全世界の人口67億人のうち10億人が、食事や栄養を十分に摂ることのできない貧困状態にある。一方、日本を含む先進国では、他の国で貧困状態にある人たちとほぼ同じ数の人が食べ過ぎによる肥満や生活習慣病を抱えている。そこには「食の不均衡」が生じているのだ。2007年、この不均衡を解消し、先進国と開発途上国の人々を健康にすることを目指して発足したのがNPO法人「TABLE FOR TWO International(TFT)」である。著者はその事務局長を務めている。
TFTの取り組みは次のとおりだ。社員食堂を持つ企業や団体と提携し、低カロリーで栄養バランスのとれた特別メニューを提供してもらう。その際、「20円」を上乗せした価格を設定する。その20円は寄付金としてアフリカに送られ、現地の子どもたちの1食分の給食費となる。つまりTFTは、「食糧が余っている先進国」と「食糧が足りない開発途上国」の不均衡を解決すべく活動しているというわけだ。
TFTのコンセプトは、2006年に生み出された。著者はTFTが誕生して1年後、前職の先輩からTFTの話を効き、その構想に衝撃を受けたという。従来の社会貢献が「持てる人から持たざる人への、善意に基づいた施し」という考え方で行なわれるものがほとんどだったのに対し、TFTでは、寄付する側の肥満・メタボという問題も一緒に解決することができる。また20円という寄付額にも無理がなく、ランチの金額に含まれているので、新たに財布を開かなくて済むのもいい。
だがその展開は決して順調ではなかった。なぜならTFTの立ち上げメンバーはみな本業で忙しく、TFTの仕事に十分対応できなかったからである。そこで著者が前職を辞め、TFTの事務局長に就任することとなった。
当時のTFTには、事業を継続して展開できるしくみが存在していなかった。寄付金の20円を食事をする人が負担するのか、食事を提供する人が負担するのかさえ決まっていなかったという。
そこで著者は、しっかりとしたビジネスモデルをつくり、事業計画に落とし込むことからはじめた。著者の前職は戦略コンサルタントだったので、コンサルタントらしく「5P」というフレームワークで整理した。
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