社内の人材、商品、技術を有機的に結び付けて活かし、自助努力で会社を成長させていく方法だ。社長自らの経営理念やDNAをもとに会社を発展させていくため、非常に望ましい戦略に見える。だが、業界の先行き不安、経営環境の変化などから、オーガニック戦略だけを貫くのは至難の業といえる。

レバレッジ戦略の3つの方法

そこで出番となるのが、もう1つのレバレッジ戦略だ。これは、M&Aによって他社の資金、人材、技術、販売ルートを「てこ」として、会社を成長させる戦略である。具体的には次の3つの方法に大別できる。

1つは「会社を買う(買収戦略)」だ。M&Aによって他社を買収することで、シェアの拡大、他地域への進出、隣接業種での業務拡大などをめざすことが可能となる。たとえば、東北進出をめざす食品卸業の会社であれば、東北で経営を続けてきた老舗の食品問屋をM&Aで買収する。そうすることで、地元の文化や慣習を知り尽くしたベテランスタッフに作業を引き継ぐことができ、ビジネスの加速度的な拡大が期待できる。

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要約公開日 2019.01.09
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