「本を読むときは、初めから終わりへと読む。
ビジネスの経営はそれとは逆だ。
終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ。」
なんといっても経営の秘訣は、この「三行の経営論」に尽きる。現実的で確固とした目的を定めることは重要だ。なぜならそれ自体が、目的に達するためになすべきことを示してくれるからである。とはいえ長期計画のほうが重要だから、四半期や年度の目標をおろそかにしてよいというわけではない。四半期の目標が達成できなかったら、年度や中期計画が達成されることは絶対にない。「終わり」から始めて、それに到達するために、ありとあらゆることをしなければならない。
どの会社にも2つの組織がある。ひとつは、組織図に書き表すことができる公式上のもの。そしてもうひとつが、その会社に所属する男女における、日常的で血のかよった人間関係である。
どの企業にとっても、会社の機構を示した組織図は不可欠だ。通常は労働力が底部となり組織全体を支え、その上にさまざまな監督機能を持つレイヤーが積み重なり、ピラミッド構造が形成される。その構造にしたがって情報が上達され、命令が下達されるという仕組みだ。
このような組織図は合理的だが、一方であらゆる官僚主義的なファクターが潜んでいることも忘れてはならない。しかも重要な情報が途中のレイヤーでフィルタリングされ、現場で起きていることがトップの人間に届きにくくなる。すると解決するべき問題だけでなく、革新的なアイデアも見逃されるようになってしまう。
著者が最高経営責任者を務めたITTでは、チーム一丸となってゴールへ向かうため、緊密な人間関係の構築に注力した。そのために毎月ブリュッセルで1週間、ニューヨークでも1週間、本社と子会社のトップたちが会合し、互いによく知り合うように心がけた。するとまるで長年一緒に暮らしてきた家族のように相手のことがわかるようになり、それぞれの人物をどの程度まで信頼していいのかも判断できるようになった。
組織図を見ただけでは、ITTは他の会社とそれほど変わらなかった。だが実際には大きな違いがあった。その違いのほとんどは、顔を突き合わせておこなった会議によって生じたものなのだ。
数字は企業の健康状態を測る、体温計のような役目を果たす。数字が精密であればあるほど、また「揺るがすことができない事実」にもとづいていればいるほど、情報は明確に伝わる。
それぞれの年の予算には、あらゆる製品のコスト、マーケットシェア、繰越注文、在庫などに基づいた予想収入が含まれている。それらの数字にあらわれる期待と、現実の市場で起こっていることの差は、なんらかの行動を起こす必要があることを示すシグナルだ。数字を見るのが早ければ早いほど、それだけ早く必要な対策をとれる。
たしかに数字に注意を払うことは退屈だ。
3,400冊以上の要約が楽しめる