現代の情報社会において「知的生活」的なものにまったく触れずに生きている人はほとんどいないだろう。本や漫画を読むこと、アニメや音楽、映画を楽しむこと、趣味のためにお金を使うこと、旅をすること、これらすべてが「知的生活」の一端である。
「知的生活」という言葉は、渡部昇一の『知的生活の方法』(講談社)によって日本に広まった。また梅棹忠夫の『知的生産の技術』(岩波書店)は、知的生産を「人間の知的活動が、なにかあたらしい情報の生産にむけられているような場合」と定義した。
それらを踏まえて本書では、知的生活を次のように定義する。「知的生活とは、新しい情報との出会いと刺激が単なる消費にとどまらず、新しい知的生産につながっている場合だ」。すなわち、ありふれた情報との触れあいを、あなた自身のオリジナルな体験へと昇華させるような生活を指す。
今や情報量そのものによりも「情報編集能力」にこそ価値がある。情報編集能力とは、適切な場面で適切な情報を取り出すことができる能力だ。その場に合わせた話題を思いつける力や仕事のなかで発揮される発想力、そして究極的には、あなた独自の情報のまとめ方ができるという能力である。
たとえばビル・ゲイツ氏は、毎年夏の読書リストを公開することで知られている。ここには教養書のみならず、統計的な世界の見方について示した書籍や長編小説、テクノロジーに関連する書籍、彼の慈善事業に関連する書籍も含まれている。選書に彼の個性がにじみでて、他の誰にも複製できない価値が生じているわけだ。
本書では「知的生活を設計するための5つのポイント」として、「自分の『積み上げ』を設計する」「パーソナルスペースを設計する」「発信の場所を設計する」「知的ファイナンスを設計する」「小さなライフワークを作る」が挙げられている。本項ではそのうち、「自分の『積み上げ』を設計する」について述べる。
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