「シナリオは映画や映像の設計図だ」という言葉がある。映画やTVドラマ、アニメーションは、シナリオにもとづいて制作されている。設計図たるシナリオを書くのが脚本家、シナリオライターの役目だ。
シナリオに書き込まれる要素は、登場人物のセリフと動作、場面ごとの情景、それぞれの場面で使われる道具類などだ。俳優や監督をはじめとしたスタッフたちは、シナリオ通りの作品をつくるべく最善を尽くす。シナリオがすべてのスタッフのよりどころになっているというわけだ。
シナリオは作品のテーマや内容をあらわす “作品そのものについて書かれた設計図”であると同時に、キャストやスタッフなど“制作に携わる人々を動かすための設計図”でもある。シナリオはいわば映像制作における頭脳であり、心臓部なのである。
シナリオを書くには、映像というものを理解しておかなければならない。
ドラマのストーリーは、主人公がある時代のある場所で行動するところから始まる。やがて脇役と出会い、彼らと交流する。そしてまたある場所で別の脇役と交流して仲間になったり、敵対したりするような展開を経る。このようにストーリーが進行し、やがてクライマックスを迎えて終わる――これがドラマの進行だ。
今挙げた要素がまさに“映像を作るために必要なもの”である。つまりシナリオには、「いつ」「どこで」「誰が」「誰と」「何を話して」「どう動くか」という要素が書かれていなければならない。逆に言うとこれ以外の要素を書いてはならない。
シナリオに書かない要素として代表的なのが、登場人物の心情だ。映像は、目に見えるものと耳に聞こえるものとで成り立つ。時間と場所、人物の会話と行動は視覚と聴覚によって表せるだろう。だが、人物の考えや心の動きはそのまま映像で表すことはできない。だから登場人物の心情は、そのキャラクターの動きや会話、言葉を通じて表現する必要がある。
シナリオの執筆は、テーマを設定することから始まる。すなわち“動機”だ。シナリオを通じて何を描きたいのか、何を訴えたいのか、どのような面白さを観客に伝えたいのか、そして、どんな映像作品を作りたいのか。「愛について書きたい」という人もいれば、「宇宙の歴史の謎」を追究したい人もいるだろう。もっと小さく、「クラスメートのAくんが主役のストーリーを作りたい」「自分の体験を物語にしたい」といったこともテーマのひとつだ。
「愛について」という大きなテーマなら、小さく、細かく考えていこう。
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