フェイクニュース

新しい戦略的戦争兵器
未読
フェイクニュース
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新しい戦略的戦争兵器
未読
フェイクニュース
出版社
出版日
2018年11月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

フェイクニュースと聞けば、ほとんどの人はねつ造されたニュースや情報を思い浮かべるだろう。そしてそういうものがSNSを通して拡散し、社会に悪影響を及ぼしていると想像するはずだ。

しかし著者によると、フェイクニュースのなかには世論操作のために、組織的に仕掛けられているものも多いという。実際にフェイクニュースを使ったネット世論操作は、世界48カ国でおこなわれている――思わず「本当?」と疑ってしまうような数字ではないだろうか。

著者はあらゆる面からフェイクニュース及びネット世論操作を考察し、豊富な最新事例を取り上げつつ、警鐘を鳴らしている。なかでもフェイクニュースを理解するうえで欠かせない概念として、「ハイブリッド戦」が取り上げられていることに注目したい。本書で紹介されるさまざまな事例を読んでいると、世のなかの変化は想像を超える速さで進んでおり、「民主主義はすでに危機的状況にあるのかもしれない」と思わされること必至だ。

著者は「これからの社会がどのようなものになるかを予想することもできますが、考えなければならないのはどのような社会にすべきかなのだと思います」と述べる。要約では本書の中核に当たる第1章および第2章を中心に取り上げたが、ぜひご自身で本書を手に取って内容を吟味し、将来暮らしたい世界を考える際の助けとしてほしい。

著者

一田 和樹(いちだ かずき)
東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。09年1月より小説の執筆を始める。10年、長編サイバーセキュリティミステリ「檻の中の少女」で島田荘司選第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。サイバーミステリを中心に執筆。小説以外の著作には『犯罪「事前」捜査 知られざる米国警察当局の技術』(江添佳代子氏との共著、角川新書)、『サイバーセキュリティ読本【完全版】ネットで破滅しないためのサバイバルガイド』(星海社新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ハイブリッド戦とは兵器を用いるだけの戦争ではなく、経済、文化、宗教、サイバー攻撃など、あらゆる手段を駆使した新しい形の戦争を指す。
  • 要点
    2
    ハイブリッド戦において、ネット世論操作の重要度は増している。コストとリスクが少ないうえに、リターンが大きいからだ。
  • 要点
    3
    「フィルタバブル」「政治フィルタ」「機能的識字能力フィルタ」の3つが影響して、フェイクニュースを読み手に届きやすくさせている。
  • 要点
    4
    ウソは事実よりも広く速く拡散する。ウソの拡散力は100倍、拡散速度は20倍もある。

要約

フェイクニュースはハイブリッド戦兵器

ハイブリッド戦とは
vchal/gettyimages

ネット世論操作は、近年各国が対応を進めている「ハイブリッド戦」という新しい戦争のツールとして、重要な役割を担っているという。ハイブリッド戦とは兵器を用いるだけではなく、経済、文化、宗教、サイバー攻撃など、あらゆる手段を駆使(=ハイブリッド)した新しい形の戦争を指す。フェイクニュースもネット世論操作の手段のひとつだ。

ハイブリッド戦において、SNSを用いた世論操作は半ば必須と化している。というのもSNSは匿名性が高いうえに、あらゆる局面で利用できる。しかも成功した際には、大きな打撃を与えることが可能だ。コストとリスクが少ないうえに、リターンが大きいのである。

実際に世論操作を目的として、大規模なボット(システムによって自動的に運用されるSNSアカウント)、トロール(人手によって運用されるSNSアカウント)、サイボーグ(システムに支援された手動運用)がフェイクニュースを拡散することもある。

ネット世論操作が狙う4つの脆弱性

元NATO報道官で軍事アナリストのベン・ニモは、「民主主義は議論によって成り立っており、議論が歪められたり、誤った情報に基づいたりすれば結論も歪んだものとなる。ネット世論操作の一番の問題はきわめて過激で感情的になる点だ。人々は恐怖、怒り、差別を拡散する。ネット世論操作のゴールは人々を怒りや不安に陥れること。そうなった人々はふだんと異なる行動パターンをとる。より攻撃的で過激になり、民主主義に対する脅威となる」と警告している。

またフランス政府機関のレポート『情報操作 デモクラシーへの挑戦』によると、ネット世論を操作している存在は、どれも4つの脆弱性を狙っているという。その4つとは「少数民族の存在」「内部分裂」「他国との緊張関係」「脆弱なメディアのエコシステム」だ。著者は「日本もこれら全てにあてはまり、なおかつ今後悪化する傾向にある」と述べている。

【必読ポイント!】 フェイクニュースの定義と対策

フェイクニュースの定義
Wachiraphorn/gettyimages

2018年2月にニューヨークのデータ&ソサエティ研究所が公開したレポートによると、フェイクニュースの定義は大きく2つに分かれる。ひとつは大手メディアへの批判の際に用いる言葉、もうひとつは問題のある内容を含むニュースだ。後者についてはさらに3つの定義に分類される。

第1の定義は、どのような意図をもって書いたかによって判断するというものだ。しかし明確にユーモアだと断っていない限り、過激な主張とネタの区別をつけることはできない。

第2の定義は、フェイクニュースのタイプで区分するものである。

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要約公開日 2019.01.23
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