複数のテクノロジーが交わり、さらに生活、ビジネス、都市、社会とも交わり、世界をつないでいく。2019年には、そうした「クロス」する動きが活発化する。
日本は、人口急減と超高齢化を他国より早く経験する「課題先進国」である。都市を例にとろう。首都・東京は、国際的な都市間競争で生き残るため、絶えず都市更新を続けるだろう。その一方で財政難の地方都市は、公民連携などにより再生の活路を模索することとなる。
こうした動きを促すのがテクノロジーだ。ICTはさまざまな分野のテクノロジーとクロスし、テクノロジー同士のつながりを加速させ、都市や街を大きく変えていく。
都市のデータを収集するためには、あらゆる場所にセンサーを埋め込むことが必要となる。これをめざすのが、「トリリオン(一兆)センサー社会」と呼ばれる構想だ。センサーから得られたビッグデータの活用によって都市をモニタリングし、効率的な管理、効果的なアップデートをめざすというものだ。
この構想に役立つ技術のひとつとして、デジタルツインという技術が挙げられる。これは、物理的な世界を3Dのデジタル世界でシミュレートするものである。「バーチャル・シンガポール」のように、都市計画や行政にデジタルツインを活かそうとするプロジェクトも、すでに進んでいる。
また、都市内の移動時間に着目した「時間地図」をグラフィカルに作成することで、活用すべき遊休不動産の見極めに役立てるという取り組みもある。
近年、テクノロジーアートやメディアアートの分野と建築分野が接近し、「インスタレーション」と呼ばれるアートが増えている。インスタレーションとは、場所や空間全体を作品として体験できるようにする芸術を指す。
渋谷のある複合施設では、クリエイター集団ライゾマティクスが、通路に大小18台のディスプレイやサウンドシステムを設置した。これにより、映像や音像が時刻や天候によって移り変わることを可能にし、空間と通行者の間に対話を生み出すという。
こうした取り組みは都市空間にも広がっている。その一例は、デジタルアートを手がけるチームラボだ。チームラボは、中国の都市において公共物をデジタルで制御することで、デジタルアートやインタラクションを手がけることになった。これが人々との新たな関係の創造につながっている。
世界中の自動車メーカーが、完全自動運転車の実用化をめざし、開発を進めている。各メーカーの発表によると、2020年代後半には、無人の自動運転車両が当たり前に街中を走行することが期待されているという。
ただし、完全な自動運転に必要なのは、車両単体の機能だけではない。高精度な地図情報システムや車両同士の通信システム、専用の情報処理システムなども求められる。地図に関していうと、「ダイナミックマップ」と呼ばれる三次元の地図データが作成されている。また情報処理分野では、自動運転専用の画像認識を行うディープラーニングネットワークの開発も進められている。
特定のエリアやルートで用いる車両は、一般車両よりも早く自動運転を実現できるかもしれない。鹿島は「クワッドアクセル」という実証実験のプロジェクトを始めた。工事現場で、ブルドーザーなどの複数の重機を連携し、自動運転させるというものだ。
日本では宅配サービスの急激な普及と荷物の増加に対して、人手の確保が追いついていない。一方で地方では、小売店の減少などにより「買い物難民」が発生している。こうした状況を救う技術として、無人運転やドローンによる荷物配送が期待されている。
すぐにも実現しそうなのが、高速道路におけるトラックの隊列走行だ。数台のトラックが列車のように連なって走行する技術で、先頭車両のみ人が運転する。カギとなるのは車両間の通信システムである。
ドローンも物流を救う技術と目されている。ドローンに搭載されたカメラやセンサーが周囲を認識。ドローンは、プログラムされた航路に沿って自動で飛行できる。そのため、物流センターから遠く離れた地域や、住宅が点在している地域への配送において効果を発揮できる。
高速道路や橋、トンネル。こうしたインフラの老朽化対策は待ったなしの状況といえる。国土交通省の試算によると、所管する国内インフラのメンテナンス市場が、2023年には年間5兆円にものぼるという。
3,400冊以上の要約が楽しめる