知的生産術

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出版社
日本実業出版社

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出版日
2019年02月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

日本の働き方は生産性が低い――多くのビジネスパーソンにとって同意できることであり、「耳が痛い」と感じられることでもあるだろう。実際、本書によると、日本は他の先進国よりも労働時間が長いにもかかわらず、成長率(=生産性)は大幅に低いという。

超高齢化社会の日本において、この状況は一刻も早く改善されなければならない。高齢者層を支えるためには、労働人口の生産性を上げていくほかないのだ。

本書のテーマは、個人の知的生産性の向上だ。ライフネット生命を創業し、立命館アジア太平洋大学(APU)学長を務める出口治明氏が著者に立ち、ビジネスパーソンの知的生産性を上げるためのヒントを指南する。どのヒントも実践的だが、「メシ・風呂・寝る」を中心とした長時間労働を短時間集中労働に変え、「人・本・旅」から仕事への着想を得るべきであること、女性活躍推進には長時間労働からの脱却が急務であること、リソース活用のために「無減代(むげんだい)」(本文で詳述)を意識するべきであることなどは、特にうなずく人が多いだろう。APUのスタッフは非常に生産性の高い働き方を実践しているというから、説得力がある。

残念ながら、「労働時間」重視の評価体制を崩すには時間がかかるだろう。だが何年かけてでも着実に、「生産性」重視の働き方にシフトしていかなければならない。そうしなければもう、日本の成長はないのだから。

著者

出口 治明(でぐち はるあき)
立命館アジア太平洋大学(APU)学長。ライフネット生命創業者。
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒。1972年、日本生命入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画(株)を設立し、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得にともないライフネット生命に社名変更。2012年上場。2018年1月より現職。
著書に『部下を持ったら必ず読む「任せ方」の教科書』(KADOKAWA)、『世界史の10人』(文藝春秋)、『「働き方」の教科書』『「全世界史」講義Ⅰ 古代・中世編』『「全世界史」講義Ⅱ 近世・近現代編』(以上、新潮社)、『教養は児童書で学べ』(光文社)、『人類5000年史Ⅰ:紀元前の世界』『人類5000年史Ⅱ:紀元元年~1000年』(筑摩書房)、『早く正しく決める技術』(日本実業出版社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本では、長時間労働が常態化しているにもかかわらず成長率が低く、生産性が低い。生産性を上げるには、評価軸を「労働時間」から「労働生産性」に変える必要がある。
  • 要点
    2
    仕事にイノベーションを起こすアイデアを生み出すには、「メシ・風呂・寝る」の生活を「人・本・旅」に変え、脳に刺激を与えるのが有効だ。
  • 要点
    3
    組織の生産性を上げるためには、「適材適所」の人材配置が重要だ。人材配置のポイントは4つで、部下の適性や意欲を把握すること、短所は無視して長所を伸ばすこと、全員を管理職に育てる必要はないということ、上位2割のパフォーマンスを上げること。

要約

【必読ポイント!】日本人の生産性が低い理由

日本の働き方は「骨折り損のくたびれ儲け」
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日本の時間当たりの労働生産性はOECD加盟36カ国のうち20位で、G7の中では50年近くも最下位である。しかも日本の実質GDP成長率は、アメリカ、ユーロ圏、日本という3つの先進地域の中で最低だ。世界で一番高齢化が進んでいる国だからこそ、高齢化に伴う出費を取り戻すために一番成長しなければならないにもかかわらずだ。

それだけではない。日本の正規雇用の社員の労働時間は年間で2000時間超と、1990年代のはじめからほとんど減少していない。一方、人口動向や資源、化石燃料がないなど、日本と条件が似ているユーロ圏では、約1300~1500時間となっている。つまり日本は、ユーロ圏より長時間働いているのに成長率が低いのである。

要するに現在の日本は「骨折り損のくたびれ儲け」。この状態から脱却するためには、短い労働時間で生産性を上げ、相対的に高い成長を実現しなければならない。

生産性重視の評価軸へ

高度成長の時代においては、朝から晩まで長時間働く工場モデルの働き方が理にかなっていた。だが現在、日本のGDPの4分の3以上は、サービス産業を主力とする第3次産業が占めている。つまりサービス産業の生産性を上げることが、国全体の生産性を上げることに貢献するといえる。

だが日本企業の働き方は、いまだに工場モデルのままだ。サービス産業に従事する人に長時間労働をさせていては、アイデアも成果も生まれない。長時間労働の工場モデルは、現代の働き方にまったく見合っていないといえよう。

工場モデルとサービス産業モデルとでは、社員に対する評価軸が異なる。工場モデルにおいては、「自分の頭で考える人」よりも、長時間の単純作業を繰り返すことができる人が評価される。一方、サービス産業モデルでは、自分の頭で新しいアイデアを生み出せる人が求められている。

AさんとBさんという2人の編集者がいたとしよう。Aさんは早朝から夜中まで、食事中も席を離れずに熱心に仕事をしている。だがAさんが編集した本はどれもあまり売れていない。一方Bさんは、10時ころに出社し、そのまま誰かとランチに出かけてしまう。残業もせず、定時になると飲みに行く。それでもいろいろな人からアイデアをもらい、ベストセラーを連発している。

この例でいうと、サービス産業モデルで評価されるのはBさんだ。

「メシ・風呂・寝る」から「人・本・旅」へ
Hakase_/gettyimages

サービス産業モデルにおいては、さまざまな経験を積み、発想力や柔軟性を養って、斬新な発想やアイデアを生み出すことが求められる。そのためには、「メシ・風呂・寝る」が生活の中心にある長時間労働から、「人・本・旅」から刺激を受けられる集中短時間労働に切り替えるのが有効だ。長時間労働するのではなく、仕事の後に「人」に会ったり、「本」を読んだり、ときには「旅」したりして新しい情報や知識を取り込み、脳に刺激を与える。そうしないともはや、日本経済の発展は見込めないだろう。

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要約公開日 2019.02.15
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