メガネスーパーは従業員数約1600人の企業だが、小売業界の中では決して大企業といえるほどの規模ではない。そのような規模の企業が普通の経営をしていては、勝てるはずがない。事実、メガネスーパーは8年連続赤字となり、倒産寸前だった。
そこからビジネスモデルを大きく変え、復活を遂げた。具体的には、「アイケアカンパニー宣言」を掲げ、メガネの安売りをやめ、眼に関する専門知識を武器に、高付加価値のサービスを提供するようになったのだ。
具体的にはまず、「レンズ代0円」という業界慣習から脱却してレンズを有料化した。メガネ一式の平均価格は3万6千円と業界水準を大きく超えているが、それに見合ったメガネを提供することで、メインターゲットとする中高年のお客さまからの信頼を獲得した。また、無料が当たり前だった保証を有料化し、サービスを強化したことも大きなインパクトを与えた施策だといえよう。
メガネスーパー復活の本質は、ビジネスモデルの転換よりも「社員の意識改革」にある。社員の意識を変え、「指示待ち」社員を自分から動ける社員に変えたのだ。意識改革によって、赤字続きで自信を失った社員たちは、やる気あふれる社員へと変貌していった。
改革前の社員たちは、もはや自分のアタマで考えることができなくなっていた。「やってごらん」といっても黙るだけ、「やれ」といってもなお動けなかったほどだ。そこで著者はどうしたか。現場に足を向け、自分の考えを伝え、黒字化のための施策に自ら挑戦したのだった。やがて社員たちからもアイデアが出るようになっていった。
もちろんすべての施策が成功したわけではない。失敗もあった。だが「やってもダメなんだ」と思考停止するのではなく、「どうしたらうまくいくだろうか」と軌道修正してまたチャレンジするというサイクルを続けた。試行錯誤の甲斐あって結果が出始め、冷めていた店舗が熱を帯びていった。
メガネスーパーは黒字化に成功したが、著者が見通しているのはもっと先だ。それは、「売り上げも給料も、小売ナンバーワンに引き上げる」ことである。そしてそれを社員たちにも宣言している。
著者は売上と給料を小売ナンバーワンにするまで、現場に出張り続けるつもりだ。小売の社長は、現場を知らなくてはいけない。マーケットは日々変化しているのだから、常にその変化をキャッチし、的確な経営判断を下す必要があるわけだ。
このスタイルはもしかすると、スマートな経営とは言い難いものかもしれない。だが、0秒経営は現場からしか生まれないのである。
メガネスーパーのピークは2007年だった。当時は全国に540店舗を構え、売上は380億円に迫るほど。メガネトップやメガネの三城と並んで「メガネチェーン御三家」と呼ばれた。
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