[完全版]「20円」で世界をつなぐ仕事

想いと頭脳で稼ぐ新しい働き方
未読
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出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2018年10月03日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書は、社会起業家の体験談とノウハウが詰まった一冊である。仕事とは、モノやサービスをつくったり売ったりして利益を上げることだけではない。地球温暖化、貧困や格差など、社会が抱えている問題の解決に取り組む――それは社会起業家という「仕事」である。本書においてその仕事は、「想い」を実現して「利益」も上げる「新しい仕事」だと表現される。

著者はNPO法人「TABLE FOR TWO International(TFT)」の事務局長として、先進国の肥満と開発途上国の飢餓という2つの社会問題の解決に向けて活動している。TFTは社員食堂を持つ企業と提携し、通常より低カロリーで栄養バランスのとれたメニューを提供してもらう。そのメニューの価格には「20円」が上乗せされている。そしてその「20円」が寄付金としてTFTを通じてアフリカに送られ、現地の子どもたちの給食費にあてられるという仕組みだ。

TFTの活動は最初から順風満帆だったわけではない。人手不足や、営業先で「怪しい」と思われてしまうなど、さまざまな壁に直面してきた。そのたびに著者は、戦略コンサルタントとしての経験やビジネススキルを生かして課題を解決してきたという。

今の仕事にやりがいを見いだせずにいる方や、今の仕事に疑問を持っている方はぜひ、本書を手に取ってほしい。「想い」を実現して「利益」も上げる、そんな天職に出会えるかもしれない。

ライター画像
木下隆志

著者

小暮 真久(こぐれ まさひさ)
1972年生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、オーストラリアのスインバン工科大学大学院で人工心臓の研究を行う。1999年、修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社入社(ヘルスケア、メディア、小売流通、製造業など幅広い業界の組織改革・オペレーション改善・営業戦略などのプロジェクトに従事)。同社米国ニュージャージー支社勤務を経て、2005年、松竹株式会社入社(事業開発を担当)。
経済学者ジェフリー・サックスとの出会いに強い感銘を受け、その後、先進国の肥満と開発途上国の飢餓という2つの問題の同時解決を目指す日本発の社会貢献事業「TABLE FOR TWO(TFT)」プロジェクトに参画。2007年NPO法人「TABLE FOR TWO International」を創設し、代表理事に就任。社会起業家として日本、アフリカ、米国、ヨーロッパで活動中。2014年から3年間、TFTの活動をよりグローバルに広げるため(そして子育てのため)イタリアに移住するなど、仕事や人生の局面に沿った柔軟な働き方を実現している。
2011年、シュワブ財団・世界経済フォーラム「アジアを代表する社会起業家」(アジアで5人)選出。同年、日本イノベーター大賞優秀賞受賞。2012年、世界有数の経済誌Forbesが選ぶ「アジアを代表する慈善活動家ヒーロー48人」選出。2017年には、「AMF アジア・マーケティング・エクセレンス賞」にて「マーケティング3.0アワード」大賞を、日本で初めて受賞。
著書に、『社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた』『人生100年時代の新しい働き方』(ともにダイヤモンド社)、『20代からはじめる社会貢献』(PHP新書)がある。デビュー作である本書『「20円」で世界をつなぐ仕事』は、2010年度のビジネス書大賞新人賞を獲得。

本書の要点

  • 要点
    1
    TFTは、社員食堂を持つ企業や団体と提携して低カロリーで栄養バランスのとれた特別メニューを「20円」を上乗せして提供してもらい、その20円を寄付するというコンセプトで活動している。寄付金は、アフリカの子どもたちの給食費にあてられる。これは、先進国と開発途上国の食の不均衡を解消する取り組みだ。
  • 要点
    2
    社会事業だからといって競争と無縁だというわけではない。社会事業の世界であっても、生き残るためには戦略が必要である。
  • 要点
    3
    TFTは組織のコンパクトさを生かし、柔軟な意思決定やフットワークの軽さを強みとしている。またSNSの活用にも力を入れている。

要約

テーブル・フォー・ツーとは

「食の不均衡」を解決する
Dreamer Company/gettyimages

全世界の人口67億人のうち10億人が、食事や栄養を十分に摂ることのできない貧困状態にある。一方、日本を含む先進国では、他の国で貧困状態にある人たちとほぼ同じ数の人が食べ過ぎによる肥満や生活習慣病を抱えている。そこには「食の不均衡」が生じているのだ。2007年、この不均衡を解消し、先進国と開発途上国の人々を健康にすることを目指して発足したのがNPO法人「TABLE FOR TWO International(TFT)」である。著者はその事務局長を務めている。

TFTの取り組みは次のとおりだ。社員食堂を持つ企業や団体と提携し、低カロリーで栄養バランスのとれた特別メニューを提供してもらう。その際、「20円」を上乗せした価格を設定する。その20円は寄付金としてアフリカに送られ、現地の子どもたちの1食分の給食費となる。つまりTFTは、「食糧が余っている先進国」と「食糧が足りない開発途上国」の不均衡を解決すべく活動しているというわけだ。

社会起業に経営戦略を活用する

コンセプトから「しくみ」を生み出す

TFTのコンセプトは、2006年に生み出された。著者はTFTが誕生して1年後、前職の先輩からTFTの話を効き、その構想に衝撃を受けたという。従来の社会貢献が「持てる人から持たざる人への、善意に基づいた施し」という考え方で行なわれるものがほとんどだったのに対し、TFTでは、寄付する側の肥満・メタボという問題も一緒に解決することができる。また20円という寄付額にも無理がなく、ランチの金額に含まれているので、新たに財布を開かなくて済むのもいい。

だがその展開は決して順調ではなかった。なぜならTFTの立ち上げメンバーはみな本業で忙しく、TFTの仕事に十分対応できなかったからである。そこで著者が前職を辞め、TFTの事務局長に就任することとなった。

当時のTFTには、事業を継続して展開できるしくみが存在していなかった。寄付金の20円を食事をする人が負担するのか、食事を提供する人が負担するのかさえ決まっていなかったという。

そこで著者は、しっかりとしたビジネスモデルをつくり、事業計画に落とし込むことからはじめた。著者の前職は戦略コンサルタントだったので、コンサルタントらしく「5P」というフレームワークで整理した。

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要約公開日 2019.01.22
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