ネット世論操作は、近年各国が対応を進めている「ハイブリッド戦」という新しい戦争のツールとして、重要な役割を担っているという。ハイブリッド戦とは兵器を用いるだけではなく、経済、文化、宗教、サイバー攻撃など、あらゆる手段を駆使(=ハイブリッド)した新しい形の戦争を指す。フェイクニュースもネット世論操作の手段のひとつだ。
ハイブリッド戦において、SNSを用いた世論操作は半ば必須と化している。というのもSNSは匿名性が高いうえに、あらゆる局面で利用できる。しかも成功した際には、大きな打撃を与えることが可能だ。コストとリスクが少ないうえに、リターンが大きいのである。
実際に世論操作を目的として、大規模なボット(システムによって自動的に運用されるSNSアカウント)、トロール(人手によって運用されるSNSアカウント)、サイボーグ(システムに支援された手動運用)がフェイクニュースを拡散することもある。
元NATO報道官で軍事アナリストのベン・ニモは、「民主主義は議論によって成り立っており、議論が歪められたり、誤った情報に基づいたりすれば結論も歪んだものとなる。ネット世論操作の一番の問題はきわめて過激で感情的になる点だ。人々は恐怖、怒り、差別を拡散する。ネット世論操作のゴールは人々を怒りや不安に陥れること。そうなった人々はふだんと異なる行動パターンをとる。より攻撃的で過激になり、民主主義に対する脅威となる」と警告している。
またフランス政府機関のレポート『情報操作 デモクラシーへの挑戦』によると、ネット世論を操作している存在は、どれも4つの脆弱性を狙っているという。その4つとは「少数民族の存在」「内部分裂」「他国との緊張関係」「脆弱なメディアのエコシステム」だ。著者は「日本もこれら全てにあてはまり、なおかつ今後悪化する傾向にある」と述べている。
2018年2月にニューヨークのデータ&ソサエティ研究所が公開したレポートによると、フェイクニュースの定義は大きく2つに分かれる。ひとつは大手メディアへの批判の際に用いる言葉、もうひとつは問題のある内容を含むニュースだ。後者についてはさらに3つの定義に分類される。
第1の定義は、どのような意図をもって書いたかによって判断するというものだ。しかし明確にユーモアだと断っていない限り、過激な主張とネタの区別をつけることはできない。
第2の定義は、フェイクニュースのタイプで区分するものである。
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