右脳思考

ロジカルシンキングの限界を超える 観・感・勘のススメ
未読
右脳思考
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ロジカルシンキングの限界を超える 観・感・勘のススメ
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右脳思考
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2019年01月08日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

「なぜ、この提案が受け入れられないのか?」という疑問や不満を持ったことはないだろうか。ロジカル面ではまったく問題がない提案書なのに、受け入れられない。そんな時に働かせてほしいのが「右脳」である。ここでいう「右脳」とは、感覚・感情、直感、勘など、論理(ロジック)では説明できないひらめきや考えを指す。

著者の内田和成氏は、「世界の有力コンサルタント25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出されたこともある実力者だ。本書ではその豊富な経験と独自の目線から、ロジカルシンキングだけだと必ず突き当たる壁の乗り越え方を提案している。

ビジネスを動かしているのはあくまでも人間だ。そして人間はロジックで動くとは限らない。どうしても感情や勘など、右脳的な要素が絡んでくる。しかも厄介なことに、それがロジックという仮面をかぶっていることも少なくない。

組織で働いていれば、ロジカルシンキングでは対応できない、不条理な経験をしたことがある人も多いだろう。「ビジネスに私情は不要」というのは幻想である。左脳だけでビジネスをすることはできないのだ。

ロジックは完璧なのになぜかうまくいかない、人が付いてこないなどの悩みを持っている人はぜひ本書を読んでみてほしい。ビジネスを自分の手で動かしたい人、必読の書である。

ライター画像
中山寒稀

著者

内田 和成 (うちだ かずなり)
早稲田大学ビジネススクール教授
東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。
2006年には「世界の有力コンサルタント25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出された。2006年より早稲田大学教授。ビジネススクールで競争戦略論やリーダーシップ論を教えるほか、エグゼクティブ・プログラムでの講義や企業のリーダーシップ・トレーニングも行なう。著書に『仮説思考』『論点思考』(以上、東洋経済新報社)、『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』(編著)『異業種競争戦略』(以上、日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(KADOKAWA)、『プロの知的生産術』(PHP研究所)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ロジックにとらわれすぎてはいけない。ビジネスを動かすのは人間であり、人間は感情で動くものだ。右脳の領域である感覚や感情、直感、勘などを働かせると、ビジネスはスムーズに動き始める。
  • 要点
    2
    優れたビジネスパーソンほど、経験や直感にもとづく勘を上手に利用している。
  • 要点
    3
    右脳に関連した分野については、生まれつきの得手・不得手がある。だが経験や学習を重ねることで、後天的に鍛えることも可能だ。多くの勘を働かせ、経験を積み、質を高めていくことで、右脳は進化していく。

要約

【必読ポイント!】人はロジックで動かず、感情で動く

ビジネスで右脳が重要な理由とは?
metamorworks/gettyimages

仕事をするうえで、データや数字にもとづいて論理的に考えるロジカルシンキングの重要性はなかば常識化している。しかしロジックでは説明できない、感覚・感情、直感、勘などの「右脳」を働かせれば、より効率的に仕事の成果を上げることができる。

たとえば新製品を発売するにあたって、わかりやすくロジカルにプレゼンテーションしたにもかかわらず、経営陣に提案書が通らなかった場合を考えてみよう。このとき新製品はユーザー調査で好感触を得ており、市場調査、ユーザーのニーズ、新製品の競争優位性、競合の比較分析、収支計算などをそろえた企画資料も作成しているとする。

この企画が通らなかった理由は大きく分けて2つ考えられる。

パターンA:提案の完成度が低く、考えていたほどロジカルではなかった

パターンB:経営者が感覚的に提案を気に入っていない

このうちパターンBは、否定される理由が明確でない「とにかく反対」というパターンB1と、提案の細部にまで指摘がおよび、ロジカルに反論されるパターンB2に細分化できる。

企画書を再提案する場合、ロジカルシンキングで対応ができるのはパターンAの場合のみである。パターンB2も一見すると理詰めで対応できるように思えるが、実際は「提案が気に入らない」というのが根底にあるので、たとえ再提案をしたとしても、ロジカルに論理や数字を詰めるだけでは玉砕する可能性が高い。

必要なのは、提案が通らなかった理由を上司や周囲の人から探りだし、相手の心理状況を理解したうえで対策を立てることである。そのためには自分の右脳を働かせるとともに、相手の右脳を理解する必要がある。

成功している経営者は思いつきで動く
HAKINMHAN/gettyimages

成功している経営者には、特徴的な行動パターンがある。なかにはロジカルシンキングだと「成功確率が低いのでやめたほうがいい」と思えるような道を選んでいる人も少なくない。

たとえば自転車販売店のサイクルベースあさひの場合、製造小売(SPA)というビジネスモデルを自転車業界に持ち込んだことが、成功のカギとなった。しかしSPAを実現するためには、かなりの売り上げ規模が必要になる。最初から同社の創業者である下田進氏がSPAモデルを志向していたとは考えにくい。自転車小売店を始めたものの、なかなか顧客がつかなかったため、他の販売店では力を入れていなかった修理やアフターサービスを充実させたところ、満足した顧客が新車も買ってくれるようになったというのが真相であろう。そして結果的に効率的な店舗経営のノウハウが生まれ、PB(プライベートブランド)を製造できる規模まで大きくなったと推察できる。

つまり下田氏は、徹底的なロジカル分析で実行に移したわけではない。その都度悩んだことを試行錯誤して、選んだ道を理にかなうようにしたと考えるのが適切である。経験から気づいたことや感じたことなどの右脳的な感覚を、あとから左脳で理論武装したのだ。

このように仕事ができるビジネスパーソンは、多かれ少なかれ勘を上手に使っているといえる。

感情と理屈の因数分解

すでに納得済みだったはずの提案にもかかわらず、最終的な意思決定の場面で、責任者の1人が反対を表明し、決定が保留になってしまうことがある。その原因はどこにあるのだろうか。

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要約公開日 2019.02.22
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